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【2007年9〜10月号】
「情と理」〜センチメンタルな夏に

「保守王国」〜夢のあとで

やっぱり来なければよかったと後悔した。開票日の2日後、国会の参院議員会館にある事務所を訪ねた。なじみの議員秘書は、私の姿に気づいて、いつも座っていた机の上の片付けの手をちょっとだけ止めると「こんだけ、すぐ出て行って下さいと議会事務局から言われるとは思わなかったんですよね」とポツリとこぼした。

いつも電話の鳴る音と、地元からの県会議員や町会議員などの陳情客と、笑い声の絶えなかった事務所はすっかり様変わりしていた。待合室の人に笑いかけていた議員のポスターもすでにはがしてあった。そして、別の秘書は、東山魁夷の絵を壁から下ろしているところだった。黄色い月明かりの下をラクダが歩く絵は、客人の目に付く場所にあって、さりげなく議員の「大物」ぶりを知らせる仕掛けの役をはたしていたものだった。もう、そんなスタイルは、かえって有権者に受けないんだろうなあ、なんてことも考えた。

することもなく立っていると、秘書は「先生の携帯に電話してあげてくれませんか」などと言う。みんなも手に付けられないほど落ち込んでいるんだなあと知った。そして、秘書に「では。またどこかで会うでしょうから……」などと無責任なことを言い、その場を足早に後にした。「主」を失った秘書の「この先」に、ここらあたりでまた会える保障は何もないのはむろん承知している。

10年以上、「取材相手」としてつき合ってきたその事務所の「主」である参議院自民党の幹部議員は、公示間近に出馬した若い女性候補に負けた。その県では、つい1ヶ月前には思いもよらなかった「保守王国」の崩壊だった。長い間、足を運び慣れ親しんだあの事務所は、明日からは別の議員の笑い声やら罵声が響くことになるのだろう。

その夜、喧噪の安居酒屋でポツンと飲んでいると、隣にいたサラリーマンが「○○と○○のとこが負けたのはよかったよなあ」などと政治談義で気勢をあげていた。そのうち一つは先ほど顔を出したなじみの事務所のことなのだ。そうなのだ、そう見られることになったのは分かっているのだが……。なんせ「保守王国」だったのだから。

「政府税調会長女性問題」に始まって、「ナントカ還元水問題」やら「絆創膏問題」やら、「美しい国」を掲げた安倍政権誕生以来、10ヶ月の「スッタモンダ」は、今、振り返ればマンガのようにも思えてくる。番組では選挙が近づくにつれ「自民党の状況」への出演者からの警鐘が強くなっていった。ジェラルド・カーティス氏は珍しく長く強い調子で、「総理の資質」を指摘した。


 「最初のリアクションが……」 G・カーティス氏(2007年7月8日)

やっぱり、私が見ると政治指導者っていうのは、本当にいい指導者とそうじゃない人との一つの区別はね、意外なこと、想像しなかったことが起きた時の一番最初のリアクションが国民を安心させるものになるのか、そうではないのかが非常に重要で。

たとえばハリケーン・カトリーナという大きな台風がニューオーリンズに上陸したんですね。それはブッシュたちの責任でもなんでもないんだけれども、その対応があまりにもまずかったから、ブッシュ大統領の支持率下がる。

安倍さんも何か問題が起こると、慰安婦の問題が起こると「それはアメリカの下院議員が決議案通しても謝りません」ということを国会でわざわざ言う。後になってワシントン飛んでいってまた謝る。最初のリアクションが良くないでしょ。久間(前防衛相)さんの発言の時にすぐに「とんでもないことを言った。すぐ官邸に呼びつける」って言えばね、まぁ、もしかしたらある意味で安倍さんはあんまり被害受けなかった。それも何かかばうでしょ。年金問題も最初から国民の立場に立って怒って「こういうことがあるからこそこの戦後のレジームをやっぱり脱却しなければならない」と最初にすぐ言ったならば、ひょっとしたら支持率上がったかもしれない。

最初のリアクションが「勘が鈍い政治家」と「勘の鋭い政治家」、いると思うんですけれども、勘が鈍いと意外なことがある時に失敗しますよね。

一方、「政局の鬼」との異名を持つ野中広務さんは、半年前から「市民税の納付告知書」が有権者の手元に届くことを番組の中でいち早く指摘し、今度の選挙に警鐘を鳴らしていた。そして、選挙戦最中の出演では、多くの場合そのピンチを乗り越えてきた「自民党の『知恵』」が、選挙に至るまで働かなかったことを嘆いた。


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