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BACK NUMBER #529 2016.7.9 O.A.

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巨人三軍 下克上を目指し戦う若者たち
栄光の巨人軍の中で、毎日泥にまみれ、必死で球を追い続ける選手たち。しかし、彼らが所属するのは三軍。背番号3ケタの育成選手を中心に、今年結成され、同じ巨人軍のユニフォームを身に包みながらも、華やかなプロの世界とは全くかけ離れた場所で戦っている。
平均年俸は約400万円。練習場所もままならず、準備も後片付けも自分たちで行わなければならない。熾烈な競争を勝ち抜き、支配下登録を目指す。しかし、今年チャンスをものに出来たのは、わずか3人に過ぎない。そんな巨人三軍が台湾に遠征。そこには日本にいては決して味わうことの出来ない過酷な現実が待っていた。シーズン半ば、下剋上を目指す無名の若者たちのギリギリの戦いを追った。
今年6月。巨人三軍は日本から2000km離れた台湾にいた。今年発足した三軍が挑む初の海外遠征。選手は外国人も含め23名。9日間で7試合を行う強行日程だ。多くの選手が海外遠征は初めて。どことなく落ち着かない様子。そして、初めての試合を行う球場で、彼らを待っていたのは、日本では想像すら出来ない事態だった。グラウンドに足を踏み入れた瞬間、始まったのは、台湾メディアの取材攻撃。日本でならテレビカメラはおろか、スポーツ紙の記者も取材に訪れることは少ない。しかし台湾では、監督、コーチ、そして無名の選手たちにも、カメラとマイクが向けられた。ホームラン世界記録を打ち立て、日本中を感動させた王貞治を筆頭に、1980年代、巨人で活躍した呂明賜など、日本で活躍した台湾にゆかりのある選手は多い。そのため台湾では、日本人が想像する以上に、日本野球への関心が高く、特に巨人には、熱狂的なファンが存在する。また、三軍との試合がケーブルテレビで台湾全土に生中継される事が決まっていた。日本国内では注目を浴びることなどなかった栄光の巨人軍の看板を背負い戦う。それは、チームを率いる川相監督にとっても野球の技術に止まらない、育成の大きなチャンスだった。注目の初戦は、ジャイアンツというチーム名の大学との対戦だった。夜でも、30度を超す暑さの中、グラウンドやボールなど、日本との環境の違いに対応できないまま、アマチュアチームに屈辱の敗戦を喫してしまう。試練はこれで終わりではなかった。その後も2戦を終え、1勝1敗。そして休養日もなく、3戦目の試合のために、バスで台中市へ移動。しかし、そこで待っていたのは、驚くべき光景だった。ベンチの床は剥がれ落ちたまま、修復された気配もなく、ロッカールームの窓は割れていた。結局、ロッカールームに全員が入ることが出来ず、一部の選手は外で着替えなければならなかった。この日から4試合戦う相手は、23歳以下の台湾代表。2014年のW杯で世界一に輝いた強豪だ。三軍にとっては、胸を借りる相手だが、巨人のプライド、さらには日本球界の意地も見せたい。川相監督が選手にはっぱをかける。試合は逆転に次ぐ逆転を制し、見事6-4で勝利を飾った。その夜、宿舎に戻った12時過ぎ。その傍らで川相監督と2人のコーチがここまでの遠征を振り返りながら、相手選手の分析を行っていた。この台湾遠征を糧に未来の巨人を担う選手が1人でも多く育ってほしい。それが三軍首脳陣の願いだ。そして遠征も半ばに差し掛かった5日目。この日、川相監督に自ら歩み寄り熱心に指導を仰ぐ1人の選手がいた。5年目の野手・高橋洸(23)。2011年、高橋は50m5.8秒という俊足を買われ2011年、ドラフト5位で入団。未来の1番バッターとして、大いに期待された。しかし、ウイークポイントのバッティングを向上させることが出来ず、怪我にも苦しめられた。そして、入団わずか2年で背番号67から、3ケタの育成選手に降格。その後、一度も支配下に戻ることなく、今年5年目のシーズンを迎えていた。高橋は三軍選手で唯一の妻帯者。今年3月に結婚した妻・志桜里さん(26)。交際を始めた去年から、高橋を全力で支え続けてきた。台湾に来てからも1日も欠かすことなく励ましのメールを送ってくれる。彼女の為にも1日も早く支配下に戻りたい…。高橋は初戦から先発出場。すると初回、塁に出た高橋がいきなり脚で見せる。見事、盗塁成功。その後も積極的に盗塁を仕掛け、自慢の脚でチームを盛り立てる。さらに高橋は貪欲に技術を吸収しようと自ら監督のもとを訪れ、教えを乞う。そして迎えた台湾遠征の最終戦。プロチームとの試合で高橋が今度はバットで見せた。甘く入った高めの球を弾き返しツーベースヒット。さらに第4打席でも、センター前ヒットを放つなど2安打。この最終戦、敗れはしたものの、高橋は台湾遠征の全試合に出場し、チーム最多の7安打、4盗塁をマーク。上々の結果を残した。
現在、巨人の支配下選手は69人。枠はあと1つある。その最終期限は、7月31日まで。三軍選手たちの熾烈な戦いは続いていく。
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