──最初のナレーション録り、お疲れさまでした。初回を録り終えた感想を聞かせてください。

杏さん（以下、杏）：すごく丁寧に作られている番組なのだなと驚きました。番組内容もそうなのですが、その場でナレーションの文言を変えて録り直したりと、番組作りに妥協がありません。実際に、ナレーションを録りながら、仕上がりがどんどんよくなっていきました。

──『世界遺産』のナレーションの依頼があったときの率直な感想を教えてください。

杏：歴史のある番組のナレーションを担当できるので、すごく光栄なことだなと感じるとともに、とてもうれしく思いました。行ってみたい場所や、番組に参加しないとなかなか知ることができない場所もあるので、そういったところを映像を通して体験できるのはすごく幸せだし、それをみなさんに紹介できるのもうれしいです。番組の制作スタッフの目線でのナレーションなので、紹介している実感があります。

──ご自分のナレーションの声が、実際に番組の映像に重なった状態をご覧になって、どのように思われましたか？

杏：「世界遺産の番組になってる！」と思って感動しました。オープニングやロゴなども入っていたので、番組に参加しているんだなと強く感じました。でもきっと、本当にそう感じるのは放送されたときだと思って楽しみにしています。

──『世界遺産』では、どのようなことを心がけてナレーションしようと思っていますか？

杏：主役はあくまでも世界遺産なので、あまり邪魔にならない、かつ世界遺産の魅力を最大限に引き出せるようなナレーションを目指していきたいと思ってます。

──実際にナレーションをやってみて、難しかったところはありましたか？

杏：世界遺産の名称や地名などを読むときですね。これまで聞いたことも、口にしたこともない名前がたくさん出てくるので、そういう言葉が出てくるたびにひとつひとつイントネーションを確認しながら発声しなければなりません。それは、ご覧になる方にとっても同じで、初めて聞く言葉がたくさん出てくると思います。言葉が明瞭であることはもちろんですが、視聴者のみなさんが引っかからないような優しさがある、そんなナレーションになるといいなと思います。

──女優としての演技と、今回のようなナレーションでは、どういったところに違いを感じますか？

杏：特に『世界遺産』のナレーションは、自分を表現するということからは離れた役目だと思います。表情や仕草で演技をするのとは違って、今回のナレーションは「伝える」ことがメインのお仕事になりますね。

──杏さん流の『世界遺産』の楽しみ方があれば、教えてください。

杏：いろいろな場所が登場する番組ですが、全部何か自分に関係していると考えると、より楽しめると思います。本当に大雑把に言うと、例えば「ここで見る月も自宅で見る月も同じだな」とか、「私も自然を大切にしたい」とか、「同じ血の通った人間が作った文化なんだ」とか、「自分たちと同じように、おいしいものを食べて喜んでいる人たちが、心血注いで作った建物が残っているんだ」とか、どこの国のものでも、何か共通点は探せるはずです。自然でも文化でも自分とつながっている何かが見つかると、身近に感じられて、番組をより楽しめると思います。

──杏さんは海外でのご経験も多いと思いますが、これまでに行ったことのある世界遺産はありますか？　また、行ってみたいところは？

杏：私が海外によく行っていたのはモデルをやっていた頃で、パリやミラノの都市部が多かったですね。ノートルダム大聖堂はよく前を通っていたのでなじみがあります。モン・サン・ミシェルは、プライベートで行ったので印象に残っていますね。ミラノでは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」も見ました。行ってみたいのは、ギアナ高地とかガラパゴス島とか、登山もやっていたので自然も好きなんです。

──最後に、番組で杏さんの声を聞くことを楽しみにしている視聴者のみなさんに、メッセージをお願いします。

杏：20年以上続いている伝統的な番組なので、こういう変化があると戸惑う方もいらっしゃると思いますが、暖かく見守ってもらえるとうれしいです。『世界遺産』は、貴重な映像を通して「その場所に実際に見に行きたい」というきっかけを与えられる貴重な番組だと思っています。番組をご覧になった方に、私が声で案内した場所に行ってみたいと思ってもらえたらうれしいですね。