3ショットインタビュー:日曜劇場『ごめん、愛してる』

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Q. 撮影現場はいかがですか?

長瀬智也さん(以下、長瀬)

和気藹々としてますよ。現場も僕たちが演じる上で、演じやすい環境にしてくれているのもあるし、みんなが台本を理解して同じ方向に向かっていっているチーム感は、まだ撮影して1か月ほどですが、とても深いような気がします。

吉岡里帆さん(以下、吉岡)

台本に関することやお芝居の動きなど、お互いの考えのすり合わせが自然とできるチーム。私にとってはみなさん大先輩ですが、変な壁がなく、素直に向き合える環境にあるのはありがたいなと思っています。

坂口健太郎さん(以下、坂口)

長瀬さんがそういう雰囲気にしてくださっているんだと思います。意識して雰囲気を作っているんじゃなくて、役や台本に関していろんな相談が自然とできる環境にありますね。

Q. 長瀬さん、20年ぶりのラブストーリー
とのことですが…

長瀬:

ここまでのラブストーリーは久しぶりですかね。人間ドラマやコメディが好きだったから、好きなものをちょっとやり過ぎちゃったなと反省しつつ(笑)。

ラブストーリーをやっていた当時・10代最後ぐらいの、自分の原点に戻った気がしますね。原点というのは、もともと青春ドラマとか、親に恵まれない男の子の役ばかりやっていたんですよ。地方から上京して鉄工場でバイトして6畳一間・風呂なしのアパートに住んで、桶持って銭湯に行く…みたいなね。性格も無口で、自分の中で葛藤している役が多かったですね。今回演じる律も、その延長線上にいる気がする。不思議な縁ですよね。
でも、今回もただのラブストーリーではなく命ぐらい深い愛の話なので、僕も40手前になりますが考え方は2〜30代よりは大人になったと思うし、大人の愛みたいなものが見られる作品になるんじゃないかな。

Q. お互いの印象、想像と実際と
違いましたか…?

長瀬:

吉岡さんは、会う前は一生懸命な印象がありましたが、ご一緒してみたらきちんとお芝居と向き合って戦ってるなって。きっとすごくお芝居が好きで、悪く言えばお芝居バカ(笑)。さっき話していた台本の細かい部分に至るまでのこだわりって、芝居が好きじゃなければ絶対にそうならない。この若さでちゃんとクリエイトする感覚があることはすごい才能だなと思います。
坂口君とは、一度TOKIOの番組ゲストで来てくれてお話させてもらった時に、お芝居している姿と本人とのギャップがあって。すごくクールだったんですよね。彼は自分にしかできないことを武器にしていると思ったし、今回の日向サトルという役もメチャクチャ難しい役だと思うんです。僕なら「どう表現しよう?」と悩むところだらけの役だけど、彼でイメージしながら台本を読むとすんなり進むんですよね。それが彼が持つすごいところ。ナチュラルに、でも彼にしかできない声のトーンひとつとっても、僕にはないところだからすごく羨ましい。役者としてもカッコイイと思っています。

吉岡:

長瀬さんはとにかく熱くてパワフルで温かいイメージでした。お会いしてみたら、やっぱりその通りだったんですが、想像以上の熱量でした。あったかさも熱さもエネルギッシュさも、もっと温度感が高かった。実際にお芝居で対峙してみすると、ものすごい熱量を感じています。一方で、意外と繊細な方で…

長瀬:

恥ずかしい(笑)

吉岡:

言う方も恥ずかしいです(笑)。でも、私が一番ギャップ感じた部分がそこでして。もっと感覚のまま突っ走っていくのかなと思っていたらものすごく丁寧に、1シーン1カットに対して真摯で、セリフ一つとっても語尾の言い方、表現の仕方、顔の角度…あらゆる細部まで見ていらっしゃるんです。私が思っていた以上に、もっともっと“職人”な方でした。長瀬さんが演じられてきた役柄は、どれも本当に印象的で魅力的だと思っていたのですが、その裏側を初めて見て、すごく納得できました。やっぱりこういう細やかで繊細なアプローチがあって、ああいう大胆なキャラが生まれているんですね。ついていけるボスです。
坂口君は、線が細くて透明感があって男前で繊細なイメージでしたが、実際そんな言葉で片付けちゃいけない面白味のある方(笑)。もっと立体に見えたというのかな。「あ〜面白い人だな」って。芝居してお話してみると全然違いました。一挙一動、何しでかすんだろうって、つい注目しちゃいます。

坂口:

爆弾みたい(笑)

長瀬:

ほんと、爆弾扱い(笑)

坂口:

長瀬さんは 熱い男のイメージを勝手に抱いていたんですが、すごく広くて大きい方。例えて言うなら“海”。長瀬さんが座長としていてくれることで、何を任せても温かく受け止めて返してくれるので、僕はもう少し遊べたりできる。だから何でも聞けるし相談できます。これからがホントに楽しみ。
吉岡さんは今回が初共演ですが、意外だったのは作品にも役に対してもすごく熱いところ。役をどうやればもっとよく見えるのかをいつも考えている。台本に書かれていることをただ言葉にするのは簡単ですが、その裏側はどういう気持ちなのかまですごくしっかり考えている女優さんだなと。嬉しい発見でした。

Q. 役について感じること

長瀬:

すごい優しい男なんでしょうね。自分の命にタイムリミットがあって、でも絶対に誰にもそういうところは見せないし、弱音もはかない。もしそんなことを聞かれたとしても、この空気を壊すのは嫌だからって、弾き飛ばしちゃう奴なんですよね。僕からしてみたら、もう少し救いがあって欲しいなと思うんですけど、彼はきちんと現実と向かい合って生きている。“もし同じ状況だったら?”って考えたりしますけど、そんなの無理無理…!って。だから強くて愛がある男なんじゃないですかね。それから一緒に育った幼なじみが、自分がいなくなった後致命的な障害を負ったと聞いて、そんな彼女のことを守ろうとするわけですよ。それが僕の中ですごくけなげでね。「かわいそうだな」とは言わずに昔と同じような接し方をしてる、そういうやりとりにグッときちゃうんですよね。そんな部分にも律の大きさが見えるんですよね。
いろんなことを我慢して生きてるんだと思いますね。そういう顔は絶対に見せない、ホントに孤独な人ってそうですよね。絶対自分のことは言わない、その場で絶対そういう風には思わせない。だから凜華のことを愛してしまって、自分がこの世からいなくなってしまった時に彼女がどう思うのか。それを考えると苦しいけど、愛してしまったことに対しての(タイトル)「ごめん」じゃないかなって思うんですよね。

吉岡:

原作も拝見したんですが、ある種非現実で、ちょっとファンタジーで、生々しく劇的な作品だと思っていて。純愛モノは初めてやるので、その人に向き合う熱量をどんどん高めていって、はたから見たらオカシイんじゃないかってくらいの感情を作っていかないとなと思っています。そのくらい私にとって凜華は特別な役。ドラマも、最近は見ないタイプの、昔の日本にはもっとあった男女の物語、母と息子の物語だったり、より濃いものを抽出している作品になればいいなと思ってます。濃くなることを恥ずかしがらず、まっすぐ王道でいることに後ろめたさを感じないように、そんな風に向き合っていきたいです。

坂口:

サトルのことは、正直まだあまり理解できていないかもしれません。でもいざクランクインして、こういう面があったのかと感じたのは、母の愛を受けて育ってきてはいると思うんですが、どこか欠けているというか、虚無感や空っぽさをすごく感じたんですね。台本を読むと、少し間違えるとすごく冷たい人間に見えちゃったり、凜華との関係性も残酷にも見えてしまう可能性がある。普通にやってしまうとそう見える瞬間があったんで、それを愛してもらえるキャラクターにしたいなと思ってはいます。虚無感から来るわがままに対して、ちょうどいい塩梅を探すのが大変ですね。本人は悪びれてはいないんだけど、お芝居をしてみると彼を少し悲しく、寂しく感じてしまうんです。だからそれをどう愛らしくキュートに見せるのかはすごく難しいですね。…あとは、ピアノですかね。

長瀬吉岡

ピアノ、すっごいうまい!

坂口:

めちゃくちゃ練習しました。

長瀬:

もう、レイチャールズばり!

坂口:

ははは。ショパンの革命とワルツとかいろいろやりました。限界はあるとは思うけど、あんまりそこはウソはつきたくなかったし。ピアノはやりました。恐ろしいくらい。

長瀬:

すばらしかった。

吉岡:

ホントに。“天才、現れた!”って感じ。

どのくらい前からピアノの練習を
されたんでしょう?

坂口:

時間があまりなかったんで、1カ月前からです。ピアノは保育園の時に2年間やっていたんですが、楽譜も読めない状態なので、今回ドレミから教えてもらいましたね。やりすぎると(手が)つるんですよ。

長瀬:

あと二人で話していたのは、ピアノが似合う!

吉岡:

ピアノがこんなに似合う人がいるのかと。監督もモニター見ながら「坂口君こんなカッコいいんだ」って言ってましたよ。ホントにピアノのシーンは楽しみ。

坂口:

ピアノのコンサートシーンはクランクインだったんです。でも良かったです、監督がそう言ってくれていたなら…。

長瀬:

スタッフみんな大絶賛でしたよ

吉岡:

面白かったのが、お客さん役にエキストラの女性がたくさん来られてたんですけど、けっこう本気なんじゃないかってくらい。「きゃー!サトルー!!」って盛り上がるシーンは本物に見えました。

長瀬:

どさくさに紛れて一人だけ「健ちゃーん!」とか言ってるんじゃないの?(笑)

Q. この現場で期待すること


長瀬:

最後までどう演じていくかはみんなが気になる部分だと思うし、自分自身もどうなっていくかわからないので、そういう楽しみは常にありますが、大竹さんもいますし、お二人くらいの若い方もいるし、みんなといろんな話をしてたくさん刺激をもらいたいですね。それがすぐ何に変わるってことはないだろうけれど、そういうことが次の自分の何かになったりすると思うから、たくさん話して、笑ったり考えたりできればいいなと思います。

吉岡:

連ドラのヒロインは初めてで、こんなに大きなチャンスが舞い込むことなんてそうないことなので、とにかく後悔したくなくて。役柄的には凜華はすごく後悔する役なんですが、でも私自身は凜華がちゃんと振り切ってそこで存在するように努力を惜しまないことと、あとは皆さんととにかくこの作品をやって良かったって思えるように、そんな作品になるように自分ができることは全部していこうと思ってます。それから『ごめん、愛してる』ってタイトルがすごく気に入ってるので、このタイトルが見てくださった人の脳裏にちゃんと残りますようにと祈っています。

坂口:

サトルという役は少し挑戦的な気持ちもあって、長瀬さんが「彼がやると違和感なく台本読める」っておっしゃってくれましたが、自分でもサトルをどう魅力的に見せられるか、見せたいとも思うし、瞬間的な盛り上がりというより、2年後3年後も『ごめん、愛してる』を思い出して涙する…じゃないですが、そんな風にずっと記憶に残るような作品になったらいいなと思っています。