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船でゆったりと楽しむ美しき流れ

8月10日の放送は、フランスのミディ運河です。17世紀に建造されたこの運河は、大西洋と地中海を結ぶという壮大な夢を実現した、南フランスにある文化遺産です。地中海へ抜ける運河の旅の魅力を、取材した石渡ディレクターに紹介してもらいました。



─今回紹介するミディ運河は、どのような世界遺産なのでしょうか?


ミディ運河

石渡ディレクター(以下、石渡):17世紀に作られた、全長約240kmの運河です。フランス南部の都市、トゥールーズを流れるガロンヌ川と地中海を結んでいます。ガロンヌ川は船が航行可能な大きな川で、大西洋に流れ込んでいます。つまりミディ運河の完成によって、ジブラルタル海峡を通ることなく大西洋と地中海を行き来できる航路がフランス国内に出来上がったのです。その結果ミディ運河は、運河周辺の地域にワインの出荷などで大きな経済効果をもたらしました。


―ミディ運河は、ガロンヌ川の流れを引き込んで造られた運河なのですか?


石渡:いいえ。水源になっているのは、トゥールーズと地中海の間にあるノワール山脈に作られたダムです。トゥールーズから地中海へのルートは丘陵地帯で、高低差が約190メートルありました。それを克服するために、まず標高の高い位置にダムを建築して貯水池を造りました。そこから水を引いて分水嶺とし、一方はガロンヌ川へ、もう一方は地中海へ向けて水を流すことで、運河に水を供給し続けているのです。



─丘陵地帯を通る運河となると、船が通過できるように整備するのは大変そうですね。


ミディ運河

石渡:運河の建造には、さまざまな工夫が施されました。まず、高低差がある場所を船で通過するためのロックと呼ばれる水門が、各所に作られました。21メートルの高低差を乗り越えるために7つのロックが連続して並ぶフォンセランヌの7段ロックは、ミディ運河の見どころのひとつです。また川を横切るための運河橋や、岩をくりぬいたトンネルなど、ミディ運河は、完成した1681年当時の最新の土木技術が駆使された建造物でもありました。