特集

2017年6月11日「コルシカ島のポルト湾周辺」

フランス最後の秘境、コルシカ島 奇岩だらけの秘密

地中海のリゾート地として有名なコルシカ島。ナポレオンの故郷として知られており、島に残された豊かな自然を求めて、世界中から人々が集まる人気の観光地となっています。世界遺産に登録されているポルト湾周辺は特に、奇妙な形にえぐれた岩、タフォニによって独特の風景が広がっています。その美しい風景が誕生した秘密に迫った久留島ディレクターに話を伺いました。

天空になぜ?ハート岩の謎に迫る

コルシカ島のポルト湾周辺には、赤い花崗岩の奇岩が並んでいます。すべてが奇妙な形にえぐれていて、その岩は断崖のてっぺんや島の内陸部にまで広がっていました。塔のようにそびえ立つ奇岩の先端には、なぜかハート型の穴が開いています。そんな不思議な奇岩たちは、島の自然が長い年月をかけて創り上げた芸術作品だったのです。

──今回は地中海に浮かぶ島のひとつ、コルシカ島ですね。

久留島ディレクター(以下、久留島):はい。コルシカ島はナポレオンの故郷として有名で、フランス領です。「フランス最後の秘境」とも呼ばれ、観光地としても大人気の場所で、多くの観光客は島の独特の自然の美しさを楽しむためにやってきます。世界遺産には、島の北西部にあるポルト湾の周辺が登録されています。

コルシカ島の世界遺産に登録されているポルト湾近辺の風景は、切り立った断崖絶壁が特徴です。

──自然豊かな島なのですね。世界遺産に登録されている、ポルト湾周辺の様子を教えてください。

久留島:ポルト湾周辺は、特徴的な風景が広がっています。沿岸には、奇妙な形をした赤い岩山が並んでいます。高さは600メートルを超える断崖絶壁で、岩肌には、丸いくぼみがまるで蜂の巣のように無数に開いています。この穴は、“タフォニ”と呼ばれています。このタフォニは、島の内陸部でも見ることができます。中には、巨大な岩に大きなくぼみが広がっているものもあります。

赤い花崗岩に無数に開いたくぼみ「タフォニ」は、コルシカ島の独特の景観を生み出しています。奇妙な形の岩が沿岸を埋め尽くした光景はインパクトがあります。

──周囲の岩すべてに無数の穴が開いている光景は、独特ですね。このタフォニは、どのようにして形作られたものなのでしょうか?

久留島:コルシカ島は、2億5000万年ほど前に地底深くで固まったマグマが、隆起して誕生したと言われています。そのため、島にはマグマが固まってできた硬い花崗岩の岩がたくさんあります。ポルト湾の赤い岩も、花崗岩でできています。風の強い地域なので、塩分を含んだ潮風が常に海から吹き付けていて、塩分が岩に付着します。岩に付いた塩分が地中海の強い日差しを受けて結晶化する際、わずかに体積が増えるのですが、その影響で岩が侵食されて削られてできたのがタフォニです。周囲を海に囲まれていて、やや南北に細長い形をしているので、潮風は島中に届き、島の至る所でタフォニが見られます。

タフォニは、島の内陸部にもあります。巨大な岩にできたタフォニが広がって、大きなくぼみを作り出していました。久留島ディレクターの大きさと比べると、その規模が分かります。

──塩が削ってできたとは驚きです。本当に少しずつ、長い年月をかけて形作られたものなのですね。

久留島:そうなんです。削られてできた穴に、さらに風が吹き込んで塩が付着するので、くぼみが広がって巨大な穴になったり、くぼみの奥にさらに小さなくぼみができたりして、変わった形の岩が生まれるのです。最も有名な奇岩に、標高450メートルほどの高い場所にハート型の穴が開いた岩があります。そこは観光名所になっていて、多くの観光客が訪れる場所になっています。ハートの穴を近くで見てみるため、特別に許可をもらって登ってみました。どうやってハート型の穴ができたのか、その秘密を番組でご覧ください。

人気の観光スポットになっている、ハート型の穴が開いた奇岩。高さ450メートルに作られた自然のアートです。多くの観光客が見つめる中、ハートの穴まで登ってみました。

──ハート型の穴が開いた岩とはユニークですね。ハートの回りがどのようになっているのか気になります。タフォニの撮影で苦労されたところはありましたか?

久留島:ポルト湾には、赤い奇岩が並んでいる岬があります。陸路では近づけない場所なので船から撮影したのですが、風が強くてカメラが安定しないので、撮影に苦労しました。複雑な地形で接岸することも難しいのですが、カメラマンが上陸して、岩肌に張り付きながら撮影しました。赤い岩と青い海のコントラストが織りなす風景はインパクトがありました。また、ドローンを使って空撮もしたので、なかなか見られないアングルでもご覧いただけます。コルシカ島ならではの独特の風景を楽しんでいただきたいと思います。

風が強く波が高いので、船の上からの撮影は困難です。険しい岩場に接岸し、カメラマンがタフォニのある岩場に張り付いて撮影しました。