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2017年10月15日「サンガネブ海洋国立公園とドゥンゴナブ湾=ムッカワル島海洋国立公園」

世界初撮影!砂漠のサンゴ礁と奇妙な風景

10月15日の放送は、初登場の世界遺産「サンガネブ海洋国立公園とドゥンゴナブ湾」です。テレビで紹介するのも世界初! ドローンと水中カメラによる映像には、奇妙で不思議な光景が次々と登場します。事前情報も少なく何が待っているのかわからない状況の中、世界で初めてのテレビ取材でこの遺産を訪れた、石渡ディレクターに話を聞きました。

世界初放映!不思議なサンゴ礁を空と海から徹底撮影

サンガネブ海洋国立公園は、紅海にある唯一の環礁です。水中でもカメラの前に水がないと思えるほど、透明度の高い紅海の美しくも不思議な姿を、水中カメラマンが長い時間をかけて撮影しました。サンゴ礁に建つ灯台、海底に横たわる巨大な沈没船、水中に並ぶクラシックカー──。次々と不思議な光景が続きます。

──今回はアフリカの世界遺産ですね。まずはどのような場所なのか説明をお願いします。

石渡ディレクター(以下、石渡):エジプトの南側にあるスーダン共和国の紅海沖合の世界遺産です。南のサンガネブ海洋国立公園と、北のドゥンゴナブ湾=ムッカワル島海洋国立公園の2つの海域が登録されています。2016年に登録されたばかりであまり調査もされておらず、テレビカメラが入るのは世界で初めてのことです。そしてここには、見たこともないような奇妙で不思議な光景が広がっていました。そこで今回は、水中カメラとドローンを駆使して、海と空から見たこの2つのサンゴ礁の海を、世界初の映像でたっぷりお届けします。

クルーザーに乗り、ポートスーダン沖合のサンガネブ海洋国立公園を目指します。途中、イルカの群に出会いました。

──世界初の映像は楽しみですね。今回の取材はどのような行程だったのですか?

石渡:スーダンの港湾都市であるポートスーダンを出航して、南のサンガネブ環礁から、北のドゥンゴナブ湾まで、約150キロの距離をクルーザーで行く、10日間の紅海の旅を敢行しました。クルーザーの旅といってもそんなに優雅なものではありません。取材したのは8月でしたが、まずとんでもない暑さに驚きました。午前中から気温が40度を超え、昼間は50度近くまで上がるのです。乗船の際に数百本のミネラルウォーターを持ち込んでいたので「こんなに必要なのかな」と思っていたのですが、暑さのため水分補給が欠かせず、それでも足りなくなったほどです。

紅海で唯一の環礁、サンガネブ海洋国立公園周辺は船の難所でもあります。海面に浮いているように見える灯台が目印です。

──ちょっと想像できないほどの暑さですね。そんなたいへんな船旅ですが、どのような光景が見られたのでしょうか?

石渡:まず、ポートスーダンから、沖合のサンガネブ海洋国立公園を目指しました。紅海は流入河川が少なく、海水の透明度が高いことで有名です。実際に訪れてみると、これまで見たどの海よりも青く美しいと思いました。沖に出ると、まずはたくさんのイルカが出迎えてくれました。海を進んでいくと、海上に突然灯台が現れます。サンガネブ海洋国立公園は、紅海で唯一の環礁です。灯台は、その上に建てられています。まるで海面に灯台が浮いているような不思議な光景です。

サンガネブ海洋国立公園のサンゴ礁。水温は何と32度。高い水温ですが、ここでは独特の生態系が生まれ、数多くの固有種が暮らしていました。

──環礁で座礁しないように灯台が建てられているのですね。

石渡:そうです。サンガネブ環礁の周辺は以前から航海の難所でした。サンゴ礁で急に浅瀬になっていて、多くの船が座礁してしまう場所だったのです。この海域には、第二次世界大戦中に沈んだ船がそのまま海底に横たわっていました。実際に海中に潜って、沈没船の様子を撮影しましたが、そこで意外なものに遭遇しました。

サンガネブ海洋国立公園に向かう途中、沈没した船が残された場所があります。透明度が高いため、空から見るとその巨大な船体の異様な姿がわかります。

──沈没船には何があったのでしょうか?

石渡:当時運搬されていた船の積み荷です。荷室に入ると、うずたかく積み上げられた爆弾がそのまま残されていました。他の荷室には、イタリアの自動車メーカー、フィアットの小型車が並んでいました。沈没船の中に並んでいるクラシックカーというのも、奇妙な光景でした。また、海水の透明度が高いので、ドローンで空撮すると海底の沈没船の姿がハッキリと見えるのです。全長150メートルの巨大な船が海中に見えるインパクトのある光景が、撮影できました。

船内には当時の積荷が残されていました。フィアット500の初期型が並び、爆弾も積まれたままです。海中に並ぶクラシックカーという奇妙な光景がありました。