特集

2016年2月21日放送 「アテネのアクロポリス」 ギリシア

世界があこがれる美の原点がここに!目の錯覚にまで気を配った究極のデザイン

丘の上に建つパルテノン神殿の美しさは、誰もが認めるところです。そのデザインは、世界中の建築と美術に影響を与え、美の原点のなりました。なぜ世界中の人々がこの建物に引きつけられるのか? そこには、見る者すべてを魅了する「美の魔法」とでも言うべき秘密がありました。

──ユネスコのマークにも採用されているパルテノン神殿ですが、この美しさは古代ギリシアの最高傑作と呼ばれていますね。

江夏ディレクター(以下、江夏):そのとおりです。私たちは、パルテノン神殿がなぜここまで人々を引きつけるのか、その魅力の秘密に迫りました。そこに隠された仕掛けは、単純なデザインだけではなかったのです。

パルテノン神殿の完璧なプロポーションには、ある仕掛けが隠されていました。

──それは興味深いですね。パルテノン神殿の秘密の一端を聞かせてください。

江夏:例えば、パルテノン神殿を取り囲み、格調高い外観を構成している巨大な柱。この柱は、実は直線になっておらず、中央がわずかに膨らんでいて先端に行くほど細くなっています。また、建ち並ぶ柱の両端だけは柱と柱の間隔が狭くなっており、さらにはわずかに建物の内側に向かって傾斜して立っているのです。

柱の形は、中央が膨らんで上に行くに従って細くなっています。さらに両端だけ柱と柱の間隔が狭くしてあります。そうすることで、人の目には美しいバランスで見えるのです。

パルテノン神殿の基壇にも工夫がありました。よく見ると、緩やかな弧を描いていることがわかります。その様子は番組で紹介します。

──どうしてそのような建て方をしたのでしょうか?

江夏:柱上部のくびれは、女性のウエストのくびれと同じ効果で、垂直方向のメリハリを与えます。また、人間の目の錯覚を計算して、両端の柱の間隔だけを狭くすることで、見た目の安定度を増しているのです。パルテノン神殿は、形状や間隔をわざと変えることで、完璧なプロポーションに見えるように造られています。

イギリス・ロンドンにある大英博物館。ファサードのデザインは、パルテノン神殿を彷彿とさせます。

──人の目の錯覚にまで気を配って美しく見せるとは、極限まで美を追究した建物なのですね。

江夏:はい。こうして人々の心を引きつけたパルテノン神殿は、建築の美の原点として西洋建築にも影響を与え続けてきました。アメリカ最高裁判所や、イギリスの大英博物館などがそうですね。

大英博物館には、かつてパルテノン神殿から運び出された彫像のほとんどが展示されています。

──いずれも白い柱が建ち並んだデザインで、パルテノン神殿を思い起こさせます。

江夏:その大英博物館には、かつてパルテノン神殿に並んでいた彫像のほとんどが収蔵されています。この彫像たちもまた、後のルネサンスなどを始め、西洋美術に大きな影響を与えました。躍動感のあるギリシア彫刻の傑作たちは、2500年過ぎた今見ても生命力にあふれています。番組では大英博物館の取材も行い、収蔵されているパルテノン神殿の数々の彫像も紹介します。

生命力あふれる彫像たちに、ルネサンスの芸術家も感銘を受けました。こうしてパルテノン神殿は、西洋の美に大きな影響を与えたのです。