【2008年3〜4月号】
●「政界再編へのいざない」〜ニッポンを洗濯したかった男と
国会に入っていくと、衆議院議長室の前の赤い絨毯を敷いた廊下の両脇には衛視が100人ほども集まっていて、これから始まる「混乱」の準備に余念がない様子だった。「では、まずは右へならいだっ」などとリーダーとおぼしき人がかけ声をかけると、一斉にこしに手をあてて、みぎを向いたり・・・。今日は民主党が反発するガソリンの暫定税率をとりあえず2ヶ月延長する法案を、自民党が衆議院本会議で強行採決しようという日。そう言えば、本会議場へ衆議院議長が入るのを阻止した体験談を元野党議員が朝野テレビで喋っていたなあなんて思いながら、その物々しい廊下の真ん中を通り過ぎた。
ほこりっぽい廊下(実際、高級感を出そうとして毛足が長いだけに抜けやすい赤絨毯のホコリが肺に悪いという話は現場記者の間には根強くある。なんせ、一日のほとんどを廊下で過ごすことも多いわけで・・・)を50メートルほど歩くと院内平河クラブ(自民党記者クラブ)がある。そこに入ると狭いところに各社のブースが雑然とならんだ、ムッとするような(だって政治記者って夜回り、朝駆けであんまりお風呂入っていないの多いのよね)中で、各社ともサブキャップあたりが現場記者からの電話をとっているとこだった。「なんだあ、つなぎ撤回で与野党合意だあ。誰が言ってるんだっ。野党の山岡かあ」。脇では押っ取り刀でキャップは会社のデスクに連絡したりしてバタバタと作業は始まる。すると、他の通信社の電話には「4野党で合意か。野党で合意するなら当たり前じゃねえかあ。与野党じゃないのかっ」。すると、それを耳にした隣の新聞社のキャップも現場に確認し直して「なんだとお、やっぱり4野党だとお。お前さっき与野党と言ってたじゃねえかあ」。そりゃあ、「ヨヤトウ」と「ヨンヤトウ」は大違いなわけで。、脇のキャップは会社のデスクへとおぼしき電話で「すみません。すみません」などと平謝り。そして、電話を置くと隣の社のキャップと「お互い落ち着いていこう」などと、わけのわからぬ連帯の輪が広がったりしていた。
なんだかんだで(そう、こういうときの出来事って、後から考えるとすべて「なんだかんだ」で済んでしまうような意味のないことが多い)、しばらくたってから与野党合意が出てきて、読んでみると「年度内に結論を出す」「合意したことは修正する」との、議会政治のルールでは「雨は空から地面に降る」と同じくらいにあたりまえのこと。うんざりした気分の中、私は武村正義氏の発言を思っていた。15年前に若手国会議員10人で自民党を一気に離党し政界再編を仕掛けた、「新党さきがけ」元代表の、その人だ。

|
武村氏:そうですね。私共の行為を綺麗に言えばですね、なんか「理想に燃えて、行動を起こした」って感じはあります。それが全く正しかったかはどうかは別として。自分たちがそう信じて。今でもこの仲間、あるいはこの周辺の仲間が集まると、「あの頃が一番良かった」とか、懐かしかったり、そういう言葉でいっぱいなんですけども。「あの若い理想に燃えた自分たちの時代が良かった」という意味かなと思っているんですけど、それぞれ自民党、民主党に分かれましたけど、恐らく通ずるところは沢山あるんじゃないですかね、今の政治に対する批判も展望も。