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世界遺産の映像の世界
石原定務さん
Q:好きな撮影方法はありますか?
A:レンズをなるべく対象物に近づけて撮るマクロ撮影、いわゆる接写が好きですね。接写する事によって、今まで見えていた物とは全く別の見え方ができますし、手が届きそうな質感も表現できます。例えば石の上を虫が登っていく姿を接写で追って、その虫が登りきった時にふっとピントを後ろに送るとそびえるお城が遠くに見えるとか。そういうのって「びっくりしたなぁ、もう」って感じでしょ? そういうのが好きなんですよ(笑)。それがそこに存在しているという空気感や質感。そういうものをいいシチュエーションと明かりで捕まえていきたいですね。でも美術品を管理している現地のスタッフからするとこんなに迷惑な話はありませんよね。もちろん三脚にカメラを固定しますし、その辺は僕もプロですから失敗した事はありませんけど、本当にミリ単位ギリギリまで寄っていきますから、さぞやハラハラしていると思いますよ。
Q:今までの撮影で一番大変だったこととは?
A:キャンプを転々と張りながら目的地である「タッシリ・ナジェール」(2001年4月放送)の壁画を目指していた時の事です。出発する前に現地のコーディネーターから「はぐれるとジャッカルに食われる可能性があるので、とにかくみんな一緒に行動してください。その前にあそこで迷子になったら死にますよ。」と言われていました。そしてキャンプを張って1日目の朝、トイレを探しに茂みの中へ入っていくと、すぐ近くに程よく落ち着ける場所を発見。さっそく…と思ったら、すぐ近くにコーディネーターが来て「石原さん、快調ですかー?」と一番プライベートな時間を邪魔されてしまいました。2日目の朝、今日は邪魔されてなるものかと、5m級の岩がボコボコ立っている方へ歩き始めました。そして「金魚のようなこの岩を左に曲がって、熊のようなこの岩を右…。これはねずみか? ここを左だな…。」こんな調子で手に入れた素晴らしいプライベート空間。どこまでも広がる僻地を見ながら「世界遺産をやっていて一番の贅沢ってこういう時を言うのかも?」なんて用をたしながらこの時は本気で思いましたね。でも、数分後、さて帰ろうと思ったら「あれ? これがねずみ…? こっちもねずみに見える??」 と全く帰り道が分からなくなってしまったのです。そんな時、頭にリフレインするのはコーディネーターの「ここで迷子になったら死ぬよ…。」という言葉。ヤバイ! でもいくら大声で叫んでみても、砂に吸収されてしまって全く響きません。この時迷っていた時間は、15分程度だったのですが、本当に死ぬかもしれないと必死でしたね。 しかも迷いながらさらにキャンプ地から遠ざかっていたようで、自分の方向音痴がこれほど憎いと思った事はありません。その後、ムザブの谷へ移動したのですが、そこでも運悪く鉄砲水に遭ってしまいました。僕たち人間は偶然にも別の場所にいたので無事だったのですが、部屋においてあった物はびしょぬれ、いくつかの機材は流されてしまいました。その時「あぁ。これはきっと神様が、お前は文化遺産だけに集中して、自然は矢口さんにまかせろ」と言っているのだと思いました。それ以来、文化遺産のみに集中して撮影する事にしています(笑)。
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