特集
古代大陸の名残りが見られるオーストラリアの自然遺産
巨大なジンベエザメに接近遭遇!
―続いて海の回、6月17日の放送で紹介する「ニンガルーコースト」は、ビーチから泳いで行けるほど近くにある珊瑚礁や、そこに集まるジンベエザメで知られていますが、ジンベエザメはなぜここに集まるのでしょうか?

小澤:最大で体長18メートルにもなるという世界最大の魚類ジンベエザメですが、その好物はオキアミ。このあたりでオキアミが大発生する3月から7月上旬にかけてやってきます。ジンベエザメにとっては恰好のえさ場なんですね。ここではジンベエザメといっしょに泳ぐツアーなども行われていますが、もちろんそこには自然の生態系に配慮した厳しいルールが決められています。私もジンベエザメと一緒に泳いでみましたよ。
―自然の中でのジンベエザメの撮影は順調に進みましたか?
小澤:撮影は水中カメラマンが6日間かけて行いました。というのもツアーと同様に、撮影の場合にも近づける距離や時間に制限があるためです。日数はかかりましたが、ジンベエザメ自体はおとなしい性質で、サメとはいえ危険を伴うものではありませんでした。海では、ほかにもマンタやウミガメも撮りました。それからタコがカモフラージュする瞬間をとらえた映像もお見せできると思います。ぜひ放送でチェックしてみてください。
―このあたりは海だけでなく陸地も含めて世界遺産に登録されていますが、陸地の見どころも教えてください。
小澤:降水量が年間300ミリ以下という乾燥地帯にある「ケープレンジ国立公園」には、オーストラリアの国章にも用いられているエミューやカンガルーがいます。このダチョウに似た鳥類エミューや、有袋類のカンガルーはゴンドワナ大陸に起源を持つ生物を代表するものでもあります。それに加えて地下の洞窟にも独自の進化を遂げた生き物がいました。

―洞窟に棲む生き物と言うと、コウモリのような動物ですか?
小澤:実は魚なんです。まだその生態は解明されていないという真っ白で目のない魚。これまでほかの国で見つかった報告もありますが、もしかするとニンガルーのこの魚の映像を日本で放送するのは初めてかもしれません。
―ますます興味が湧いてきました。最後に視聴者の方へメッセージをお願いします。
小澤:遥か昔の大陸の分裂で孤島となったオーストラリアは、長らく不毛の土地と呼ばれ、西洋人による入植が始まってからもまだ200年あまり。先住民族のアボリジニによって守られてきた手付かずの自然の中には、いまでもゴンドワナ大陸時代の名残を見ることができます。ほかでは見ることのできない動物や植物、そして豊かな海の中などの映像で、太古の生命に思いを馳せていただけたらと思っています。
世界遺産の歩き方
自然や古代の地球に興味がある人は、実際に行ってみたくなるかもしれません。現地の雰囲気やアクセス情報を小澤ディレクターに伺いました。
「グレーター・ブルーマウンテンズ国立公園はシドニーから車で約2時間程度です。日帰りでも行けるため、トレッキングやロープウェイで手軽に自然を楽しみたいシドニーの人たちに人気です。
一方、ニンガルーコーストの方は周辺になにもなく、アクセスもあまりよいとは言えませんが、まだそれほど観光地化していない分、じっくりと自然に向き合うならこちらがいいかもしれません」。ニンガルーコーストの海は驚くほど透明度が高く、珊瑚礁やジンベエザメにも会えるとなれば海が好きな人にはたまらないはず!