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2017年4月2日、9日 二週連続放送「サンガイ国立公園」

標高5260m! “南米の富士山”の頂へ

1996年に放送が始まった『世界遺産』が、4月2日に1000回目の放送を迎えます。それを記念して、江夏ディレクターが日本のテレビ番組として初めて、“南米の富士山”と呼ばれるサンガイ山に挑みました。その様子をお送りする、2週にわたってのスペシャル番組です。サンガイ山は標高5260m、活発に噴火を繰り返している活火山です。登山ルートは長く、厳しく、危険もありました。そしてそこは、奇妙な草が生い茂り、幻の動物が棲む不思議な山だったのです。

エクアドルに“南米の富士山”があった!

南米大陸に南北に延びるアンデス山脈、その北端に近いエクアドルのサンガイ国立公園には、5000m級の山々がそびえています。その中心的存在でもあるサンガイ山は、今も噴火を繰り返す活火山。雪を頂く美しい円錐形は、富士山を思い起こさせます。その頂上を目指して、総勢24名の登山隊が組まれました。

──今回は、『世界遺産』の放送1000回を記念してのスペシャル番組ですね。

江夏ディレクター(以下、江夏):そうなんです。この番組で訪れた国は130カ国、取材した世界遺産の数は600カ所を超えます。今回の放送で1000回目となりますが、2000回を目指して、これからも世界遺産の魅力を取材していきたいと思っています。

サンガイ国立公園のサンガイ山。頂上に雪を頂き、なだらかな裾野が広がる姿は、まるで日本の富士山のようです。

──これからの『世界遺産』がますます楽しみです。では、スペシャル番組のために取材した、サンガイ国立公園について教えてください。

江夏:はい。サンガイ国立公園は、南米・エクアドルのアマゾン川の上流域からアンデス山脈の一部までを含む地域です。ここは活発な火山地帯で、サンガイ国立公園には、サンガイ山、トゥングラワ山という標高5000mを超える活火山があります。しかも赤道直下の国にもかかわらず、氷河が広がっています。今回は、標高5260mのサンガイ山の登頂にチャレンジしました。

ベースキャンプまでは、23頭の馬を使って1トン以上の荷物を運びました。総勢24名の大部隊なので、食料だけでもたいへんな量です。

──5260mとはかなりの標高の山ですが、日本ではあまり知られていませんね。どのような特徴があるのでしょうか?

江夏:現在も噴火を繰り返している活発な火山ですが、見た目は、日本人にはなじみのある美しい姿をしています。サンガイ山は頂上にある火口から何度も噴火を繰り返していて、そこから流れ出した溶岩が何重にも重なってできた裾野が広がっています。これは日本の富士山と同じ成り立ちで、頂上に雪を頂いた雄大な姿は富士山を思い起こさせます。しかし、富士山とは違って、ここを訪れる人はほとんどいません。

──南米の富士山というわけですね。そのような美しい山なのに、どうして訪れる人が少ないのですか?

江夏:まずサンガイ山は活火山なので、常に噴火の危険があります。また、サンガイ山までのルートが長いうえに険しく、ほとんど整備されていません。登山口から丸2日歩き続けて、ようやくサンガイ山の姿が見えるという具合です。それに加えて標高が5000mを超えるので、登頂まではかなり過酷な行程になります。

ベースキャンプに向かって、道なき道を進んでいきます。火山灰の土壌はぬかるんでいて、長靴で歩かなければなりません。途中で馬が、泥に埋まってしまいました。みんなで助け出します。

──それはたいへんなロケですね。取材はどのような体制で挑んだのでしょうか?

江夏:まずは、アンデス山脈の山奥にある村から、サンガイ山の麓のベースキャンプを目指すのですが、23頭の馬を使って荷物を運びました。その馬を誘導する馬引きが10名、ポーターが4名、コックが2名、レンジャーが2名、山岳ガイドが2名、通訳が1名に、われわれ撮影スタッフが3名で、合計24名の大部隊となりました。登山ルートは火山灰が10m以上降り積もった土地なのですが、雨が多いため地面がぬかるみ、田んぼの中を歩いているようでした。途中で流れの速い川を渡ったりしながら、道なき道を丸3日間歩いて、ようやくベースキャンプにたどり着きました。

雲の向こうにようやく姿を見せたサンガイ山を見つめる江夏ディレクター。ゴールとなる山頂はまだ先です。

──ベースキャンプから、いよいよ頂上へのアタックとなるわけですが、サンガイ山の登山はいかがでしたか?

江夏:火山灰の斜面を一歩一歩進んでいく状態で、空気も薄く、厳しい登山でした。スタッフの1人は、高山病になり標高4600m付近で脱落せざるを得なかった程です。夜の10時に出発して13時間半後、ついに登頂に成功しました。サンガイ山の頂上に日本のテレビカメラが到達したのは、これが初めてのことです。サンガイ山の火口付近がどんな光景だったのか、映像でぜひご覧ください。

ベースキャンプからサンガイ山の頂上を目指して登ります。火山灰の斜面を一歩一歩進んでいきますが、空気は薄くなり、体も重くなっていきます。頂上が近付くと、回りは雪と氷の世界に変わっていきました。