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2018年12月9日「シェヌ・デ・ピュイ火山群」

80の火山が大行列!知られざるフランスの大自然

フランス中央部、オーヴェルニュ地方にある「シェヌ・デ・ピュイ火山群」は、2018年7月に登録されたばかりの世界遺産。意外にもフランス本土では初の自然遺産です。そのダイナミックで変化に富んだ火山の数々を田口ディレクターが紹介してくれました。

驚きの火山密集地帯!その誕生の秘密

南北32キロほどのエリアに80もの火山が、一列にならぶシェヌ・デ・ピュイ火山群。火山が生み出したさまざまな地形をまとめて見ることができる、この場所がどのようしてうまれたのか。その秘密は、プレートとプレートがぶつかる地殻変動にありました。

──今回の「シェヌ・デ・ピュイ火山群」はどのような世界遺産なのでしょうか。

田口ディレクター(以下、田口):「シェヌ・デ・ピュイ」とは「小山の鎖」という意味で、その名の通り火山が連なった、今年登録されたばかりのフランス中央部に位置する自然遺産です。火山の自然遺産というと、活発に噴火しているものをイメージされるかもしれませんが、シェヌ・デ・ピュイ火山群はほとんどが一度だけの噴火でできたもので現在は活発に活動していません。南北32キロほどのエリアに独特な姿をした火山が80個ほども連なっていて、世界でも非常に珍しい景観を持っています。実はフランス本土では初となる自然遺産なのです。

およそ80もの火山が連なる「シェヌ・デ・ピュイ火山群」。地図で見ると、南北に1列に並んでいることがわかります。

──フランスには世界遺産が数多くあるのに、本土の自然遺産が初めてとは意外ですね。

田口:そうですね。フランスの自然遺産は、番組内でも少し紹介する、今でも度々噴火の起こる火山で有名なレユニオン島などの海外領土やコルシカ島のポルト湾にはあります。しかし、本土ではこのシェヌ・デ・ピュイ火山群が初めての登録になります。

──独特な姿をした火山があるとのことですが、具体的にはどんな形をしているのでしょうか?

田口:例えば、最高峰であるピュイ・ドゥ・ドームはプリンのような形をしています。そのほかにも、三日月形のものや、すり鉢状のものなど、実に多種多様です。また、水蒸気爆発で火口に水がたまったマールという地形もあります。

シェヌ・デ・ピュイ火山群の最高峰ピュイ・ドゥ・ドーム。標高1465メートルの山頂まで鉄道が通っていて歩かなくても登れます。

──その多様な地形が今回の放送の見どころということですね。

田口:はい。番組では、まずピュイ・ドゥ・ドームに登っています。標高は1465メートルなのですが、鉄道が通っていて山頂まで歩かなくても登っていけるのです。山頂からは、シェヌ・デ・ピュイ火山群の山々が一望できます。また、バラエティ豊かな地形を楽しめるということで、ピュイ・ドゥ・ドームでは熱気球やパラグライダーなどのスカイスポーツが盛んです。取材に行った際もピュイ・ドゥ・ドーム上空には無数のパラグライダーが飛んでいました。この地域は日本人にはまだあまり知られていませんが、元々、地元フランスの人たちが自然を楽しむ観光スポットなのです。

ピュイ・ドゥ・ドームの周辺は、スカイスポーツが盛んです。パラグライダーや気球に乗って、火山の上空を巡ることができます。

──空から火山群を見下ろすのは絶景でしょうね。田口ディレクターもスカイスポーツにチャレンジしましたか?

田口:私たちも気球に乗ってみました。上空から見渡すと、雲の切れ目から、ポコポコと古墳のような山が並んでいているのが見えて、本当に不思議な光景でした。番組では、空撮を駆使してユニークな山々の空から見た姿をご紹介します。

空から火山群を見ると、巨大な饅頭、あるいは丸い古墳が並んでいているような場所があります。

すり鉢状になった山や、ドーム型など、多様な火山地形を見ることができます。

──そもそも、この地域には多くの火山が並んでいるのでなぜなのでしょうか?

田口:フランスの中央部は、南のアフリカプレートと北のユーラシアプレートが押し合う場所です。南北から押しつぶされ、ここでは東西に逃げる力が働いています。大地が薄く引き伸ばされたことで、断層や割れ目ができました。およそ10万年前から、その割れ目に沿ってマグマが次々と噴出したのです。取材では、火山群のある台地の端にある断層にも行きました。ロッククライミングで人気のスポットになっているのですが、岩壁を見ると縦に亀裂が走っています。これは、地殻変動で大地が縦にずれた証拠なのです。

今はロッククライミングで人気スポットとなっている岩壁。そこに見られる縦に走る亀裂は、地殻変動で大地に断層が生じた証拠なのです