特集

2016年8月21日放送「テムズ川でゆく!英国の世界遺産」

RIVER THAMES

女王が歩く「女王の道」をそのまま体験

テムズ川はロンドンの中心街に向かいます。現在は国会議事堂になっているウエストミンスター宮殿と、かつて牢獄だったことで有名なロンドン塔。いずれもテムズ川と由縁ある世界遺産です。そしてさらに下ると、世界標準時で有名な河港都市グリニッジにたどり着きます。

──テムズ川の流れは、いよいよロンドンの中心街に入っていきますね。

尾賀:ロンドン中心街で最初に紹介するのは、現在の国会議事堂であるウエストミンスター宮殿です。元々は王宮だった場所で、建物の材料となっていた石は、テムズ川で運ばれてきたものでした。

テムズ川沿いにあるウエストミンスター宮殿は、今の国会議事堂です。建物の材料となる石はテムズ川で運ばれてきました。

──有名なウエストミンスター宮殿ですが、番組での見どころはどこでしょうか?

尾賀:ここには年に一度、エリザベス女王が馬車で来訪する日があります。国会の開会宣言を行うのです。そのときに議場まで女王陛下が歩く「女王の道」を、特別に案内してもらいました。どのようなルートを、どのような作法で進んでいくのか、実際にカメラが入って撮影しました。ハイライトは、議会室中央の玉座です。金箔に覆われたきらびやかな玉座を、間近でご覧いただきます。

女王の道は議場に入り、金箔に覆われた豪奢な玉座まで続きます。

──普段は目にすることのできないシーンも見られそうですね。

尾賀:この儀式は毎年テレビ中継されるのですが、今回は中継のカメラが入らないロービングルームも撮影させてもらいました。ここは女王がローブを着用する部屋です。そんなウエストミンスター宮殿ですが、この建物は裁判所として使用されていた時期もありました。ここでの裁判の後、裁きを受けた囚人たちが送られた先が、ロンドン塔です。

──次に紹介するのは、そのロンドン塔というわけですね。

尾賀:元々は城塞として築かれたもので、堀にはテムズ川の水が引かれていました。一時期は牢獄として使われていて、囚人たちはテムズ川を船で運ばれてきました。運ばれてきた囚人がまず通る入口が、反逆者の門です。ロンドン塔にはかつて、多くの人々が暮らしていました。その時代の反逆者の門は、彼らの生活物資などを中に運び込むために使われていたゲートでした。

牢獄として使われたロンドン塔。裁かれた囚人たちは、反逆者の門を通ってここに入っていきました。

──歴史と共に、様々に目的を変えてきたのですね。さらに、テムズ川を下りますが、そうしてたどり着いた5つ目の世界遺産はどこでしょうか?

尾賀:ロンドン中心部から5kmほど川を下ると、かつて海外からの大型船舶が寄港していた、港湾都市グリニッジに着きます。今も海外から到着した大型船舶が停泊している場所です。

──テムズ川と外海をつなぐ、ロンドンの玄関口というわけですね。

尾賀:そうです。テムズ川沿いには、旧王立海軍学校があります。ここでは優れた船乗りたちが育てられました。また、高台には、グリニッジ旧王立天文台もあります。航海技術や天文学が発展し、かつて七つの海を支配したという大英帝国の栄光の礎を築いた街なのです。

港湾都市グリニッジは、今も昔もロンドンの海の玄関口となっている。海外からの巨大な客船が停泊しています。

──グリニッジと言えば、標準時とともに子午線のある場所としても有名ですね。

尾賀:はい。街に引かれた子午線は有名な観光スポットになっています。東半球と西半球を分けるこの線上に立ち、記念撮影をする人たちでごった返しています。

──テムズ川に関わるイギリスの世界遺産、イギリスを深く知ることのできる番組になりそうですね。あらためて見どころを教えてください。

尾賀:テムズ川は、イギリスの歴史の中で常に重要な大動脈として利用されてきました。テムズ川という切り口でイギリスの歴史を振り返ると、七つの海を支配した大英帝国の栄光がイギリス人にとってどういうものなのかが見えてくる気がしました。また、テムズ川上流域のすばらしい景観にも注目してほしいと思います。

テムズ川沿いにある旧王立海軍学校の校舎と、高台にあるグリニッジ旧王立天文台。ここで発展した航海技術や天文学は、大英帝国の栄光の礎を築きました。