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BACK NUMBER #674 2019.6.22 O.A.

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相撲人生にピリオドを打った元関取たちの新たな戦い
今年に入り大相撲界は、スピード出世を果たした大関・貴景勝に続き、5月場所で平幕優勝を遂げた麻乃山など新世代の台頭に沸いている。だがその陰で、今年44人の力士が引退し土俵から去っている。その多くの者は土俵以外の所で第2の人生を送らなければならない。相撲人生にピリオドを打ち、今を生きる元関取たちの戦いを追った。
東京・新宿にある事務所で、一人デスクワークに励む男がいる。中尾浩規46歳、彼はかつて若孜という四股名の関取だった。彼は平成の大横綱と呼ばれる貴乃花と同級生だった。34年前、父の勧めで明大中野中学の相撲部に入った少年は貴乃花と出会う。一番小柄だった若孜にとって、練習でも対戦できないほどの存在だったという。その後、貴乃花は大相撲の世界へ。若孜は高校・大学で実績を積み上げ。若孜は遂に大相撲の世界に飛び込んだ。入門から5年、たどり着いた幕内、その昇進パーティーに、既に横綱になっていた貴乃花も駆けつけてくれた。その場所、貴乃花の背を追い続けた若孜に一世一代のチャンスが訪れる。初日から4連勝、このまま白星を重ねれば横綱との取り組みが組まれる可能性がある。だが翌日から無念の連敗をしてしまい、貴乃花との対戦が叶わなかった。振り返れば、この時が貴乃花に最も近づけた時だった。貴乃花が30歳で引退。目標を失った若孜も、その3年後に土俵を去った。そんな彼は現在、年商5億円のジンギスカン店オーナーとなっていた。引退後、修行を積んで店をオープンした時、今でも忘れられない出来事があったという。突然、貴乃花が来店してくれたのだ “もし来世があるなら対戦しよう”と言ってくれた。これまでの努力が報われた瞬間であり、二人が20年ぶりに同級生に戻った瞬間でもあった。
島根県出雲市で晩酌を楽しむ親子がいる。中倉幸基35歳、元・十両の琴弥山だ。去年引退し66歳の母と二人で暮らしている。彼が6歳の時、両親は離婚。母は我が子を育てるために地元のスナックで働いた。毎日、朝まで働くその姿を見て育った琴弥山。地元のわんぱく相撲で名の知られた存在だった少年は角界の門を叩く決心をする“早く母を楽にしたい”激しい稽古に次々と脱落して行く仲間たち。しかし琴弥山は逃げなかった。一人故郷で暮らす母の日課となったのは、地元紙に載る小さな星取表の切り抜きだった。「頑張ってね」と独り言を言いながら貼っていたという。入門から14年、遂に思いを遂げる時が来た。十両昇進を果たし、ようやく母に恩返しが出来るときが来た。しかしそう思ったのも束の間、上位の壁は厚い。結局、関取でいられたのは2場所だけだった。更にケガなどの影響で番付を落とし34歳で引退。部屋に残るよう誘われたが、帰郷を決断。これからは、ずっと母の側にいてあげようという思いだった、現役時代に貯めたお金で一軒家を購入。仕事をしながら力士のスカウト活動、そして、母子で晩酌を楽しむ毎日が、琴弥山の第2の人生だ。
土俵で培った心と身体で、新たな夢に向かって進む元力士らに改めて声援を送りたい。
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