プロファイリングQ&A

FBIがプロファイリングに着手するきっかけとなった、精神科医ブラッセルの犯人像分析は、1940年代から1950年代にかけニューヨーク市などで発生した「マッド・ボンバー」事件が対象でした。
犯人であったジョージ・メテスキー（George P. Metesky）は、駅、ミュージックホール、ニューヨーク公立図書館、バスターミナル、ニューヨーク市内の地下鉄などに爆弾を仕掛け、多数の負傷者が出ました。犯行動機は、かつて勤めていた会社への不満などと言われています。
ブラッセルの犯人像分析は、メテスキーを正確に描いていました。
なお、ネット上で、当時の逮捕時のニュース番組を見ることが出来ます。

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新堀が行っている「地理的プロファイリング」の基本的なモデルが、犯行地点選択モデルです。
カナダの環境心理学者であるブラッティンガム夫妻（1981）が考案し、それに基づき、キム・ロスモが地理的プロファイリングのソフトを作成しました。
このモデルの考え方は、（1）犯罪者にとって居住周辺の地域は魅力的な場所である、（2）犯罪者（人）は、自分の置かれた環境の中でランダムには行動しない、（3）犯行行程は、仕事や買い物に出かけるのと類似しており、また、それらと同様の制約を受けている、というものです。
すなわち、（4）ほとんどの犯罪者は、犯行場所を行き当たりばったりで選択はしていない、（5）被害者は偶然選ばれるかも知れない、（6）しかし、犯人が気づいているかどうかは別として、偶然の選択は空間的に構造化されている、ということになります。
キム・ロスモは、この考えを数式に置き換え、犯人の生活拠点などを推定することを思いついたわけです。

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主に精神疾患などの治療を行うのが精神科医です。
精神医学は、精神の障がいを対象とする医学の一分野であり、その原因、診断、治療、予防などを研究する学問です。
研究内容によって、精神病理学、脳病理学、遺伝学、精神薬理学、司法精神医学などがあります。
それに対して、通常の人間の心に関する研究や実践を行うのが心理学者です。
心理学の領域には、脳のメカニズムをコンピュータと比べ実験を行う認知心理学、対人関係や社会的な現象をテーマにして分析する社会心理学、生理反応を用いて脳と身体と心の関連を明らかにする生理心理学、心理テストやカウンセリングを行いながら心の悩みを和らげる臨床心理学などがあります。
犯罪場面において、精神科医は、異常性の高いと思われる人への精神鑑定や、矯正施設などで診断・治療を行ったりします。
心理学者は、生理反応で犯罪記憶の有無を鑑定する、非行少年の鑑別や教育を行う、などがあり、近年は、犯罪者プロファイリングが加わりました。

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記憶内容、記憶過程などの病的変化のことを指します。
例えば、新しい知覚や体験した情報を取り入れて保持することの障害を、記憶過程の障がいといいます。コルサコフ症候群が有名です。
記憶内容の障がいには、過去の記憶が活発によみがえる記憶過多、記憶が脱落する健忘、実際には体験していないのに事実として思い起こされる偽記憶、実際の体験が歪んだり改ざんされ思い起こされる記憶錯誤、などがあります。
なお、健忘については、第７回のコラムも参照して下さい。

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2002年2月、警視庁が東京都新宿区歌舞伎町地区に街頭防犯カメラシステムの運用を開始するなど、以後、日本各地で防犯カメラ（Closed-Circuit Television：CCTV／閉回路有線テレビ）の運用が試みられています。
防犯カメラの先進国であるイギリスでは、プライバシーの侵害といった問題を意識しながらも、犯罪抑制の効果をより全面に押し出して導入しています。
1980年代後半から、都市やシティセンターに政府の資金援助などで設置されて以来、様々な地域で運用されており、その効果としては、（1）犯罪を思いとどまらせ、（2）犯罪が行われても逮捕に役に立つ、ことが指摘されています。
他方アメリカでは、ショッピングモールでは多く使用されているものの、中心市街地といった公的部分での使用は少なく、犯罪抑制の評価も良い結果は得られていないという報告がでています。
日本では、前記した歌舞伎町以後、渋谷区渋谷地区（2004年）、豊島区池袋地区（2004年）、台東区上野2丁目地区（2006年）、港区六本木地区（2007年）にて、それぞれ運用が開始されており、その運用には厳格な規程や要綱が定められています。

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アメリカでは14分間に１人が銃弾で死亡しているというデータがあります。その死亡の理由は、約52％が自殺、約44%が殺人事件、残りが過失による暴発です。
1998年の殺人事件の使用凶器を男女別（%）で見ると、次のようになっています。
銃器による殺人は、女性が53％、男性が66%となっており、双方とも高い割合になっています。（表の数字は、各性別における割合となっています）

また、ある研究では、銃を所有する家庭のほうが、銃のない家庭よりも家族を死亡させる危険性が３倍高いことを明らかにしています。銃が手にしやすい状況にある場合、暴力的な犯罪を促進させることが十分に考えられます。

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スプリー型とは？
ＦＢＩは、複数の被害者がいる殺人事件を、「大量殺人」」「連続殺人」「スプリー殺人」の３つに分類しています。
大量殺人とは、同じ場所で４人以上を一度に殺害するもの。
連続殺人とは、別の場所で、別の時間に３人以上を殺害するもの。
スプリー殺人とは、２箇所以上の場所で、時間が異なっていても感情の冷却期間がなく殺害するもの。
この分類を基に、通り魔のスプリー型を定義すると、「２４時間以内に複数の被害者を攻撃したもの」として、分析が行われています。

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フロイトの精神分析学において、重要な概念、考え方となっているのが「エディプス・コンプレックス」です。
男子は、自分の母親に性的な愛着を抱き、自分の父親に殺意を持つことが人間の普遍的な心理である、とフロイトは考えました。主に、神経症の病因として、このエディプス・コンプレックスはとらえられていますが、犯罪心理学的観点から見ると、現実的動機の無い犯罪を説明する際に用いられる考え方となります。
すなわち、エディプス・コンプレックスに囚われる者は、父親殺しを抱く自己への罪悪感に苛まれ、罪悪感を現実化する犯罪に駆り立てられます。犯罪をくり返し、処罰されることを無意識的に望むようになります。
このフロイトの考えは、実証することが大変難しいのですが、理由無き犯罪者の心理を読み解くためにの重要なヒントを呈示してくれます。

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カール・コッホにて体系付けられた人格検査です。コッホの著書「バウムテスト」の冒頭では、つぎのような言葉、「木は人間の根源的な事柄に属するものである。木の象徴は聖書の最初で最後の象徴であり、ここからキリスト教における木の精神的な解釈の世界が開けてくる（岸本ら翻訳、2010）」で始まっています。
この検査は投影法の一種であり、なんらかの曖昧な刺激を与え、それに対して現れる反応の特徴から人格を理解していこうとする心理検査です。Ａ４程度の画用紙を使って、「実のなる木を描いてください」と伝え、鉛筆で自由に描いてもらいます。描かれた木の形態的特徴から、性格特性や精神発達程度が解釈されます。根、幹、枝、樹冠、葉、花、実などを解釈の対象としています。また、検査する側も受ける側も、容易に検査が実施できるので、子どもへの臨床場面や教育場面にて使用されています。

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犯罪者プロファイリングでは、高度な統計分析が行われます。代表的な物として、多変量解析があります。
この解析の目的は、複雑そうにみえる事象に対し、それら多くの情報から有用な情報だけを取り出して問題解決をおこなうことを目的としています。
それぞれの情報（変数）の間にある関連性を考慮し、重みづけし、得点化して、（例えば２軸の）多次元空間にそれぞれの情報を位置づける手法となります。
新堀が行っているのは、過去の豊富な犯罪情報を全てコード化し（例えば、殺害場所が屋内なら「１」、屋外なら「０」）、それぞれの犯罪情報の関連性を検討しながら、幾つかの統計手法を使って、情報の簡略化の方向へ解析していきます。
得られた結果は、概ね３〜５つの犯行のテーマ（グループ）となります。現在発生している事件がどのテーマに属するかを検討すれば、そのテーマの統計データから、現在の犯人の属性や犯行傾向が推定容易になってくるわけです。

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非気質性、心因性、非精神病性といった特質を持ち、自覚的な不安、脅迫、恐怖などの主な症状があり、治療によって軽快しやすい精神的症状です。
ノイローゼとも呼ばれていますが、その概念を厳密に規定することは難しいと言われています。
主な類型としては、不安神経症、ヒステリー、恐怖症、強迫神経症、神経衰弱などがあります。なお、米国精神医学会による精神疾患の診断と統計マニュアル「DSM-IV-TR」には、神経症の項目はなく、また世界保健機構による国際疾病分類「ICD-10」には、神経症性障害、ストレス関連障害といった大項目で分類されています。

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ストーカー犯罪が社会問題になってきた頃、犯罪捜査の視点からをストーカーの分類を試みたのがライト（Wright）とその研究グループです。ライトらは、「ドメスティック・ストーカー」「非ドメスティック・ストーカー」「エロトマニア・ストーカー」の３つのタイプを示しています。主な特徴と捜査のポイントは次の通りです。

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CPSのように分析スタイルが明確に異なるプロファイラー（心理学者、精神科医、数学者、法医学者）が、一つのチームとなって積極的に犯罪捜査に関わる組織は、今のところ日本には存在しません。
CPSは、動機が見えにくい現代社会の凶悪事件を解決するための、近未来的な理想の組織となっています。
現在の日本の状況は、研究や教育を中心として活動する「科学警察研究所（警察庁に在る）」と、現場の事件を直接的に扱い鑑定を行う「科学捜査研究所（警視庁及び各道府県警察本部に在る）」の中に心理職の研究者がおり、トレーニングを受けた警察官と共に犯人像推定や犯罪者の行動分析を行っています。
彼らは、分析の必要が高い事件が発生した時に、データベースによる統計的分析、過去の事例の提供など捜査支援を行なっています。
ただ、CPSに近い形で業務を行う先進的なところ、例えば、北海道警、福島県警、千葉県警、愛知県警、京都府警、徳島県警、熊本県警、宮崎県警などは、事件解決に大きく貢献するプロファイリングを行っています。

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FBI方式とリバプール方式との違いは、以下の通りです。
・FBI方式：精神医学や臨床心理学を背景とし、実際の捜査ではプロファイラーの個人的経験が重視される。
犯罪現場で何が起きたのか、どのようなタイプの人間なのか？そのパーソナリティを重点的に分析する。直観的に捜査をするのも特徴。
・リバプール方式：社会心理学や、統計学を背景とし、データと分析方法が明示されている再現性の高い手法。犯罪者の性格、動機ではなく、犯人は誰なのか？を示すことが目的。多変量解析を用いて捜査をする。
翔子は、犯罪現場情報を重視し犯人の心理に迫るFBI方式です。この場合、これまでの凶悪事件の知識や、稀な事件を取り扱った経験が重要となってきます。
一方、結城、新堀、寺田は、過去の事件データベースを基本にして犯人の行動に迫るリバプール方式といえます。
データベースが構築しやすい放火、性的犯罪、強盗などに威力を発揮する方式です。
現在の日本では、リバプール方式を中心に犯罪情報分析が行われています。ただし、過去に起きたことのない稀な事件が発生した場合、FBI方式が重要視されます。
そのため、この２つの方法を併用し、事件の特徴に柔なんに対応しながら分析を行っています。

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FBIが犯行現場の特徴から、犯人像を推定するために考案したタイプが、「秩序型」「無秩序型」です。
FBIは、アメリカ全土に収監されている連続殺人者や性的殺人者36名に対し、聞き取り調査などを用いて事例を収集しました。そこから、犯行現場に２つのタイプがあることを見出しました。
ひとつは、「計画的な犯行、会話によって被害者を誘導、殺害前の暴行や拷問、死体の隠蔽」などの行動がある「秩序型」。そして、「成り行き的な犯行、いきなり殺害、殺害後の性的行為、現場隠蔽をしない」などの行動がある「無秩序型」です。

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「劇場型犯罪」とは、1983年から発生した「グリコ・森永事件」を契機に、マスメディアから生まれてきた言葉です。
犯罪者がワイドショーなどのマスメディアに広報役を担わせて、一般市民がエンタテインメントの一種として事件を観る、という構造になっています。
主役として犯行をアピールすることが、犯人の動機の一部に含まれるのが特徴です。

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