インタビュー

新垣結衣さん(森山みくり役) Part.2

『逃げ恥』を振り返って

楽しかったなぁ…と思います。「何事も楽しんでやる」と言う目標を常に掲げているので、このドラマに取り組んでる間はその目標は達成できたなと思います。よくインタビューで印象に残っているエピソードを聞かれることが多いのですが、『逃げ恥』は本当にありすぎて、ひとつに絞れないくらい楽しくて濃密な時間を過ごしたと思います。

3ヶ月間で星野源さんの印象は?

3ヶ月前と印象は変わらないです。最初から自分と感覚的に近いものを持っている方なのかなと思っていました。お話が進む中で、みくりと平匡さんがどんどんシンクロしてくるようになりましたが、それも回を重ねるごとに自然な事になって二人のシーンの時はとても安心感がありました。
監督たちも含め『逃げるは恥だが役に立つ』というドラマの世界観に対するイメージがそれぞれ離れたものでなくて近いものを持つ事ができて、同じ方向を見る事ができたのでフィーリングがあったんだと思います。有り難いです。感謝です。

3人の監督

金子文紀監督は、『逃げ恥』において「ムズキュン」というワードを一番のテーマに演出されていました。それがドラマの中にも溢れていて、男性だけど、乙女心を持っているような繊細で無邪気で可愛らしい方だなというのをお話していても、出来上がったものを見ても感じます。一番最初のリハーサルを誰よりも楽しみにしているのは金子監督で、情熱が伝わってきました。現場で一番ムズキュンしていたのは金子監督ですね。
土井裕泰監督は、ご一緒するのが今回で4作品目なので、100%信頼しています。土井監督のファンタジーと現実のバランスがとても好きです。ちょうど土井監督が演出された回がパロディやコスプレとかコメディ要素が強い回で…新鮮でとても楽しかった!というのも、コメディの作品で土井監督にそういうお芝居をつけてもらうのが初めてで楽しかったですし、出来上がったものを見て、すごく突き抜けていて、感動しました。土井監督の演出でいつもと違ったお芝居が出来たことがすごく嬉しかったです。
石井康晴監督は『スマイル(2009)』というドラマでご一緒したことがあります。7年ぶりにご一緒したのですが、石井監督も久々の再会をとても喜んで「大人になったね!」ってしみじみ言ってくださって。お芝居中も「信頼してくれているんだろうな」とすごく感じられて、嬉しかったです。石井監督のタフさというか穏やかさに何度も励まされました。石井監督の回はとてもどっしりとドラマチックな印象で、それぞれの色が感じられて毎回オンエアがすごく楽しみでした。
監督たちもそうですが、今回の現場には、過去にお仕事をしたことがあるスタッフさんたちが多いんです。6話での妄想シーンでは『パパとムスメの7日間(2007)』の制服を着ましたが、『パパムス』に出演していたのは19歳のときなのですが、当時のチーフカメラマンさんと『逃げ恥』のチーフカメラマンさんが偶然にも同じ方で、その再会もとても嬉しかったですね。同じ姿を同じカメラマンさんに撮っていただくという、時の流れを感じてムズがゆい気持ちと、またこうやって時が経っても変わらず一緒にお仕事をしていられるというのは『パパムス』をやっていた当時は想像もしなかったですし、そうやってずっと繋がっていくのが嬉しいですね。成長を見守っていただけているようで、非常に嬉しいです!

みくりさんは改めてどんな女性?

何事も一生懸命な子。それが、今回のドラマにおいて大事な要素でしたし、そういうところが好きです。悩んだり、浮かれたり、何かに一喜一憂するのも一生懸命に目の前のことに向き合っているから。妄想癖がすごいとか、突拍子もないことを言うとか、小賢しい一面とか、そういうのは一般的なものではないかもしれないけれど、結局何に対して悩むのかとか、何に対して喜ぶのかとかは、ドラマを見てくださっている皆さんと私と変わらなくて、普通の女の子なんです。だから皆さんもみくりに共感して応援してくれたり、私も演じていてみくりが好きだし、一生懸命生きている姿が魅力的で普通の女の子だと思います。

みくり飯の味

私…実はドラマの中では意外と食べてないんです。なぜなら食卓ではいつも平匡さんの様子をうかがっているから。そんな中で、パッと出てきたのは、だし巻きたまご!すっごく美味しかったです!…でもやっぱり全部おいしかったなぁ。料理監修の赤堀先生が用意してくださる料理は、おいしいだけじゃなくて、ひと手間加えられていて、見ていて面白かったです。おそらく、みくりが大袋でまとめて買った材料を使い切らなきゃいけないので、同じ食材を何品にも使いまわされていたりして、いろいろなことをリアルに考えて作ってくださっているんだなぁと思いました。…ああっ!ローストビーフ!!ローストビーフもおいしかったです!今、思い出しました。特にソースがおいしかったです。ローストビーフを食べたのは百合ちゃん家で、ですが、百合ちゃん家では、ワインを飲むのでおつまみや香りがいいものを作ることが多いんです。1話で登場したアボカドもバジルソースにみえて、実はパセリソースだったりと、本当にいろんな工夫をしてくださいました。

最愛の伯母・百合ちゃん

百合ちゃんの姪でいられて本当に幸せでした。家族の役を演じていても、お芝居で相手に対して触れるということがどこか遠慮がちになってしまうことがあるのですが、今回は百合ちゃんがみくりの頭を撫でるというか…わしゃわしゃっとするシーンがあったので、たくさん触れているぶん気持ちも早く近づけた気がします。百合ちゃんを演じる石田ゆり子さんは、本当にハートフルな方。以前出演した『ぴったんこカン・カン』でもお話しましたが、撮影が一緒じゃない日もこちらのことを気にかけて、メールをくださるんです。それが本当に何気ない、百合ちゃんが飼っているペットの写真だったり、お料理の写真だったり「このサラダが美味しい!」とレシピを教えてくださったり、女優さん、先輩としてだけじゃなくて、もっともっと近い人の感覚で関わろうとしてくれたのがすごく嬉しいです。それがきっとお芝居中にも滲み出ていたんじゃないかと思いますし、百合ちゃんのような大人の女性になれたら、周りの人たちはきっと楽しいんじゃないかな、こういう人になりたいなぁと思いました。
最終回でのわしゃわしゃはドラマの中盤で、あまり百合ちゃんと一緒のシーンがなかったのでそのぶんいつもより激しかったです。後半は百合ちゃんは、ゴダールと風見さんばっかりだったので…。
百合ちゃんがプンスカしてたり、アワアワしているのはキャリアウーマンとしてのキャラクターとのギャップがすごく可愛らしいなと思っていましたが、最近は風見さんとのシーンになると画面からぐっと大人の雰囲気が漂っていて、素敵ですよね。

百合ちゃんと風見さん

百合ちゃんと一緒にいる風見さんは、私たちと一緒にいるときの風見さんとは全然違う顔をしているなぁと感じました。珍しく自分のぺースを乱されて感情がはみでている様子がすごく新鮮。
10話で風見さんのお家に家事代行を断りに行くシーンで久しぶりに顔を合わせたとき、風見さんのまとう空気が今までと変わっていた気がして、表情などが柔らかくなっていて。ドラマの放送を確認したら「あぁ…なるほど!」と。風見さんは今まで完ぺきで本心が読めないキャラクターでしたが、すごく人間くさく魅力的になりましたよね。百合ちゃんと出会ったことでこんなにも雰囲気が変わるんだと、人と人の組み合わせはすごく面白いなと思いました。

平匡さんも変わりましたよね?

変わりましたねぇ!最近はダイジェストが放送されているので1〜2話を振り返って観ていると、平匡さんの表情が全然違うなぁと思いますが、声も違う気がします。私は5話で変わったなと思うんです。5話のピクニックをしているシーンで自分の家族の話をしているとき、いつも食卓で話しているようなビジネスライクな話し方というよりも1人の人と人が話しているような感じになったと、隣でお芝居していて感じました。それはこのピクニックの緑の芝と青い空と、家族連れがいる、のどかな空気がそうさせているのかなぁとも思いましたが、そのシーンを境に、旅館で食事しているシーンも、すごく柔らかく感じて、その変化がおもしろかったです。星野さんご自身が意識されているのか、無意識なのか、それはわからないですが、平匡さんとしてはパーソナルな話をするのは初めてで、台本の流れにそって自然と変化していったのだとしたら、そういう変化をさせてくれる台本を書いた野木さんは…すごい!

脚本・野木亜紀子さんの台本

やはり気持ちがいいなと思います。最初に『空飛ぶ広報室(2013)』でご一緒したときからそうですが、登場するキャラクター全員に平等な愛を持ってくださいます。みんな愛せるキャラクターですし、応援したくなるようなキャラクター。すごく現実的で、綺麗すぎない人間らしいキャラクターだけど、そこには程よいフィクションもあって、現実の私たちも希望が持てる…ドラマを観ていても勇気をもらえますし、頑張ろうと思えますし、さらにお話の中に登場する“伏線”が、ストーリーに深みと厚みを持たせてくれるので、野木さんの書く脚本は好きです。
『逃げ恥』の最終回も、その先を想像させてくれて、いつまでもその世界の中で生きているような気持ちになります。もやっと気持ち悪くなく、「本当によかった!」と思える終わりを書いてくださったので、演じていて気持ちよかったですし、きっと観ても気持ちがいい!この、ドラマ『逃げ恥』のもう一人の生みの親である野木さんが描く世界を生きることが出来て幸せでした。

視聴者のみなさんへ

仕事として二人が出会って、関係性が始まり、そこに徐々にプライベートな恋心が絡んできましたが、最終回はこのドラマの原点に一度戻るような気がしますし、二人の関係性も…ある意味原点に戻ると思います。そうやって物語は繰り返していくんだなぁと、どんな形になるかはわからないけれど、みくり達はそれぞれまた一生懸命生きて、きっとこれからも続いていくんだなぁと。ドラマが終わって寂しいと思ってくださる気持ちは嬉しいですが、寂しいだけじゃなくて、最終回後は、清々しくしっくりとあったかい気持ちになっていただけるんじゃないかなぁ…なので、最後までしっかり見届けてください!

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