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2017年7月9日「ツィンギ・ド・べマラハ厳正自然保護区」

純白のサルが飛ぶ針の岩山

固有種の動植物の宝庫として知られている、アフリカのマダガスカル島。島の奥地に、近づくことも難しい、針のように鋭く尖った岩が一面に広がった場所があります。そんな険しい岩山に暮らす不思議な動物と、直下に広がっていた地下迷宮を撮影した江夏ディレクターに話を聞きました。

針山を自由自在に飛び回る純白のサルを追え!

見渡す限りの針のような岩──ツィンギ・ド・べマラハには、目を疑うような絶景が広がっていました。そこには、険しい岩場を寝床にするという珍しいサルが暮らしています。その姿をとらえるため、撮影班は針のような岩山を登りました。

──まず、ツィンギ・ド・べマラハ厳正自然保護区がどのようなところか教えてください。

江夏ディレクター(以下、江夏):アフリカのマダガスカル島の西部にある自然保護区です。ツィンギとは土地の言葉で「裸足で歩けない」という意味で、針のように尖った岩が、100キロメートルにわたって続いている場所です。驚くような光景が広がる岩山と、そこで暮らす不思議なサルを撮影するために訪れました。

ツィンギ・ド・べマラハ厳正自然保護区には、針のような岩山が続く不思議な光景が広がっていました。

──そんな険しい場所で暮らす動物がいるのですね。どのようなサルなのでしょうか?

江夏:デッケンシファカという真っ白なサルで、ツィンギ周辺にだけに生息する原始的な猿です。昼間は、針山の隙間に広がる森で木の葉などを食べているのですが、夜になると針の岩山に登り、尖った岩のてっぺんで眠ります。そのサルを探して、針の岩山に向かいました。デッケンシファカは日が昇ると森に移動するので、毎日、日が昇る前に岩山を登ってサルを探しました。

ツィンギの岩の隙間に、真っ白なサル、デッケンシファカがいました。鋭い岩にしがみついています。夜の間は、針の岩山で寝ているのです。

──なぜわざわざ鋭い岩山に登って寝るのでしょうか?

江夏:天敵から身を守るためです。マダガスカルにはフォッサという、肉食の大型マングースが生息しています。フォッサは夜行性で木登りが得意ですが、さすがにツィンギの針のような岩山には登ってくることはできません。

デッケンシファカは、日が昇ると日光で体を温め、森に向かって移動を開始します。

──尖った岩が身を守ってくれるのですね。現地では、デッケンシファカはすぐに見つかったのですか?

江夏:これがなかなか苦労しました。ガイドが案内してくれた場所でも見つからず、岩山に通い始めて3日目にして、ようやく出会うことができました。デッケンシファカは数頭の群れで暮らしていて、ボスはメスです。原始的な猿なので、体温調節が苦手です。そのため、朝は日光浴をして冷えた体を温め、体温が上がってから森に移動するのですが、その移動方法が面白いのです。ボスが先頭に立って、針山の絶壁を大ジャンプして移動します。信じられないようなその行動は、ぜひ、映像でご覧いただきたいと思います。

尖った岩から岩へ大ジャンプするデッケンシファカ。デッケンシファカの驚くようなパフォーマンスは、ぜひ映像で見てほしいとのこと。

──それは楽しみですね。デッケンシファカは、どうして尖った岩の上でも平気なのでしょうか?

江夏:実は手と足の裏の肉が分厚くなっていて、鋭い岩の上の移動も平気なのです。ちなみに、森では地上に降りることなく木の上を移動しているのですが、その動きもすごかったですよ。

デッケンシファカは、昼間は森の木の上で過ごします。木々の間を、自由自在に動き回ります。

──純白のサルの面白い映像がたくさん見られそうですね。

江夏:今回はドローンも使い、針山の奥にいるデッケンシファカを至近距離で撮影することにも成功しました。これまで見たこともない珍しい映像をたっぷりお送りしますので、楽しみにしていてください。

マダガスカル島は固有種の宝庫です。ブラウンキツネザルやワオマングースなど、ここでしか見られない動物たちが登場します。