特集

2016年2月21日放送 「アテネのアクロポリス」 ギリシア

世界がまねた2500年前の神殿

白い大理石のパルテノン神殿は極彩色に彩られていた!

ギリシアにある世界遺産「アテネのアクロポリス」。その代表的な建物と言えば、真っ白な大理石が印象的なパルテノン神殿です。白く美しい姿は、世界中の美の原点になったと言われています。誰が見ても美しいと思う理由は、巧妙な建築デザインにありました。そして驚くべきごとに、パルテノン神殿の本来の姿は真っ白ではなかったのです。

2500年前の青がよみがえる!

パルテノン神殿を形作っている真っ白な石。これは、アクロポリス近郊から採掘される最高級の大理石です。しかし、この白亜の神殿は建築当時、何とカラフルに彩られていたことが、最近の研究でわかってきました。番組では、パルテノン神殿の本来の姿に迫ります。

──今回はアテネのアクロポリスです。主役は、丘の上にそびえるパルテノン神殿ですね。

江夏ディレクター(以下、江夏):パルテノン神殿は、古代ギリシアを代表する建物で、すべてが大理石で造られた白く美しい神殿です。およそ2500年前に完成しました。現在は、修復作業が続いています。修復は、劣化して欠けた部分の形状に合わせて大理石を削り、ピッタリと組み合わせるという手間のかかる方法で行われています。熟練の職人たちが手作業で削っているのですが、ミリ単位で形を合わせるその技術はまさに職人技です。修復に使っている大理石は、建築当時と同じ山から切り出しています。こだわりの修復は、すでに40年も続いています。

ギリシアの文化遺産「アテネのアクロポリス」。街を見下ろす小高い丘の上にあります。

──パルテノン神殿を始め、発見されている数々の彫像など、真っ白な大理石は古代ギリシアの大きな特徴ですね。

江夏:確かに、アクロポリスに残された他の建築物や数々の彫像も、白い大理石で造られています。しかし最近になって、「古代ギリシア=白い世界」という常識を覆してしまう発見がありました。

パルテノン神殿は本来の姿を取り戻すために、現在も修復が続いています。修復が始まって、すでに40年以上が経過しています。

修復を終えた場所はかつての姿を取り戻しつつありました。白く見えるのは、修復で組み込まれた新しい大理石です。

──それは注目ですね。どんな発見があったのですか?

江夏:古代ギリシアの彫像は、実際は鮮やかに彩色されていたというのです。その証拠を確認するため、私たちはドイツのフランクフルトに飛びました。そこでは、色彩に関する最先端の研究が進められていました。ある特殊な装置を使って彫像を調べると、エジプシャンブルーと呼ばれる青で塗られていた部分が見えるのです。当時と同じ顔料を使って復元した2500年前のブルーは、鮮やかな青でした。

アクロポリスから18km。ペンテリコン山には、パルテノン神殿の建材となっている最高級の大理石を採掘した坑道が残されています。修復用の大理石も同じ山から切り出されたものが使われています。

──古代ギリシアは真っ白な世界だと思っていたので驚きです。

江夏:驚きはそれだけではありません。白いたたずまいで有名なパルテノン神殿も、実は極彩色に彩られていたというのです。今まさに研究が進められていて、少しずつ建設当時の姿が明らかになってきています。

アクロポリスで発見された白い大理石の彫像。化学的な調査の結果、鮮やかな彩色が施されていたことがわかりました。

──パルテノン神殿がカラフルに色づいた姿というのは、なかなか想像できませんね。どうして神殿にも色が付けられていたことが分かったのでしょうか?

江夏:後の時代に増築された壁が崩れてオリジナルの壁が姿を現したところ、そこには鮮やかな色が残されていました。今では褪せてしまっていますが、残された壁の色を発見した1800年代当時の詳細なスケッチも見つかっています。番組では、極彩色に彩られたパルテノン神殿をCGで再現します。どのような姿だったのか、ぜひご覧ください。

白い大理石でできたパルテノン神殿も、かつて極彩色に彩られていたことがわかってきました。現在も当時の色がわずかに残されています。番組では、CGでパルテノン神殿本来の姿を再現します。