特集

2017年2月5日放送「沖縄に450年!海が生んだ王国」

琉球王国

琉球王国の習わしが生き続ける沖縄

琉球王国時代、沖縄はアジアの交易の中継地点として栄えていました。各地のグスクからはアジア諸国の陶器などが発掘されていて、その活発な交易の様子を示しています。また、数多くの独自の宗教儀式が現在も残っており、琉球王国の文化は今も脈々と受け継がれていました。

──独立国として栄えていた琉球王国は、どのような国だったのでしょうか?

小澤:まず経済の面で見ていくと、貿易が盛んな国でした。アジア諸国をつなぐ位置にあるので、中継貿易に適していたのです。各地のグスクからは、中国のほか、ベトナムや韓国の陶器が数多く出土しています。アジア各国との交易が活発だった証拠です。

沖縄の特産物である夜光貝を使った、見事な螺鈿漆器。この美しい螺鈿の仕上がりは、当時の加工方法に秘密がありました。その手間のかかる製作手順を再現してもらいました。

──活気のある国だったのですね。琉球王国には特産品があったのですか?

小澤:夜光貝の殻を使った美しい螺鈿(らでん)漆器などを作って輸出していました。夜光貝は屋久島より南でしか採れない琉球の特産品で、琉球王国の螺鈿は非常に美しいことから、中国などで人気が高かったようです。当時の螺鈿の製作技術は、現代には伝わっていません。しかし琉球王国時代の螺鈿の製作方法を研究している方がいて、実際に再現してくれました。現在の作り方とは異なる、とても手間のかかる方法なのですが、当時の螺鈿の美しさの秘密もそこにありました。番組で紹介します。

──どのようにして螺鈿が作られているのか、番組で確認したいと思います。その他の琉球王国の特徴について教えてください。

小澤:宗教とたいへん深いつながりのある国だったと言えます。それを示しているのが、ウタキ(御嶽)と呼ばれる聖なる場所です。ちょっとした空間だったり、特徴的な石だったりと形はさまざまですが、各地のグスクには、お祈りをする場所として必ずウタキが設けられていました。グスクのウタキで祈りを上げるのはノロ(祝女)と呼ばれる女性の役目でした。ノロは、琉球王国時代に国から正式に任命された女性が務め、王の后が最上位のノロでした。つまり、宗教的にも王家の支配が及んでいたのです。

琉球王国時代、各グスクのウタキで祈りを捧げるのはノロの役割でした。もうほとんどいなくなったノロですが、今も現役の方に出会いました。勾玉(まがたま)の首飾りは、琉球王国時代から代々引き継がれてきました。

──ノロはどのようにして決められていたのでしょうか?

小澤:ノロは、血縁で代々受け継がれてきたのですが、現在ではほとんど途絶えてしまっています。しかし、今でもノロを受け継いでいる女性がいるという話を聞き、会えるかどうかも分からないまま現地に向かいました。地元の方に話を聞いたりして探し回ったところ、偶然その方に会うことができたのです。番組にご登場いただいて、話を聞かせてもらいました。まだ現役でノロの務めを果たされていて、今でも毎月のようにグスクのウタキを訪れ、人々のために祈りを捧げています。

琉球王国において最も神聖な場所である斎場御嶽。巨大な琉球石灰岩のすき間が入口になっています。ここでは、国内では2例目となる金の曲玉が発見されました。

──宗教的な儀式が、政治的にも重要な役割を果たしていたことが分かりますね。

小澤:そうですね。世界遺産に登録されている斎場御嶽(せーふぁうたき)というウタキがあるのですが、ここが琉球王国で最も格式の高い聖地です。隆起した巨大な琉球石灰岩のすき間が入口のようになっており、奥の空間が神聖な場所とされています。ここで様々な儀式が行われていたのです。斎場御嶽からは、沖合にある久高島が見えます。ここは「神の島」と呼ばれる神聖な場所です。

久高島には、神々が最初に降りてきたとされる1本の道が今でも残されています。この神聖な島では、琉球王国時代から続く数々の神事が今も行われています。

──久高島が神の島と呼ばれる理由は何でしょうか?

小澤:海の向こうにはニライカナイと呼ばれる神々が暮らす楽園があって、そこからやってきた神々が各地にウタキを作ってくれたという伝承があります。その途中にある久高島は、神様が最初に降りてきた場所だと言われているのです。島には、神様が降りてきたという、まっすぐに伸びた道も残されています。また、神聖な島ということで、様々な神事が現在も行われています。その数は年間30回以上にも上ります。琉球王国時代の文化がしっかりと根付き、今も脈々と息づいているのです。

久高島で今でも行われている行事のひとつ、アミドゥシ。海で獲れた魚を神に捧げて、大漁祈願をします。

──最後に視聴者のみなさんに番組の見どころをあらためてお願いします。

小澤:観光でしか訪れたことがなかった沖縄。グスクを訪ね、歴史を知り、人と話すことでイメージが変わりました。ほんの100年ちょっと前まで別の国だった文化の残り香を感じました。迫力のある空撮映像なども織り交ぜながら、群雄割拠の時代を思い起こさせるグスクや神聖な場所として祀られてきたウタキなど、みなさんが普段イメージしている沖縄とはひと味違う、琉球王国の姿を残す沖縄を紹介します。ぜひ番組をご覧になって、新しい沖縄を発見してください。