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2018年5月13日「レビジャヒヘド諸島(メキシコ)」

レビジャヒヘド諸島

絶海に突如現れる4つの孤島。地球の火山活動は、広大な太平洋の一角に奇跡の島々、レビジャヒヘド諸島を生み出しました。太平洋をめぐる海流が孤島にぶつかることで、豊かな生態系を与えました。そこに外洋を遊泳する巨大な海洋生物が集まり、絶海に“原初の海”を創り出したのです。地球本来の海の姿をカメラに収めるために、天野ディレクターが大海原にこぎ出しました。

船に乗って30時間!絶海に浮かぶダイバーの天国

絶海に浮かぶレビジャヒヘド諸島は、4つの特徴ある島で構成されています。メキシコの遙か沖合にあるため、訪れるだけでもたいへんな場所です。しかし、そんな僻地であるにもかかわらず、そこには世界中から人々が集まっていました。

──レビジャヒヘド諸島は『世界遺産』初登場ですね。まずはどのような世界遺産なのか教えてください。

天野ディレクター(以下、天野):はい。レビジャヒヘド諸島は、東太平洋に浮かぶ4つの島です。メキシコの西部にあるバハカリフォルニア半島から南西のはるか沖合に浮かんでいます。一番近いサンベネディクト島まででも390kmもあるんですよ。その南西にはソコロ島があって、さらに西に100kmほどの位置にロカパルティダ島という小さな島があります。そこからだいぶ離れて、さらに西に290kmほどの場所にクラリオン島があります。

溶岩流の跡も生々しいサンベネディクト島。陸上に生物の気配はなく、不毛の地という言葉がピッタリの佇まいです。

──レビジャヒヘド諸島はどうやって誕生したのでしょうか?

天野:この辺りは活発な火山地帯なんです。いずれも噴火などの火山活動の結果誕生した島で、巨大な海底火山の頂上が海上に顔を出している状態なんですね。周囲は水深が4000メートルほどもある外洋で、深い海に囲まれた場所に突如島が現れるのです。

──まさに東太平洋の孤島ですね。それぞれの島の特徴を教えてください。

天野:はい。まずサンベネディクト島は、20世紀半ばにも大噴火があった島です。今は草木の生えない不毛の地で、近付くと巨大な溶岩流の跡が生々しく残されていました。ソコロ島は最も大きな島です。元々は無人島ですが、軍事施設があるので、唯一、人が住んでいる島でもあります。ロカパルティダ島は「割れた岩」という意味で、その名のとおり2つの小さな岩が海面に突き出したような小さな島です。最も遠くにあるクラリオン島は、数千年前の古い火山活動で生まれた島です。

小さな岩山の島、ロカパルティダ島は、2つの岩が突き出したような姿をしています。そのため、角度によって見え方が大きく変わります。

──レビジャヒヘド諸島の島々にはどうやって行くのですか?

天野:実はツアーが組まれていて、メキシコから船が出てるんです。今回はそのツアーに参加するかたちで、サンベネディクト島とロカパルティダ島を訪れました。ツアー参加者の目的は、ほぼ100%ダイビングなんです。しかしこのツアー、参加するだけでもたいへんなんですよ。リピーターが多くてすぐに予約がいっぱいになってしまうため、確実に参加するためには1年前から予約を取らなくてはなりませんでした。

ドローンによる空撮も行いました。周囲はすべて海という、まさに絶海の孤島です。なお、ロカパルティダ島は白い岩なのかと思いきや、海鳥のフンでした。撮影時にはアオアシカツオドリが群れをなしていました。

──そんな僻地の島に行くツアーがあるのも驚きですが、ずいぶん人気があるんですね。

天野:そうなんです。外洋の孤島であるレビジャヒヘド諸島にはここでしか見られない特殊な生態系があり、「メキシコのガラパゴス」とも呼ばれています。固有種のサンゴや美しい魚たちに加えて、外洋であることからマンタやクジラ、イルカ、サメなどが集まってくるんですね。それを目当てに世界中からダイバーが集まってくるんです。まさにダイバーの天国とも言える場所ですね。それ以外に何もないとも言えますが(笑)。

レビジャヒヘド諸島には世界中からダイバーが集まってきます。島のダイビングスポットには、ゴムボートで向かいます。天野ディレクターも現場へ。連日の船で揺られる生活にややお疲れ気味?

──メキシコから390kmとは、陸地からかなり離れていますが、島までの船旅はいかがでしたか?

天野:実は、これがとんでもなく過酷な旅でした。バハカリフォルニア半島の先端にあるロス・カボスというところから船で向かうのですが、サンベネディクト島にたどり着くまでに30時間もかかりました。しかも外洋のため波のうねりが大きく、高い波が来るとジェットコースターに乗っているようでした。しかも、わざわざ1年前から予約したのに、私の船室は一番揺れの激しい舳先にあって、二段ベッドの2階でした。油断すると床に転げ落ちてしまうんです。いやー、これほど過酷な船旅は、初めてでしたね(笑)。ダイビングに参加する人たちは、ダイビングポイントにゴムボートで向かいます。島には上陸できないので、9日間ずっと波に揺られながらの撮影でした。

海に潜ると一転、生命力に満ちあふれた世界が広がっていました。バンドウイルカの群れが撮影隊を出迎えてくれました。何と立ったポーズでごあいさつです。