特集

2018年6月10日「カジランガ国立公園」

3.5トンの巨体がが時速50キロで走る!

カジランガ公園の自然を育む大河、ブラマプトラ川。その水はインドサイの命の源です。乾季、貴重な水場を確保するため、インドサイ同士の争いも起こります。いつもはおとなしいインドサイの、荒々しい姿をカメラが捕らえました。

──インドサイは、一日をどのように過ごしているのですか?

田口:基本的には食事をしながら、自分の縄張りを歩き回っています。決まったルートがあるようで、インドサイが歩くところは獣道になっています。インドサイには縄張りがあって、歩きながら途中でフンをしてマーキングします。あとは、水に浸かって毎日数時間過ごします。

インドサイは普段、決まったルートを歩きながら草を食べています。インドサイが通るところは、獣道になっていました。

──かなり長い時間を水の中で過ごすんですね。

田口:はい。インドサイの鎧のような皮膚は分厚く、熱がこもるので、日中は体温が上がりすぎてしまいます。そのため、大量の水を飲み、体を水に浸けて冷やさなくちゃならないんです。だから、彼らにとって水場は非常に大切なものなんです。乾季になると水が引いて水場が限られてくるので、自ずと水場にインドサイが集まってきます。そこでオス同士、メス同士がかち合うと、争いが発生するんです。

体を冷やすため、日中は数時間を水の中で過ごします。インドサイはきれい好き。泥を体に付けて寄生虫から皮膚を守り、鼻を水に浸けてぶくぶくと「鼻うがい」もします。

──どんな争いになるんですか?

田口:インドサイ同士のケンカが始まります。その珍しい光景を映像に収めようと、水場でカメラを構えて長時間粘りました。その甲斐あって、インドサイ同士のケンカを撮影することに成功しました。鋭い角で押し合い、巨体同士でぶつかり合うインドサイのケンカは迫力満点です。またインドサイは、あの巨体からは想像もできないくらい、かなりのスピードで走るんです。サイは、大きく分類するとウマの系統に属する動物で、3つに分かれたヒヅメを持っています。さらに足の裏には柔らかい肉球があり、これで湿った地面をしっかりと捉えます。その速度は何と時速50キロ。体重3トンのインドサイが全力で走る姿も迫力がありますよ。

水場で始まったインドサイ同士のケンカ! うなり声と、巨体がぶつかる音が響き渡ります。勝負の行方は?

この巨体ですが、インドサイは時速50キロで走ることができます。そのメカニズムを解析するため、4Kスーパースローで、3つに分かれたヒヅメと、柔らかな肉球の動きを撮影しました。

──貴重な映像が見られそうですね。インドサイ以外には、どんな動物が登場しますか?

田口:取材したとき、カジランカ国立公園は、乾季から雨季に移り変わる美しい季節でした。いろいろな動物たちのさまざまなシーンを撮影できたのですが、中でも、野生動物たちの赤ちゃんたちがとてもかわいかったですね。インドサイは普段おとなしいのですが、子育て中の母親は神経質で、子どもを守るために周りの動物を威嚇したりと赤ちゃんに対する愛情も感じました。まだ角が生えていないインドサイの赤ちゃんは、本当にかわいかったです。ほかにも、ゾウやスイギュウ、イノシシなどのかわいい赤ちゃんたちが登場するので、お見逃しなく!

たくさんの動物の赤ちゃんも登場します。まだ幼い顔のインドサイの赤ちゃんは、親の足の間からおっぱいをもらっています。親の真似をして草をちぎろうとしていたインドゾウの赤ちゃん。うまくちぎることができずに兄弟におねだりする様子は、人間の子どものようです。

───最後に番組を楽しみにしているみなさんに、見どころをお願いします。

田口:珍しいインドサイの生態を、貴重な映像でたっぷりご覧ください。インドサイを始め、さまざまな野生動物たちを撮影していると、徐々に感情移入するようになってきました。インドサイ同士のケンカもそうですが、種の異なる動物同士が距離を保ちつつ、時には脅したり、時には空気を読んで離れたりする様子や、無邪気な赤ちゃんとそれを見守る親の仕草など、何だか人間のように見えるときがあって、そんな野生動物たちのコミュニケーションにも注目して見ていただければと思います。