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2017年5月7日、14日「南米の大自然 イグアス国立公園/中央アマゾン保全地域群」

幻のサルを発見!水没したジャングルを進む

全長6500キロにも及ぶ、アマゾン川。雨季になると水かさが大きく増して、回りの広大なジャングルが水没します。そこには、木の上で暮らすサルたちが生息しています。見つけることすら困難な幻のサルを撮影するため、小さな手こぎの舟で水没ジャングルを進みました。

──次に紹介していただくのは、アマゾン川流域ですね。訪れた世界遺産について教えてください。

柳沢:はい。中央アマゾン保全地域群は、ブラジル北部に広がる熱帯雨林地域で、2000年に登録されたジャウー国立公園に、マミラウアとアマナという2つの保護区を加えて2003年に拡大登録された世界遺産です。今回は、アマゾン最大の街であるマナウスから最も離れた、マミラウアを訪れました。

どこまでも続く広大なアマゾンのジャングル。雨季には雨で川が増水するため、水没ジャングルになります。

──アマゾンと言えば、未開のジャングルが広がっているイメージがありますが、どのような場所でしたか?

柳沢:アマゾン川にはさまざまな支流があり、広大なジャングルを網の目のように流れています。支流と言ってもひとつひとつが海のように広く、人々の暮らしにも舟が欠かせないものになっていて、まさに川が作り上げた土地という印象を受けました。現地に着くと、まず「ワニやピラニアがうようよしているので、川に手を入れてはいけない」と言われました。実際、朝起きて川面を見るとワニが泳いでいるような場所でした。あまり知られていませんが、アマゾンの熱帯雨林には雨季と乾季があります。雨季には雨で川が増水して、水深が10メートルほど上がります。そのため、乾季には陸地だったところも水没してしまうのです。その水没ジャングルで暮らす、幻のサルを探しに行きました。

アマゾン川にはワニやピラニアがいるため、不用意に水面に手を入れてはいけません。水は白く濁っていて、水中に何がいるのかわからない状態です。

──ジャングルの中だけど、下は川になっているというわけですか。その幻のサルは、どのような種類なのですか?

柳沢:シロウアカリという種で、はげ上がったような真っ赤な顔と、体を覆う白く長い毛が特徴の奇妙な姿のサルです。アマゾン川流域に生息するサルは支流ごとに森が分断され異なるのですが、シロウアカリは、マミラウア地区にしかいません。普段から高い木の上で暮らしていることもあって、撮影するのはたいへんでした。

幻のサル、シロウアカリの姿を求めて、小さな舟で水没ジャングルの中を探索します。現地のガイドが鉈で枝を切り落としながら、進みます。

──見た目も変わったサルなのですね。撮影にはどのような苦労があったのでしょうか?

柳沢:水没ジャングルの奥深くにいるのですが、近付くには三人乗りの小さなカヌーのような手こぎの舟に乗っていくことになります。鬱蒼としたジャングルなので、鉈で枝を切り落としながらオール1本で進みます。さらに、シロウアカリは高い木の上で暮らしているので、探すのにも時間がかかるのです。

小さな舟の上でシロウアカリの姿を探します。ジャングルの中は、虫対策が欠かせません。必ず長袖で、顔もネットで覆います。揺れる舟の上での撮影は、非常に困難でした。

──見つけ出すだけでもたいへんな状況ですね。

柳沢:そうなんです。撮影でも苦労しました。遠くに見えるシロウアカリを撮影するため、望遠レンズを使います。望遠レンズで撮影する際、カメラが揺れると映像が大きく乱れてしまうので、舟が揺れないように注意する必要がありました。じっと動けない状態が続くので肩やお尻が痛くなるし、蚊がとまったりしても撮影中はそのまま我慢するしかありません。しかし苦労の甲斐あって、幻のシロウアカリの撮影に成功しました。

赤い顔に白い体の奇妙な姿をしたシロウアカリを見つけました。アカホエザルなど、他にも数種類の、樹上生活をするサルの姿を撮影できました。

──苦労して撮影した映像を楽しみにしたいと思います。マミラウア地区は、一般の観光客でも入ることはできるのですか?

柳沢:はい。取材で宿泊したのは、観光客用に建てられた、川に浮かぶフローティングハウスでした。ただし、シャワーが川の水だったりするので、長期滞在はたいへんかもしれません(笑)。

宿泊したフローティングハウスは、観光客用の唯一のロッジです。ここまではモーターボートで移動できます。

──アマゾン川の風景で、他に印象に残ったシーンはありますか?

柳沢:アマゾン川には数多くの支流がありますが、その中でも印象深かったのがネグロ川とソリモンエス川の合流地点です。ソリモンエス川は他の支流と同じように濁った白っぽい色をしているのですが、ネグロ川のほうは濁っておらず、木の葉から染み出したタンニンの影響で黒っぽい色をしています。この2つの川が合流しているのですが、水質の違いから混じり合わず、二色に分かれたまま流れていくのです。この不思議な川の流れを、ドローンを使って上空から撮影しました。

黒いネグロ川(左)と、白いソリモンエス川(右)。水質の異なる2つの支流は、合流した後も混じることなく流れていきます。

──最後に番組を楽しみにしているみなさんに、あらためて見どころをお願いします。

柳沢:今回の南米の世界遺産を取材してみて、大自然の雄大さや奥深さを思い知らされました。イグアスの滝では、その迫力と美しさに圧倒されました。アマゾンでは、どこまでも深いジャングルが続いていて、そこに暮らす生物たちはまだ詳しい生態が分かっていないものも多く、未知の動物たちが棲む奥深い世界が広がっていました。私が感じたそんな思いを、映像を通してお伝えできればと思っています。