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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 

浜矩子氏「お友達内閣度が強まる」(2016年8月7日放送)

浜:「まず今回の「未来チャレンジ内閣」という、悪ノリ的ネーミングを何とかしてもらいたい、真面目に考えてもらいたいというのがあります。そして改造する度にお友達内閣度が強まるというか、親分の号令一下何でもします度が強まる感が非常に強いですね。多様性という言葉からあまりにも遠い顔ぶれになっている。ちょっとは異分子もいて違う事を言う、というのがまるでない集団にどんどんなっていきますね」

再び自民党本部に移ると組閣本部から幹事長室に戻る二階幹事長とロビーで鉢合わせた。幹事長まで上り詰め、記者に囲まれる姿には感慨深いものがあった。「おめでとうございました」と言うと、うれしそうに「おう」と応じ、「今度また、ゆっくり」と言い残し、番記者に囲まれてエレベーターに消えた。ならばと、今度は議員会館に向かった。部屋を訪ねると、その部屋の主である石破前大臣はソファに座りこみ、興奮さめやらぬ顔で「ふーっ」っとため息をついてみせた。「3年半、精一杯お仕えしましたからね。できるだけのことはやりましたよ」と言うと、秘書が持ってきた氷と麦茶の入ったガラスコップをカラン、カランと振った。第二次安倍政権発足当初、鳴り物入りで始まった「アベノミクス」について尋ねた時「あんなの『二日酔いの迎え酒』だよ」と吐き捨てるように言っていたのを思い出した。その安倍政権での日々は、意に沿わない3年半だったのだろうと思った。すると、「役所を出る時にさあ、職員がそろって見送ってくれてさあ。お疲れ様でしたとか言ってくれてさあ。うれしかったなあ」と話し、またコップをカラン、カランと鳴らした。去年、大臣を続けながらも「石破派」を立ち上げ、直後に政策を練っていきたいと言っていたが、それだけに今回の思いは強いようだった。


石破茂氏「必要なことって何ですか」(2015年10月11日放送)

石破:「やはりね、政策なんだと思うんですよ。自民党では選挙に勝つことが至上命題になって、とにかく国民が嫌がらないこと、喜んで聞いて下さること、というものを並べてしまう。結果、国の将来が危うくなるってことですよね。国家のために必要な事って何ですかってことを、じっくりと落ち着いて考えると同時に、それを納得と共感を持っていただくための行動ってのをしなきゃいけない」

熱い夏の一日の仕上げに安倍総理の記者会見を待った。記者席の端に座っていると、午後6時半きっかりに安倍総理が朝の自民党本部の時と同様に胸を張って壇上に立った。ガシャ、ガシャとカメラの音がけたたましく鳴る中、安倍総理は「政治の安定を求める国民の皆様の声に後押しされ、私たち連立与党は参議院において戦後最も安定した政治基盤を獲得しました」と声を張り上げて話し出した。「最優先課題は経済でありますっ」と語り、「デフレからの脱出速度を最大限まで引き上げてまいりますっ」と左手を上に掲げた。そして、世耕弘成新経済産業大臣について「世界にアベノミクスをどんどん売り込んでほしいと思いますっ」と声を張り上げ、なにやら自ら満足げにニヤリと笑った。


浜矩子氏「浦島太郎内閣の度合いが」(2016年8月7日放送)

浜:「経済対策の記事を見て思うのは、これ何十年前の新聞の見出しかって感じですね。成長底上げとか言っちゃってですね、28兆円で公共事業をガーンとやって景気付けを行うという、そんなことが必要な日本経済の状況では今ないですよね。リニアを大急ぎでやると言ったって、これは既存の新幹線からお客さんが流れるだけで、やっぱりこの成熟経済には、ふさわしい経済政策のあり方があって。それは即ち、富の偏在を是正していくということで。分かち合いの上手な経済を作っていく、それで上手く物事は回っていくように思いますけど。元々この内閣は発足当初から浦島太郎内閣だと思っておりましたが、その度合いがここに来て一段と強まったと言わざるを得ないですね」

眼前で、安倍総理のお得意の身振り手振りが激しくなったのは、記者から「石破大臣の入閣拒否」と、「二階幹事長の起用」について聞かれた時だった。石破氏については、まず「国民の皆様から負託されたこの責任感のもとに、期待に応えていかなければならないと考えております」と両手を胸の前で開いてみせ「選挙を通して訴えた政策をしっかりと結果としてお示しを」で左手を持ち上げてグー、「この責任感については閣内にいようと、閣外にいようと、それは変わりはないということですっ」と声を張り上げ両手のこぶしを胸の前で広げて振り下ろした。そして、「その思いは石破さんも同じであろうと思っています」と胸の前で左手のこぶしをギュッとにぎった。

二階氏については「百戦錬磨、いわば自民党において最も政治的技術を持った方だろうと、こう思っています。幹事長としてリーダーシップを果たしていただきたいと思っていますっ」と左手の手のひらを胸の前で持ち上げた。

その度にシャッターの音がけたたましく鳴り、安倍総理の身振りもさらに激しくなっていった。そんな様子を見るうちに、夕方、議員会館で石破氏が手元で振っていたガラスコップの氷のカラン、カランという音が聞こえてきた。そして、政局に向けた石破氏の思い詰めた表情が浮かんできた。

※本原稿は調査情報9〜10月号に掲載されています。

石塚 博久 (いしづか ひろひさ)
'62 東京都足立区生まれ。早稲田大学卒業後、'86日本経済新聞社に入社。大阪、名古屋、仙台支局(このとき、「みちのく温泉なんとか殺人事件」に出るような温泉はほとんど行った“温泉研究家”でもある)に。
東京本社政治部で政治取材の厳しい(「虎の穴」のような)指導を受け、新聞協会賞(「閣僚企画」共著)も。
'96TBS入社後は、報道局政治部記者、「NEWS23」のディレクターを経て、「時事放談」制作プロデューサー。

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