特集

2016年4月10日、24日 放送20周年スペシャル「大河ナイル 6700キロの旅 I・II」

The Nile

海に沈んだ クレオパトラの宮殿

古代エジプトでナイル川の水源と考えられていたアスワンから、古代エジプト最大のカルナク神殿があるルクソールまでは、100年前の蒸気船での船旅です。その後ナイル川は、カイロ、ギザの3大ピラミッドへ。そしてついに地中海へと流れ着きます。河口の町アレキサンドリアには、クレオパトラの宮殿が沈んでいました。

──アスワンハイダムを越え、引き続きナイル川を下る旅ですね。

石渡:はい。24日の放送はアスワンからの船旅で始まります。観光船「スーダン号」での、のんびりとした川下りとなりました。古代エジプトの人々は、アスワンをナイル川の水源と考えていたようです。世界遺産であるイシス神殿には、ナイル川の水源を表すレリーフがありました。

古代エジプトではアスワンが水源だと考えられていました。そのことを示すレリーフが見つかっています。

──スーダン号はどのような船なのでしょうか?

石渡:1885年に建造された外輪式の蒸気客船で、「近代観光の祖」と呼ばれる英国の実業家トーマス・クックがエジプト国王に献上したものです。内装などは当時の雰囲気のままで、優雅な船旅が楽しめます。アスワンからルクソールまで、2泊3日でナイル川を下ります。

アスワンからルクソールまでは、100年前の蒸気船「スーダン号」での優雅な船旅となりました。

──ナイルクルーズを楽しむなら、ぜひとも泊まってみたいですね。

石渡:スーダン号の船旅は本当にオススメです。最初の寄港地はコム・オンボという町で、船着き場のすぐそばにあるコム・オンボ神殿にはワニの神様が祀られていました。最近完成したばかりの博物館には、体長3メートルものワニのミイラが20体ほど展示されています。

コム・オンボの博物館にズラリと並んでいるのは、何とワニのミイラです。神として祀られていました。

──エジプトではファラオだけではなく、ワニもミイラとして祀っていたのですね。次に訪れたのはどこですか?

石渡:次は有名なルクソールです。古代エジプト最大のカルナク神殿を訪れました。神殿の建設は3500年前に始まり、歴代のファラオによって1900年間にわたって増築し続けられました。高さ20メートルの巨大な柱が並ぶ大列柱室の光景は、圧巻です。

古代エジプト最大のカルナク神殿。見どころは、高さ20メートルほどの巨大な柱が並ぶ大列柱室。

──そしていよいよ、古代エジプトの象徴とも言えるギザの3大ピラミッドです。

石渡:はい。今回は、長年ピラミッドの謎を調査し続けてきたエジプト考古学者、マーク・レナー氏との出会いがありました。エジプト考古学というと宝探しや隠し部屋の発見といったイメージもありますが、彼は、緻密で地道な調査と研究を続けることでピラミッド建造の謎に迫ってきた研究者です。彼の研究によって、ピラミッドの建設に携わってきた労働者の本当の生活が見えてきました。

──多くの謎があるといわれるピラミッド建設ですが、どのような発見があったのでしょうか?

石渡:ギザの3大ピラミッドの周辺には、多数の労働者とその家族が暮らすピラミッド・タウンがあったことがわかってきたのです。そして彼らが、ビールやパンを給料として受け取り、さらに牛や羊などの肉を食べていた証拠も新たに発見されています。

ギザの3大ピラミッド。この周辺にピラミッド建築に携わった労働者やその家族が暮らすピラミッド・タウンが建設されていたことがわかってきました。

──地道な研究が、今でもピラミッドの新しい発見を生んでいるのですね。そして旅は、ついに地中海に至ります。

石渡:最後は河口の町、アレキサンドリアです。古代エジプトの最後の都だった町で、かつてクレオパトラの宮殿があったといわれています。しかし紀元2世紀頃の度重なる大地震で、宮殿は都ごと海に沈んでしまったのです。われわれも、宮殿があったといわれる場所に行ってみました。いくつかの遺物は引き上げられていますが、クレオパトラを示す手がかりは発見されておらず、今も謎のままです。

──最後に、「大河ナイル 6700キロの旅」を楽しみにしている視聴者のみなさんにひと言お願いします。

石渡:世界最長の大河、ナイル川の最初の一滴から河口までの壮大な旅をお届けします。「もうしばらくエジプトはいいかな」と思うくらい長い期間、取材した集大成です。小澤ディレクターが苦労して撮影したナイル川の最初の一滴から、蒸気船の優雅な船旅、ピラミッド・タウンの新しい発見まで、多くの見どころがギュッと詰まっています。また、初公開となるツタンカーメンの壁画も登場しますので、ぜひご覧いただきたいと思います。