放送内容
硬い玄武岩でできたデカン高原の西側に位置するのがエローラ石窟群。南北2kmの崖に全部で34もの石窟がある。仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の3つの宗教エリアに分かれている。特にヒンドゥー教の第16窟は他の石窟とは全く別物。穴を掘るのではなく、一枚岩から巨大な寺院を彫り出したという特異な存在である。間近で見ると「彫って」作ったとはにわかには信じられない。かけられた時間もスケールも桁違いの傑作である。
一枚岩を彫った大寺院
ヒンドゥー教の第16窟は高さ30mあまり、奥行き約80m、別名「カイラーサナータ寺院」最高神シヴァの住む山「カイラス山」を模した寺院だ。寺院の最深部にはシヴァ神のシンボルである「リンガ」が置かれている。ヒンドゥー教徒はここで祈りを捧げるのだ。
150年かけた大事業
第16窟は硬い玄武岩を上から掘り下げて作られたいわば「巨大な彫刻」。岩を削る作業は、ノミと鎚を使った手作業で進められた。完成まで何と150年もかかり、石工は7世代にも渡ったという。当時の技術では石を積み上げるよりも現実的な方法だった。
3つの宗教の共存
ヒンドゥー教以外にも仏教、ジャイナ教のエリアがあるエローラ石窟群。一般的に異なる宗教同士は争うことも多いが、エローラでは3つの宗教が平和に共存していた。互いの宗教を認め合う寛容の精神が認められることは、世界遺産への登録理由の1つになった。