特集

2016年6月26日放送「カナイマ国立公園」

4K特別編 地球最後の秘境! 世界一の滝へ

Canaima

天空の赤い河で発見!18億年前の地層

カナイマ国立公園の特徴的な風景を作り出すテーブルマウンテンは、どうやって生まれたのか──アウヤンテプイの頂上を探索中に、その誕生のナゾを示す18億年前の波の痕跡に巡り会いました。そして、エンジェルフォールに流れ込む河の水は、近くで見ると赤かったのです。

──特徴ある形状のテーブルマウンテンが林立するカナイマ国立公園ですが、この変わった形の山々はどうやって生まれたのでしょうか?

田口:テーブルマウンテン誕生の手がかりは、エンジェルフォールに流れ込むケレパクパイ川の渓谷で発見しました。まずは川が流れている渓谷の底まで行ってみることにしました。ただし落差は30mほどもあり、ロープで下りることになります。

エンジェルフォールに流れ込むケレパクパイ川の渓谷に、ロープを使って降りていきます。「けっこう必死でした」というのは実際に降りた田口ディレクターの感想。

──それだけでも大変な冒険ですね。渓谷はどんな場所なのですか?

田口:大小の岩がゴロゴロしていて、崖には地層がむき出しになっています。実は転がっている岩は、かつては川の天井になっていたと考えられます。つまり、この川は元々は地下水路のように洞窟の中を通っていたのです。崩れた岩の一部に、波紋のような模様が付いたものがありました。これは湖底に堆積した砂がつけた波の痕跡だというのです。つまり、ここは大昔、巨大な湖の底だったのです。

ケレパクパイ川を流れる水は、赤茶色でした。植物が堆積した層から染み出したタンニンが原因です。

──湖だった場所が、どのようにしてテーブルマウンテンを形成するに至ったのでしょうか?

田口:およそ18億年前、ギアナ高地の一帯は巨大な湖でした。湖底には砂が堆積しており、それが長い年月をかけて砂岩に変化します。その後、地殻変動で湖底が大きく隆起し、砂岩は広大な高原となりました。こうして生まれた高原が風雨にさらされて浸食された結果、固い岩盤部分だけが残り、テーブルマウンテンの頂上となっているのです。渓谷の壁面に見えた地層は、湖底の堆積物が層になったものでした。

渓谷の壁面には地層がむき出しになっていました。これは湖の底の砂岩の地層です。波紋のような痕跡は、18億年の湖底の跡。かつては水路の天井を形成していたものが崩れたと思われます。

──アウヤンテプイの頂上が岩場になっているのは、そのような理由があったのですね。

田口:そうです。雨は岩盤のすき間を通って流れ、滝となってテーブルマウンテンの絶壁から流れ落ちているのです。岩の間にすき間や穴がたくさんあるので、大雨が降ると名前も付いていない滝がそのときだけ現れることもあります。エンジェルフォールもいくつかの水の出口が集まって滝になっていましたが、これも季節や天気によって変化します。そして、ケレパクパイ川を近くて見るとよくわかるのですが、水が赤茶色なのです。

──濁っているわけではないのに赤茶色なのですね。どうしてそんな色が付いているのでしょう?

田口:テーブルマウンテンの頂上には、土がほとんどありません。岩盤を残して雨などで流されてしまったからです。土に見えるのは、植物が堆積した層で、上を歩くと弾力があるのがわかります。そこから植物に含まれるタンニンが染み出して、川の水が赤茶色に染まるのです。

下界と断絶された環境のテーブルマウンテンの頂上は、固有種の宝庫です。特に植物は種類が多く、ガラパゴス島の1.5倍だと言います。これは頂上で見つけた食虫植物の一種。

──頂上では、他に何を見つけましたか?

田口:太古に断絶された土地なので、固有種の動植物が多いのも特徴です。テーブルマウンテンの植物は75%が固有種です。この場所固有の食虫植物が生えていたり、わずか数cmの水かきのないカエルを見かけたりと、頂上は独自の生態が残るロストワールドでした。

水かきのない独特のカエルも生息していました。