あなたには帰る家がある

インタビュー

佐藤真弓役 中谷美紀さん

実際に佐藤真弓を演じていかがでしたか?

作品中の真弓の心の声が辛辣で痛快なので、 楽しみながら演じさせていただいています。
また、真弓の娘を演じる桜田ひよりさんが、自分が親だったら目の中にいれても痛くないだろうなと思えるほどかわいらしくて、こんなかわいい娘をあてがっていただき嬉しいです。
彼女の笑顔を見るたび「生きている」と実感する気持ちで演じていきたいなと思います。

真弓を通して新たな発見は?

真弓は、言葉づかいが乱暴なところがあるので、台本を読んで嫌悪感をいだくことも少々あったのですけれど「リアルな心の声ってこうなんだろうな」とも思うようになりました。朝から晩まで休みなく、家事に仕事に明け暮れていたら、家のことを何もしない夫に対して罵詈雑言を浴びせたくなるのも当然だと、リアルに感じられるようになってきました。私自身、朝食は食べないのですが、お母さんになると朝起きてから目玉焼きを作って、ハムサラダを作るべくキャベツを切って、パンを焼いて…学業とスポーツに専念させるために子供に朝食の手伝いはさせず、自分ですべて準備をする。さらに洗濯もして…となると、お母さんは本当に大変だなと思います。

妻よりも母であることを優先するような気持ちに?

真弓を演じていて、失礼だとは思いますが、ついつい旦那さんを演じている玉木宏さんより、娘のひよりちゃんに目がいってしまいます(笑)。あんなにハンサムで皆さんの理想の夫であろう玉木さんが横にいらしても桜田ひよりちゃんの娘として存在するその魅力に夢中になってしまいます。

玉木宏さんと共演して

きっと繊細な方なのだろうと思います。秀明の優柔不断で脇の甘いダメ夫具合を絶妙なバランスで、コミカルかつリアルに演じてくださっています。でも、ご自分でお洗濯していらっしゃると伺ったので、秀明よりも出来た夫です!(夫婦仲が良い訳ではないので)距離を縮め過ぎず程よい距離感を保って撮影をしています。撮影中も話しかければ笑ってくださいますし、話さなければずっと静かに微笑んでいらっしゃいますし、本当はどんな方なのか、お互いを知り過ぎないからこそ楽しんで演じることができています。

夫婦の演技プランのお話はされますか?

私は役者さんと演技の話をするのが苦手で…。役者同士で結託し過ぎると演出家の意図と異なってくることがあります。舞台でお世話になった演出家のデヴィッド・ルヴォーさんがおっしゃった「役者同士でダメだしをしないでください」という言葉を大切にしています。ユースケ・サンタマリアさんとはお芝居の話は一切しないで、くだらない話ばかりしていますよ(笑)。演技はフィーリングで演出家との関係でつくっていくようにしたいなと思います。もちろん相手の役者さんの声を聞いて、表情を見て、それにリアクションすることを最も大切にしていますが。

佐藤家について

ごく普通にローンでマンションを買って、ごく普通に子供を育てて、ごく平均的な家庭。人並みに夫への不満があり、人並みに妻への不満がある。ごく普通の家庭でも夫が家族に決して言えないような出来事が起こり得るんだなと。それが人生の不思議なところでもあり恐ろしいところですね。

娘を演じる桜田ひよりさんとのエピソード

意外と子役さんからお芝居をされている方って自立していらして、大人にかまってほしいなどとは思っていない節があるように思います。むしろ私が邪魔しているのではないかなと最近は思い始めました(笑)。以前、ある子役さんとご一緒したとき、大人たちはかまってあげようと、遊んであげようと上から目線で近寄るのですが、ご本人はまったくそんなことは望んでいなくて、空気を読んで、大人たちと遊んでくれていたように思えました。おそらく桜田ひよりさんもそういうタイプでしょう。もちろん話かけると楽しそうにお話はしてくれるので、本番前にリラックスした雰囲気を作るために雑談をしたりしています。

真弓と夫・秀明との関係

本当に毎日一緒にいるからでしょうね。腹立たしくなるんですよね。 外からみたら「あんなにハンサムで優しそう」って、誰もが羨むような旦那さんですけれど、実際暮らしてみると、人畜無害ではあるけれど、こちらの思いを汲んでくれていないという苛立ちのようなものは演じていて実際に感じます。夫婦の会話が一方通行なんですよね。まさに暖簾に腕押しといったところでしょうか。

中谷さんが思う理想の家族像は?

各々が自立した関係です。ベタベタの家族より、例え異なる価値観を持っていても互いに尊重し合うことができて、程よい距離感のあるほうが楽かなと思います。信頼しているからこそ自由にできるので、どこか共有できるものがあり、困った時には助け合いながらも、各々で異なる道があったらいいなと思います。

夫の相手となる茄子田綾子について

なんと貞淑な妻なのでしょう!自分には出来ないなと思いました。
前時代的な虐げられている女性ですよね。欧米諸国の女性が同じことを夫から望まれたら、ちゃぶ台をひっくり返しているのではないかという(笑)、一方で日本らしい理想の妻の姿だなと思います。そしてその正しい妻のあり方が、真弓のようなズボラな働く主婦を苦しめることにもなるのだと思います。もちろん人の幸や不幸を他人がおしはかることは無粋ですが、木村多江さん演じる綾子がついつい他所に幸せを求めてしまう姿には、共感できる女性も多いのではないでしょうか。もし私自身があの状況に置かれたら、逃げ出したくなるに違いありません。

このドラマは女性100人の声を聞いてつくられているそうですが

実際のアンケートを私は拝読していないのですが、1話で登場する「賞味期限」問題。私自身も少々ゆるいところがあります。先日も「燕の巣」をいただいたのですが、いいものをいただくと、ついついもったいなくて取っておいてしまうんですよね。そうしていたら賞味期限が一週間以上過ぎていて、でも、やはりもったいないので、美味しくいただきました(笑)。そういう主婦の方も世の中にはたくさんいらっしゃるのでしょう。
まだ盛り込まれてないけれど、「便座」問題も深刻だと思っています。「トイレは座ってしなさい」と旦那さんをしつける奥様が最近増えていると聞きます。私もそのようにしていただきたいと思いますので。今後、作品に盛り込まれるのかどうか…。

共演者の方と楽しみにしていること

やはり新たな出会いというのは刺激的です。
特に本音をためらわずに言えるシーンだということで、駿河太郎さん演じる三浦圭介が勤めるカレーショップのシーンは、楽しみにしています。カレーが美味しいお店ですし、この作品のお料理を担当してくださっている住川啓子さんというお料理の先生は、お料理がお上手なだけでなく、糖質をいただけない私の体質にもご配慮くださっているので、おいしいカレーを楽しみに頑張りたいと思います。

みどころ

普通に描いたら悲惨なお話かと思いますが、それをコミカルに、辛辣に描く作品です。4月13日にスタートする春のドラマですので、苦しくならずに楽しく気軽にご覧いただけて、且つ身につまされるようなリアルなお話でもあります。シニカルかつスリリングな大人のためのブラックコメディーとなっておりますので、ぜひご覧いただけましたら嬉しいです。

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