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インタビュー 第十二回 加藤貴子さん(幸恵 役)

——台本を読んでの感想。

すでに原作を読んでいたのですが、それにも関わらず最終話の台本をいただくまで毎回毎回、次のお話が楽しみで仕方ない、そんな台本でした。
「とんび」は、ヤスさんとアキラ親子のお話ですが、台本には2人だけでなくて、周りの人々のセリフ一言一言に奥行きがあり、本当にこの人たちは生きているんだなぁと思わせてくれます。恐らくこの台本を読まれた方はみんな「絶対に参加したい!」と思うのではないでしょうか。
誰もが羨ましがる作品に参加させて戴けたことに、私は本当に幸せを感じています。

——演じる幸恵という人物について。

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幸恵は、ヤスさんの幼なじみである照雲さんのお嫁さん。明るくて、「考えてばかりいても仕方ないね。」と言っていそうなおおらかな女性です。
3話で描かれていましたが、幸恵は残念ながら子どもに恵まれませんでした。それでも責めることなく、お互いを思いやりながら生きている照雲と幸恵の夫婦は素敵だなぁと思います。
オーバーな言い方かもしれませんが、女性として生まれてきたら、本能的に子どもが欲しいと思うのではないでしょうか。子どもが欲しかった幸恵にとって、子どもが出来ないということは、幸せな何かをもぎ取られてしまった気がするのではないかなぁ…と思ったんです。でも、演じているうちに子どもが出来なくとも、旦那さんとアキラとヤスと育んできた愛で、もぎ取られてしまったところをすべて補ってもらっているのかな…とも思うようになりました。
2話で海雲和尚が教えてくれた、アキラの背中をみんなで温めてあげるシーン。あのときは、アキラに対して言っていましたが、「とんび」の登場人物たちはみんなで温め合っているんだと思います。たえ子ねえちゃんの実の娘が来たときも皆で温め合い、描写はありませんが、幸恵もきっと子どもが出来なかったことで、もぎ取られたところを温めてもらえたのではないでしょうか。

——幸恵の30年間を演じるにあたって…。

幸恵の髪型は、ヘアメイクさんとプロデューサーの石丸さんと相談し、いろいろな髪型にして30年間の流れを作っていきました。
そして、今回「とんび」ではじめて役作りとして体重を増減させました。
幸恵は流産しやすい体質の女性だと撮影に入る前に聞いていたので、母性本能というよりは痩せている感じを出すために、3話までは痩せるよう努力しました。
4話以降からは40歳を過ぎて、いろいろなことを受け入れたおおらかな幸恵が出せるように、少しずつ体重を増やしていきました。

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——今までの撮影で印象に残ったシーンは?

ポスターにもなっていますが、常盤貴子さんとの金色の稲穂畑のシーンです。
あのシーンはとても幸せなシーンとして印象に残っています。
もちろん最後まで台本を読んでいるので、このあと美佐子ちゃんが亡くなってしまうことは知っていましたが、稲穂が“たわわ”に実っていて、温かくぽかぽかした日差しが射し、「この子が元気に生まれてくるように…」と何の不安もなく願っている。「幸せというのはこういうことなんだ」と思えるシーンでした。
また、アキラの早稲田大学の合格祝いをするために薬師院で鍋を食べるシーンも印象に残っています。
みんなで薬師院で鍋を囲むシーンというのは今までもありましたが、尾藤社長がいて、海雲和尚の奥さんがいて、今度は照雲さんが海雲和尚の席に座って鍋を囲んでいる…このシーンを撮影したとき、佐藤健くんが「この空気の中にいると涙が出てきます。」と、ポツリと言ったのが印象に残っています。
実はこのシーンで健くんとはじめて一緒にお芝居をしたのですが、それにも関わらずみんなが集まったときに20年間の私たちの歴史がぱっと出来るんだ…と、鳥肌が立ちました。
こういう現場で演技が出来ることは本当に幸せだな…と改めて思ったシーンでしたね。

——今後のみどころ。

ヤスさんだけではなく、登場人物がみんないい意味でバカで、掛け値なく与えられるものがあれば全部与えます!という人たちばかり。
正直、今の時代には鼻白んでしまうような、そんな愛情のかけかたもしています。けれど、私は大事なことだと思います。みなさんにも同じようにこの時代を生きてもらい、いろいろなことを感じてもらえたら嬉しいです。