特集

2016年11月20日放送「ナンマトル遺跡」

100の人工島が浮かぶ!太平洋の謎の海上都市

どこまでも青い海が広がる太平洋に、100もの石造りの人工島が浮かぶ、海上都市がありました。16世紀に滅びたナンマトル遺跡です。それは太古に水没したとされるムー大陸伝説の都ではないかと言われた不思議な場所です。2016年に世界遺産に登録されたばかり。取材した古賀ディレクターに、話を聞きました。

世界でここだけ!石の柱で造られた100の人工島

ナンマトル遺跡の特徴は、ミクロネシアの美しい海に作られた石造りの人工島です。その数はおよそ100。柱状の石を組み合わせて作った島が、遠浅の海の一角に広がっています。ここは、世界でも類を見ない石造りの海上都市だったのです。

──今回紹介するナンマトル遺跡は、世界遺産に登録されたばかりですね。まずはどのような場所なのか、教えてください。

古賀ディレクター(以下、古賀):はい。ナンマトル遺跡は、西太平洋にあるミクロネシア連邦のポーンペイ島にあります。島を取り囲む青い海には美しいサンゴ礁があり、ダイビングのメッカとしても有名です。その島の南東の海上に、遺跡はあります。はるか昔、カヌーでアジアから海を渡ってやってきた“海の民”が開いた王朝の遺構で、世界遺産には2016年7月に登録されたばかりです。その王朝は16世紀に滅びますが、文化や伝承は今も島で暮らす人々に受け継がれています。

太平洋の美しい島に、ナンマトル遺跡はあります。空から見るとマングローブに隠れて、一部しか見ることができません。

──実際に訪れてみた、ナンマトル遺跡の様子はどうでしたか?

古賀:ナンマトル遺跡は、幅約1.5km、奥行き約700mの海域に広がります。そこに100もの石造りの人工島が点在しています。今は多くがマングローブに覆われていて、ドローンで空から撮影しても、どの範囲が遺跡で、どういった島があるのかがほとんど分からない状態でした。しかしジャングルの中に網の目のように張り巡らされた水路をボートで行くと、マングローブの下に石を積み上げた城壁のような島がいくつも並んでいることが分かりました。人工の島は、ぐるりと壁で囲まれていたのです。巨大なものだと、高さは8mにもなります。突然現れる謎めいた海上都市は、その規模の大きさから、太古に消えたムー大陸の都だったのではと言われたこともありました。

船で水路に入っていくと、そこには石で組み上げられた人工島がありました。100もの人工島で造られた海上都市です。

──そのような島が100も並んでいるのですね。これらはどういった目的で作られたものなのでしょうか?

古賀:王朝は文字を持たなかったため、文献などの記録は一切残っていません。しかし口頭伝承によると、それぞれの島には実は役割があったようです。巨大で立派な人工島は、歴代の王たちの墓でした。ここに上陸したのですが、まるで参道のような1本の道が、人工島の中央へと伸びています。その道を進むと、島の中心に石室があって、そこからは人骨が発掘されました。他にも、料理をするための島、ココナッツオイルを製造するための島、治療をするための島などがあったことが分かっています。人々が生活するために、きちんと都市計画が練られた海上都市だったようです。このような石造りの海上都市は、世界でもナンマトル遺跡だけです。

人工島には、料理、治療、ココナッツオイルの製造、墓など、それぞれ異なる役目がありました。ナンマトル遺跡は、都市計画がきちんと練られた海上都市だったのです。

──石造りということですが、どのような方法で建造されているのでしょうか?

古賀:断面が五角形や六角形の柱状になった石が、縦横交互に井桁状に組み上げられ城壁になっています。これはマグマが冷えて柱状になった岩を切り出したもので、自然のままでこのような形になっているのです。非常に重たい玄武岩で、1本の重さが1トンを超えるものが多く、大きな石柱だと5トンにもなります。ナンマトル遺跡から30kmほど離れたポーンペイ島の北部に石切場があり、そこから運んできたものと考えられています。

石造りの建造物は、柱状の石を格子状にきれいに積み上げて造られていました。人工島には推定50万本の石柱が使われているといいます。小さい石柱を持ち上げようとしましたが……「重い!」

──石切場は30km離れているということですが、そんなに重たい石をどうやって運んできたのでしょうか?

古賀:実はそれが大きな謎なのです。諸説あるのですが、実際にはどうやって運んだのか分かっていません。人工島に使われている石柱は、全部で約50万本と推計されています。それだけの数を運ぶには、かなりの人数が必要だったはずで、この地域を統治していた王朝の力が大きかったのだと予想できます。ちなみに地元の人に聞くと、「呪術で空を飛ばしたんだよ」と話してくれました。

遺跡から30kmほど離れた場所にある石切場から、材料の石柱は運ばれました。マグマが造った柱状の岩は、断面が六角形になっています。

──なるほど。魔法でも使わない限り、運べそうにないということですね。しかし、それだけの量の石を海上に積み上げると、砂に埋まって沈んだり崩れたりしてしまいそうですが。

古賀:海上都市ナンマトルは、実はすべてサンゴ礁の浅瀬の上に造られていました。サンゴがテーブル状に広がっていて固い地盤となっているので、沈まないのです。そのため、堡礁の外側はいきなり水深の深い外海となります。島にはある伝承が残されていました。遺跡の外に海底から伸びる2本の柱があり、それが遺跡と外海を分ける門になっているというのです。そこで私たちは、その聖なる門を求めて海に潜ってみました。すると確かに2本の柱のようなものがあったのです。その様子は、番組でご覧ください。

伝説を確認するためにカメラを持って海中に潜りました。遺跡と外海との境界に、伝説の柱のようなものが……。