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インタビュー 第一回 内野聖陽さん(市川安男 役):前編

——この作品について

なにか複雑なことがあるわけではないですが、とてもシンプルな親子の情愛が描かれていて原作を読んで、何度も涙したお話でした。夫婦、親子、隣人、の深い関わりあいというか、絆があたたかいんですよね。市川安男という人物は、ここまで親バカになれる父親はなかなかいないだろうという人物。そのハズレ具合が本当にバカの魅力に満ち溢れていて、笑いながらも泣けてくるというか。そして、飲み屋のあねご、寺の和尚父子、取引先の呑気な社長、などなど…出てくる一人一人がとても味があって、魅力的です。

脚本家の森下さんは、それぞれのキャラクターの良さをとても魅力的に立ち上げていて、各話それぞれのエピソードも濃密で見応え充分だと思います。

今回は、昭和40年代からの30年間を表すので、美術チームもそれはそれは頑張っています。全体がつながったときにどんな世界観になっているか、自分でも楽しみな作品です。

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——ヤスを実際に演じていかがですか?

ヤスの人生はデコボコな人生。父親がいなくて母親も失っていて、親の手本を知らない。「父親ってなんだかわかんねぇんだよ、俺。」と言って、親の常識に反することばかりする男です。怒ったり、泣いたり、拗ねたり、虚勢はったり、そんな男が、いろんなとこにぶつかりながらも、親らしくあろうと葛藤する姿は、親近感がわくんです。親の優等生というのがあるとしたら、親の悪い例みたいに一見見えるんだけれど、子供をまっすぐに愛していたら、やっぱり人間の本音としてぶつかるものがたくさんあると思うんですね。それを彼は惜しみなくストレートに見せてくれるやつなので、演じるときには理屈抜きに直球から入るようにしています。常識にとらわれないおバカな感じの愛らしさが出るよう日夜台本と取っ組み合っています。

ヤスは全く「父」の手本を知らないけれど、どんな男だって手本なんかないでしょう?ヤスの言動はそこが極端なので、見ている人に勇気をくれると思いますね。「間違っていいんだ。親バカで上等じゃないか。」ってね。

でも、ヤスは繊細さがないかっていうとそうではなくて、ヤスなりにいつも揺れている。父として自信はないけれど、「俺にはこれしかないんじゃ!」みたいな開き直りがまた気持ちいい。馬鹿なりに一生懸命なんです。たんこぶ作って青あざつくっても、必死に親たろうとする。そこに僕は感動します。

——アキラ役の佐藤健さんの印象を教えてください。

実は、撮影も中盤戦に入って、つい先日初めて共演したんです。

『とんび』は、父と子の30年にわたる話。僕が共演したアキラ役は、0歳、3歳、6歳、11歳…そして健くんで5人目。健くんは1話から登場していますが、実際に健くんとの親子の共演が始まったのは第5話でした。健くんは、感性が柔軟で、ふとした表情や言葉のポソリとした使い方がとてもセンシティブな魅力があります。まさに粗雑で無骨なヤスと対をなす存在だなと思いました。優等生で賢いアキラを見ていると、バカで粗雑なヤスがよくわかる(笑)。健くんとの最初のシーンを撮った日、とんびと鷹の物語がいよいよ始まるんだなと楽しい気分になりました。

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——佐藤健さんとのコミュニケーション

現代の父と子とは違って、昭和の父と息子というのはなんでもフランクに話せる存在ではなかったのではないでしょうか。

自分自身も父に対しては、気楽にもっと話せたらな、なんて思い返すこともありますし。

星飛雄馬のオヤジみたいにちゃぶ台をひっくり返す家長というのは昭和初期には全然珍しくなかったと聞きます。なので、ゲンコツが飛んでくるようなおっかねえ親父と息子の間に漂う空気感みたいなものは大事にしたいと思っています。とにかく、いい緊張感で、セリフにはないけれど、僕と健くんにしか出せない空気感、父と子の関係を表せたらと思っています。 

——普通の親子関係とはちょっと違う?

そうですね。

父がこれだけ激しくバカだと(笑)、子供にしてみたらやはり、親が自分を思ってあんなにあがいてるのなら、それに応えてあげなくちゃなんて思うところもあるんじゃないでしょうか(笑)。もうほとんど、どっちが親心かわかんないぐらい。

そこがこの親子の面白いとこでもあると思いますね。