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「期待感にとどまって」 増田寛也氏(7月17日放送)

増田:一番安いとされる巨大な水力発電はもう事実上無理でしょうから、立地の関係から言えばね。すると、これからイノベーションして太陽光なのか、あるいは国立公園の中にある地熱をうまく活用するだとか、いろいろあるとは思うんです。かなり期待はできそうですけど、逆にまだ期待感にとどまっているところがあるんですよね

不意に数日前の夜に「3・11」以来、日本からの原子力発電の輸入に慎重になったとされるトルコから帰ったばかりという経産省幹部と飲んでいたときのことを思い出したりした。その人は「いやあ、トルコは原子力発電をやめる気はないわけで。ただ、菅総理の『脱原発』の演説はなんなのかときかれたから『ライク ア イマジン オブ ジョンレノン』と答えたら納得してたよ」。「中国の高速列車事故あったろ。もちろんあってはならないんだけど、原発の売り込みにはきくんだよなあ。『あれを見ろ。日本の新幹線はあんなことはないだろ』ってね」……。「商談」はピンチを脱したようだった。「あちら」では「原子力」は止まらないのだ。

行進が新橋の飲み屋街まで来たときには、すっかり夜になっていた。ゴールの桜田公園に着くとリーダー役の若者が「残念なことに逮捕者が出てしまいました。揉めるのは減らしたい。これから反省していこうと思う」と総括したりした。ベンチでそんな様子を眺めていると、初めての「参加」なのだろうか、スーツのズボンに白いシャツ姿の初老の人が崩れるように隣に座って、汗を拭っていた。この人は今まで「歩道」を歩いていた人なのだろうと思った。

新橋の駅から山手線に乗ると行楽帰りの子供連れの家族などで結構、混んでいた。気づいてみれば、長い行進で「路上」の人たちに共感しながらも「原発やめろ」とは口にしていなかった。「行動」せずに、そのまま、歩道側の「あちら」に帰ってきた自分がみじめだった。窓から見ると、駅前の「SL広場」に場所を移動して、なおもなにやら騒ぐさっきの人たちがいた。


※本原稿は調査情報9〜10月号に掲載されています。

石塚 博久 (いしづか ひろひさ)
'62 東京都足立区生まれ。早稲田大学卒業後、'86日本経済新聞社に入社。大阪、名古屋、仙台支局(このとき、「みちのく温泉なんとか殺人事件」に出るような温泉はほとんど行った“温泉研究家”でもある)に。
東京本社政治部で政治取材の厳しい(「虎の穴」のような)指導を受け、新聞協会賞(「閣僚企画」共著)も。
'96TBS入社後は、報道局政治部記者、「NEWS23」のディレクターを経て、「時事放談」制作プロデューサー。

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