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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 

【2008年11〜12月号】

「投げ出し」と、「つなぎ」と、「準備」と〜政界再編前夜に

その部屋のむっとする熱気とホコリ臭さは、そこでバタバタと記事を書いていたころを思い出して懐かしかった。新しい総理大臣の様子を覗こうと、衆議院の3階にある第一委員室に入ったのだ。天井の高い横長の広い部屋は麻生新総理就任後始めての予算委員会の真っ最中だった。廊下ではどっかのテレビ記者がカメラの前を歩きながら「国会の華と呼ばれる予算審議が今、この中で行われています」などと声を張り上げていた。

部屋の向かって右側の入り口の脇にある長テーブル4列の記者席の最前列に陣取って(でも机の縦幅が30センチぐらいしかないし、とにかく狭いの)質疑を眺めていると、それにしてもひどかったなあと思えてくる。こないだまで、部屋の真ん中のあそこの答弁席で、「安全安心の政治」やら「国民目線で」やら、繰り返してた福田総理大臣は「ねじれ国会」の中で行き詰ったあげくに跡形もない。番組の中でゲストが「前代未聞の投げ出し」を嘆いたり、怒ったりしたが、そりゃそうだよなあと思った。


「参りましたね」 (2008年9月14日)

加藤:(福田辞任は)参りましたね…。私は福田政権を出来る時に応援して推進した方ですから、総裁選の時も選挙区に「福田さんに入れてくれ」とお願いして参りましてね。やはり、ちょっと会わせる顔がないという気持ちです。本当に。申し訳なかったという気持ちです。

渡部:安倍君の辞め方酷いと思って驚いたんだけども、今となってみると安倍君の方が良かった。安倍君よりはるかに酷い辞め方ですね。だいたいね、内閣改造もする必要はないでしょ。あれだけ世間を騒がせて内閣改造しすぐ辞めるって本当に国民を馬鹿にした話。安倍君もちょっとおかしくて、安倍君はそれでも体が悪いってこれは文句の言いようが無い。「健康は大丈夫です」と言って国民に対してあれほど無責任な事をやる。これはね加藤さんよっぽど叱ってあげなきゃ駄目ですよ。先輩なんだから、あんた。国民を裏切ったんだっ。国民を馬鹿にしてるっ。

それだけに今度は「よっぽど」でないといけないと思うのだが、野党の質問に答える姿は、「これじゃあ、またきっとだめだ」と思わせるものだった。「投げ出し」の後を継いだ「選挙管理内閣」だったはずなのに国民に信を問わないで、そのまま総理を続ける姿を問われると「解散より景気対策だ」と、「政治空白」を作らないことを強弁する。思わず、「去年の参議院選挙のねじれ以来1年以上、政治空白だろっ」と突っ込んでみたくなる。投げ出した「福田総理」が胸を張っていた、一般財源化した道路特定財源の使い道を聞かれれば、「12月の予算編成で答えをだせばよろしい」となどとはぐらかす。

見ていて気づいたのだが基本形は、まずは担当大臣に答弁させて、「基本的には認識は同じですがあ・・」などと言って、後は「べらんめえ調」の抽象的な話ではぐらかす、そんなパターンが繰り返されるのだ。予算委員長も自民党議員だけあって(この人、昔から知っていていい人なんだけど)一緒になって必死にその「段取り」を続けるのだが、それが、長時間の質疑の中「はずみ」で崩れたりする。

委員室に緊張が走ったのは岡田克也氏が福田総理が掲げた温暖化効果ガス削減の長期目標「2050年60〜80%削減」を継承するのか問いただした時だった。なんと総理は、「60〜80?25〜40じゃない?違う?」などと得意げに反論したのだ。明らかに中期目標との間違い(それにしても、これだけ環境問題が叫ばれてる時に)で、岡田氏が質問席に座ったまま「それは2020年」と「助け船」を出すと、あわてて手にした資料の束をパラパラめくりだして、それでも見つからないと「僕は正直、今、その数字を詳しく持ってないんで」「60・・・あれが60でしたっけね」などとシドロモドロなのだ。「虚勢」の後のその姿は痛々しく見えた。昭和史に精通する半藤一利氏は、番組の中で、そんな麻生氏の不勉強を「こんな激しいのはいない」と嘆くことになる。


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