バックナンバー:バース・デイ

BACK NUMBER #469 2015.4.25 O.A.

バックナンバー
井岡一翔 再起を懸けた激闘の舞台裏
2015年4月22日。男は、地獄の底からリングへと戻ってきた。1年前、プロボクサーとして、初めての敗北を味わった。それは、井岡にとって余りに大きな屈辱だった。なぜ、負けたのか?やってきたことは、間違いだったのか?エリート街道を突っ走ってきた井岡のプライドは粉々に砕け散った。出口の見えない真っ暗なトンネル。しかし、決して逃げ出そうとはしなかった。そして、1年ももがき続け、再起をかけた戦いに挑む。ボクサー人生のすべてを、この一戦にぶつけていた。立ちはだかる相手は、7年間無敗、世界王者として、8度も防衛し続ける最強王者。その舞台裏を公開する。

試合当日。井岡は人生をかけ、リングに上がる。そんな大事な一戦を控えた当日にもかかわらず、井岡は快く取材を受けてくれた。父は元プロボクサー、叔父は元世界チャンピオン。ボクシング界のサラブレッドとして、エリート街道をバク進し、常に夢を叶え続けてきた。しかし1年前、その境遇は激変した。
2014年5月。井岡は三階級制覇をかけ、世界タイトルマッチに挑んだ。しかし、相手のテクニックによって翻弄され、プロデュー以来、初の敗北。この瞬間、井岡が思い描いていたボクシング人生は、崩れ去った。そして、この敗北という事実が、心に大きくのしかかった。井岡の心に、容易にはふさがらない、深い傷が刻まれた。練習しても、以前と同じ内容に、不安がよぎる。自分を築き上げてきたことが、信じられない。1つの敗北が井岡の心を、そんな負のスパイラルに追い込んでいた。それでも井岡は、決して逃げ出そうとはしなかった。砂を噛むような思いを必死に抑え、もう1度、土台作りから始めた。激しいトレーニングを、ただひたすら積み重ねた。そして、1つの答えにたどり着いた。世界の頂点だけを一途に睨んでいた、あの頃の思い。それが、自分の原点だと確信した。失ったものは、取り戻せばいい。そんなシンプルな力強い思いが、井岡の体を突き動かした。そして、あの敗北から、350日目のこの日、井岡は勝てばチャンピオン、負ければ、ボクシング人生が変わる、運命の一戦に挑む。
そして迎えた決戦の日。1年前、ボクサー人生の崖っぷちに立たされた井岡はが、WBA世界フライ級タイトルマッチのリングに、挑戦者として上がった。迎え撃つチャンピオンは、この階級で7年間無敗、8度の防衛を続ける、アルゼンチンのファン・カルロス・レベコ。井岡のセコンドには、父・一法と叔父・弘樹がつく。運命の試合が始まった。左ジャブを使いながら、相手との距離をしっかりとる井岡。一方、チャンピオン・レベコは、前に圧力をかけ、得意のインファイトを仕掛ける。互いに自分のペースを掴もうとする中、井岡が魅せた。足を使って、的確なカウンターパンチ。このパンチで井岡は、自分のペースを掴む。一方、チャンピオン・レベコは、手数を増やし、リズムを掴もうとしていた。しかし、井岡は全く乱れを見せない。そして、カウンターで放った、井岡の左フックがレベコの顔面をとらえた。セコンドの指示を受け、レベコがさらに手数を増やす。35勝のうち、19試合でKOを奪ったハードパンチで勝利を狙うレベコ。試合中盤、開始当初から打ち続けた、井岡の左ジャブとボディがレベコを追い詰め始めた。後半に入ると、チャンピオン陣営は、明らかに焦っていた。そんなチャンピオンに対し、井岡は冷静だった。集中を切らさず、カウンターを決める。そして迎えた最終12R。焦るレベコに、井岡は落ち着いて挑み続ける。勝敗は判定に持ち込まれた。1年前の敗北、そして味わった挫折を乗り越え、見事、世界チャンピオンに輝いた。そして同時に、井岡家の悲願だった、三階級制覇も成し遂げられた。
思いもしない敗北という、どん底から這い上がった、井岡一翔。三階級制覇の大偉業は、もう1つのバース・デイの瞬間だった。
[BACKNUMBER]
banner_AD
Loading…

SNS

TBSトップページサイトマップ Copyright© 1995-2020, Tokyo Broadcasting System Television, Inc. All Rights Reserved.