特集

2016年11月20日放送「ナンマトル遺跡」

王も飲んだというネバネバの飲み物

海上都市ナンマトルを統治していた王朝には独自の文化があり、今も島に息づいていました。サカオという独特の飲み物もそのひとつ。儀式で作られ、かつては王に献上されました。また、ナンマトルに争いが少なかったのはサカオのおかげだといいます。当時の作り方を再現してもらいました。

──ナンマトル独自の文化についてお話を聞かせてください。

古賀:ナンマトルの時代から伝わってきた文化が、今でも残されています。そのひとつにオオウナギへの信仰があります。島の川には、巨大なウナギが生息しています。大きいものだと、1m以上もあります。

ポーンペイ島に住むオオウナギ。中には1mを超えるものもいます。実はナンマトルの時代から、神の使いとして崇められてきました。

──日本ではウナギは主に食用ですが、ポーンペイ島では食べないのですか?

古賀:ナンマトルの時代からオオウナギは神の使いとされており、信仰の対象となっています。地元の人は現在でも、つかまえたり、食べたりすることはしません。

ナンマトル遺跡にあった、テーブル状の大きな石。サカオストーンと呼ばれるこの石を使って、伝統飲料であるサカオが作られていました。

──ナンマトルで神の使いとされていたオオウナギが、今も大切にされているのですね。

古賀:そうなんです。日本で食用にされていることは地元の人々は知っていて、撮影中に私たちがつかまえるのではないかと心配していました(笑)。ほかにナンマトルの時代から伝わっているもので、サカオという飲み物もあります。遺跡にサカオストーンと呼ばれるテーブル状の石が残されていました。かつては儀式の時にそこで作られ、王に献上されていました。

今でも伝統的な製法でサカオを作っている村で、実演してもらうことに。古賀ディレクターが、伝統衣装を着た村人にあいさつします。

──王も飲んでいた飲み物なのですね。いったいどんな味なのでしょうか?

古賀:決しておいしいとは言えないです(笑)。サカオは、同名のコショウ科の植物の根をつぶして、ハイビスカスの樹皮で包んで絞った液体です。今でも伝統的な製法を伝えている村があり、実際に作ってもらいました。どろどろネバネバした飲み物で、苦くて刺激があります。

伝統的なサカオ作りの方法です。コショウ科のサカオの根をサカオストーンの上で砕いて、粘りのある樹液が出るハイビスカスの樹皮で包みます。

──サカオは、今でもよく飲まれているのですか?

古賀:はい。街にはサカオ専用のバーがあるくらいです。鎮静作用のある成分が含まれていて、リラックスして穏やかな気分になるそうです。ナンマトルではサカオを飲んでいたおかげで、争いのない平和な暮らしができたと言われています。今でも、ポーンペイ島では争いが少ないないそうです。

包んだサカオを絞ると、ネバネバした液体が落ちていきます。これをココナッツの器に入れて、回し飲みするのが習わしです。島の人も「まずい」と言うほどの味。

──なかなかの秘境のようですが、ナンマトル遺跡の取材で苦労されたことはありましたか?

古賀:雨ですね。ポーンペイ島は、1年のうち300日雨が降るという世界屈指の雨の多い場所です。遺跡の周辺は雨を避けられるところがほとんどないので、撮影機材が濡れないようにするのがたいへんでした。その大量の雨の影響で、島には美しい滝が流れていて絶景を生み出していました。ぜひ映像でご覧ください。

1年に300日降るという雨が、ポーンペイ島にこんな絶景も生み出していました。水量の多い滝が流れ落ちています。