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2016年8月21日放送「テムズ川でゆく!英国の世界遺産」

イギリスの栄光の歴史を見つめてきた雄大な流れ

イギリス、そしてロンドンの象徴とも言える大河、テムズ川。絵本のような美しい風景が広がる上流域から、下流にあるロンドンの中心街へと流れています。今回はテムズ川流域の世界遺産を訪れます。その水源地から旅をした尾賀ディレクターに、話を聞きました。

まるで自然そのもの!イギリス式庭園

テムズ川の雄大な流れは、どこが起点になっているのでしょうか。まずは、全長346kmの大河が始まるポイントを目指します。しかしそこには、意外な光景が待っていました。次に訪れたブレナム宮殿。湖や滝もある広大な庭園の美しさの秘密が明らかになります。

──今回はイギリスの世界遺産ですね。「テムズ川でゆく!」ということですが、どのような番組になるのか教えてください。

尾賀ディレクター(以下、尾賀):今回は、イギリスの象徴でもあるテムズ川を、上流から下流に向かって旅しながら、川沿いにあるテムズ川ゆかりの世界遺産を紹介していきます。全部で5つの世界遺産が登場します。

テムズ川の水源として認定されている場所を訪れてみたところ……そこに水はなく、目印の石碑があるのみでした。

──盛りだくさんな旅になりそうですね。では、番組に登場する世界遺産について順番におうかがいしていきます。旅はどこから始まるのでしょうか?

尾賀:テムズ川を旅するということなので、まずは川の源流を訪れることにしました。テムズ川には正式に認められている水源地があるのです。

テムズ川上流域には、まるで童話から抜け出してきたような美しい光景が広がっていました。尾賀ディレクターオススメの観光スポットでもあります。

──テムズ川の水源地はどのようになっているのでしょうか?

尾賀:コッツウォルド丘陵という緩やかな丘にあります。ただし、そこには目印の石碑があるのみで、今は水がありませんでした。実際に水が現れる場所は、そこから約1.6km先にありました。

──いきなり意表を突かれてしまいましたね。そこから下っていくわけですが、テムズ川の上流はどのような場所でしたか?

尾賀:テムズ川の上流域はとてものどかで、古き良きイギリスの風景が広がっていました。まるで童話の世界のような美しい景観は、強く印象に残りましたね。なかなか訪れる機会のないところだと思いますので、番組でぜひご覧ください。

──最初に出会うテムズ川沿いの世界遺産はどこなのでしょうか?

尾賀:最初に紹介する世界遺産は、ブレナム宮殿です。広大な敷地の面積は何と約900haもあります。さらに驚くのは、これが公爵家の家、つまり個人の邸宅だということです。

ブレナム宮殿は、900haという広大な敷地があります。驚くべきことに、これは個人の邸宅なのです。

──ヨーロッパの大貴族となるとスケールが違いますね。この宮殿の特徴はどんなどころですか?

尾賀:美しい景観で知られる宮殿で、庭には大きな湖や滝もあります。でもこれらの風景は、実は人工的に造られたものなのです。

──そんな広い湖や滝も造られたものなのですか?

尾賀:はい。ここは元々、テムズ川の支流が流れる牧草地でした。そこを切り開いて水を引き込み、流れをせき止めることで巨大な湖を造ったのです。水をせき止めた部分は滝になっていて、人工的な造りに見えないように仕上げられています。湖に浮かぶ島や、周囲の木々もすべて計算されて配置されており、絶妙なバランスが美しい風景を作り出しています。チャーチル元首相の生家としても知られていて、多才だったチャーチルは、この庭園の絵画も残しています。

ブレナム宮殿の庭園には、大きな湖や滝があります。自然のものに見えますが、人工的に造られたもの。木々も計算されて植えられました。

──美しい風景が続きますね。次に紹介するのはどこでしょうか?

尾賀:ロンドン郊外まで進むと、川沿いにキュー植物園があります。見た感じは郊外にある広い公園ですが、世界中から実に約4万種類にもおよぶ植物が集められており、世界最大の植物コレクションとなっています。始まりは18世紀のことで、南米やアフリカなどから届いた貴重な熱帯植物を育てるため、鉄とガラスでできたパームハウスという温室の先駆けとなった建物もあります。この植物園は、単にコレクションする場所としてだけでなく、大英帝国を支えた産業的な功績も大きかったのです。

──どのような功績があったのでしょうか?

尾賀:例えば、20世紀の産業を支えたゴムの原料であるゴムノキは、ブラジルから種が運ばれてきました。それをキュー植物園で苗に育て、東南アジアの植民地に運んだのです。中国のお茶もいったんここに運ばれ、やはり植民地であったインドで栽培されました。このように、大英帝国の経済の発展に大きく寄与した場所だったのです。

キュー植物園には、約4万種の植物がコレクションされています。アフリカや南米から持ち込まれた植物もあり、パームハウスという温室の前身とも言える建物で育てられました。