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【2009年9〜10月号】

「総括せよ」〜新しい時代を切り拓くには

たたみ六畳ほどの広さだろうか、南から昼下がりのゆるい日差しが差し込む議員会館のその人の部屋は、窓際に不釣合いに大きい紫色の胡蝶蘭が届いていた以外にはいつもと同じだった。翌日に控えた番組の打ち合わせに訪れてソファで座っていると「いやあ待たせたね」と右手を掲げて少し腰をかがめながらその人は入ってきた。満面の笑みで、半年ほど前の「あの頃」の苦渋の表情はもうそこにはなかった。良かったなと思った。

「すまんすまん」と汗を拭きながら座るので、「やっぱりえらくなると忙しいですね」と軽口をたたいてみると、「そんなこと言わないでよ」と言って、肩をたたいてよこした。そして、「でも今日は飲めないよ。残念だけど」と言うので、「そりゃそうでしょう、まだマーケットは開いてますから」と言って一緒に笑った。もう、財務大臣なのだ、以前のように早い時間からビールを飲みながらの打ち合わせは許されないのだ。でも、藤井財務大臣は元気そうだった。

翌日のスタジオでは、紫色に染めた髪もあでやかなエコノミスト浜矩子氏との出演だった。ズバズバ直言する浜氏が、鳩山内閣ならではの新しい政策を直接国民に語りかけていくべきだと説くと、藤井氏はわが意を得たりと意気込みを興奮気味に語った。


藤井裕久氏 10・11「国民の信頼があってはじめて」

藤井:マニフェストに書いてあるのは皆様へのお約束だ。それは事柄が勝負なんだと。これを破るようだったらですね、政治の信用は失われる。経済効果というのは、国民の信頼があるというときに、始めて効果がある。高橋是清さんはこういうことを言ってるんですよ。政治が信頼されれば、カネなんていくらでも出てくる。これね、分からないようでものすごく分かる話なんですよ。

藤井さんとの関係は、92年にさかのぼる。小沢一郎氏が「政治改革」を掲げて、竹下派を出て、「羽田派」を作った頃だった。確か神楽坂の薬膳料理屋さん(なんか高級そうな響きだが、そんな立派な店でもない)での羽田代表を囲む番記者らの会合で同席し、一緒に酒をガブガブ飲んだ。「これから私が広報担当をしろということで、よろしくお願いしますよ」などと、妙に腰の低い政治家だなとの印象だった。若い生意気な番記者だった頃で、 かつて藤井さんが大蔵省にいた当時、田中内閣の後藤田副長官の強い信頼を得て「後藤田5(ファイブ)」と呼ばれるほどだったことは後から知った。

財務大臣就任後初めてだったスタジオでは、浜氏との話ははずみ、「格差を残したままの成長戦略は意味がない」と浜氏が指摘すると、今度は手を振り上げて自ら進もうとしている路線は公共事業投資を中心とした自民党のものとは違うことを強調した。

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