世界遺産
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世界遺産の映像の世界
柏原俊保さん
Q:普段取材に入るまでに、どのような下調べや打ち合わせを行うのですか?
A:出発前に、簡単なサイトの説明と機材等の打合せはしますが、絵コンテを使ったり、何時間も費やして内容を詰めたりはしません。信じられないでしょうが、現地でディレクターが作ったラフ構成に沿って撮影してゆきます。個人的には下調べをしますが、本音を言うと、学生時代に歴史の勉強でサボっていた部分を埋めているとも言えます。…(笑)。
少し矛盾しますが、そうして勉強したことは、カメラを構えた瞬間に一切を忘れて、最初に印象的な風景から撮影します。(これは僕が尊敬している龍村仁監督に教わった事です。)
世界遺産は、カメラマンが見た印象をも表現できる番組だと思うのです。例えば、誰もいない遺跡にカメラを構えると、昔は物売りの声が響いたり、職人がレンガを担いで歩いたり、父親に手を引かれて子供が歩いていたりしたのかな?なんて、人の気配を感じます。その気配を感じるところから撮影は始まるのです。
Q:好きな撮影方法はありますか?
A:広角と超望遠レンズの極端な組み合わせ。広角は拡がり感と、被写体との距離感がよろしい。望遠は被写体までの空気感が好きなのです。撮影方法とは少し違いますが、ファインダーを覗いていると無意識のうちに「シンメトリー」の風景を探している自分に気が付きます。ベネツィアで船に乗りながら運河を撮影していた時も、ファインダーに広がる運河と両岸の建物を見ているとなぜか心地よく、穏やかな気持ちになりました。何故なんだろうと考えてみると、子供の頃の記憶と繋がっていたのです。オニヤンマを捕るのにじっと身構えて見ていた小川、病院へ行く母の姿が遠ざかるのを見送った道。父が帰ってくるのも、友達が遊びにくるのも道の向こうからでした。その風景の構図はいつもシンメトリーです。つまり、シンメトリーの向こうには思い出があって、撮影の時にその「シンメト記憶」の思い出が滲み出てくるのです。この構図感覚は異国の全く違う風景の前に立っても、僕の中ではどこかリンクしています。思い出が撮影の出発点。そのことがベネツィアで撮影していて分かったんです。
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