特集

ゾウが作った森にゴリラが暮らす!サンガ川流域の森林地帯

危険がいっぱいの森を歩き続けてたどり着いた、動物たちの聖域

―実森を歩く中で、危険な動物にも遭遇することはなかったのでしょうか?

危険がいっぱいの森を歩き続けてたどり着いた、動物たちの聖域

小澤:肉食獣に関しては、この森にはヒョウがいますが小型で夜行性ですので、それほど危険を感じませんでした。怖かったのはヒルですね。大きいのが、葉っぱの裏とか、木の上とかから落ちてくるんですよ。私は大丈夫でしたが、スタッフが吸われていました。あとは、動物の口や鼻の穴という穴に侵入し、牛でも窒息死させてしまう「サファリアリ」の大群と出くわしました。アリと言っても小型のクワガタくらいの大きさがあり、顎も大きいんです。私たちが少しでも立ち止まっていると体に登って噛みついてきました。ほかには「ツェツェバエ」。このハエは人の血を吸うだけでなく、死に至る「アフリカ睡眠病」を伝染させる寄生性原虫を持っているので怖かったですね。

―過酷な取材を経て、それに見合うだけの映像は撮れたという感触でしょうか?

危険がいっぱいの森を歩き続けてたどり着いた、動物たちの聖域

小澤:そうですね。先程も話した、森の中にいるマルミミゾウなど、貴重な映像を撮影することができました。また自然だけでなく、ほかの国立公園ではあまり見られない試みを知ることができました。サンガ川流域の森林地帯では自然を保護する試みの1つとして、材木業者に義務を課した上での森林伐採を許可しています。義務というのは、伐採計画書の提出などのルールを守ることや密猟者を取り締まるパトロールの実施、そして検問所など国立公園の運営にかかる費用を出資することです。ほかの国立公園では観光などを収入源にしていることが多いのですが、ここではそういった業者とのやりとりがあることが興味深かったです。森を糧にしながらも森を守っていると言えるでしょう。

―最後に視聴者の方にメッセージをお願いします。

小澤:小澤:サンガ川流域の森林地帯への観光客は年間でも500人ほどしかいないとのことで、日本人がほとんど訪れたことのない世界遺産を取材してきました。歩かないとたどり着けないという体力的にも訪れることが難しい場所なので、その道程を含めて貴重な映像を楽しんでいただければと思います。

世界遺産の歩き方

サンガ川流域の森林地帯の森を進むのには、「ピグミー」と呼ばれる先住民の人々の協力が欠かせません。ピグミーの人々は、元々は森の中を移住しながら暮していた狩猟採集民族でした。森が国立公園となる際に村に定住することになり、現在では狩猟採集生活はほとんどしていませんが、彼らは森の中でも迷いませんし、ゴリラやゾウと遭遇したときにどう対処すればよいのかを心得ています。