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2016年5月8日放送 「太平洋の秘境!水中洞窟のナゾ」レンネル島 東部

Rennel

世界が注目!新薬を生む森

レンネル島には2000年前に島に渡ってきた人の末裔が暮らしており、いまだ電気もガスも水道もない生活を送っています。自給自足に近い生活の中で、植物の特性を利用して病気を治療する知識は、新薬を生む可能性があるとして注目されています。

──レンネル島には人々が暮らす集落はあるのですか?

江夏:島には4つの集落があり、1000人ほどの人々が暮らしています。

広い草原に見えますが、実はここがレンネル島唯一の飛行場。

──人々の生活はどのようなものなのでしょうか?

江夏:ここの生活には、電気もガスもありません。雨が多いので水は豊富ですが、水道もありません。今でこそ飛行場があるので人々の行き来は可能ですが、ほぼ自給自足の生活を送っています。

島の中はジャングルで、移動も大変です。どこに向かうにも道なき道を進んでいくしかありません。

──燃料や電気を使わない生活なんですね。日本に暮らす私たちにとっては想像もできない暮らしです。

江夏:道具からすべて自分たちで作る必要があります。例えば、湖を移動するためのカヌーも、手斧1本で造ってしまいます。島は高温多湿のジャングルなので、巨木が豊富にあります。それを切り倒して形を整え、中をキレイにくり抜いてカヌーを造るのです。

巨木を切り倒し、手斧で器用に削っていきます。

──なるほど、それは大変そうです。食料はどうしているのでしょうか?

江夏:芋などを育てたり、自生している植物なども食料にしています。湖や海での漁も行っていますね。薪も豊富にあるので、生活するだけなら何とでもなるんですね。特徴的なのは、植物の特性をうまく利用して生活に生かしているところです。

手造りのカヌーが完成しました。レンネル島の成人男性は誰でもカヌーを造ることができます。

──どのように利用しているのですか?

江夏:ルバというマメ科の植物があります。この茎を叩いてほぐして海中のサンゴに突っ込むと、ルバからしみ出した毒で魚がしびれて出てくるので、それをとります。トゥトゥカとプアバノという植物を混ぜて煎じると、風邪や肺炎、ぜんそくなどに効く薬になります。ソロモン諸島の薬用植物の知恵は現在、世界中の製薬会社や研究所から新薬の研究対象として注目されています。レンネル島には100種類を越える薬用植物が自生しています。

自給自足の生活のため、薬も自生している植物から自分たちで作ります。今、世界の研究所が新薬として注目しているものもあります。

──生活道具や食料、薬まで、すべてを自分たちで手に入れて生活しているのですね。そういう場所での取材となると、準備を含めて大変ではなかったですか?

江夏:これまでにも“秘境”と呼ばれる場所には、何度も取材に行きました。秘境のタイプによって苦労も異なるのですが、レンネル島の取材の難易度はこれまでで一番高かったですね。例えば、海に潜ることひとつ取っても、ダイビングの道具や施設はありませんからボンベなどの道具をすべて持ち込む必要があります。さらに、海まで運ぶのに2時間近くジャングルを歩き、山を越えなければなりません。それと、もちろん携帯電話の電波も届きませんから、連絡を取るのも大変ですね(笑)。

ソロモン諸島の薬用植物は古くから注目されていました。国立植物園の研究室には1930年代に採取された標本もあります。

──最後に視聴者のみなさんに、今回の見どころをあらためてお願いします。

江夏:レンネル島は、まさに秘境と呼ぶにふさわしい不思議な場所でした。陸地が全部サンゴ礁でできた島、世界で初めてカメラが潜入した水中洞窟、そして電気もガスも使わない、自給自足に近い人々の生活など、滅多に見ることができない貴重な映像をお送りします。ぜひご覧ください。