特集

第36回世界遺産委員会報告

6月16日より、第37回世界遺産委員会がカンボジアのプノンペンで行われています。その模様を世界遺産のスタッフが現地からレポートしていきます。 レポートは到着次第、特集ページにアップしていきますのでお楽しみに!

カンボジア世界遺産委員会だより 10
6月26日(水)
世界遺産委員会レポート
2011年パリで開かれた世界遺産委員会

カンボジアには「アンコール」の他に、もうひとつ世界遺産があります。「プレア・ヴィヘア寺院」です。これは、タイとカンボジアの国境の紛争地帯にあり、遺跡の領有をめぐって、両国の間で武力衝突まで起きたことがあります。

2011年の世界遺産委員会はパリで開かれましたが、ちょうどタイとカンボジアの武力衝突が起きていました。世界遺産委員会が「プレア・ヴィヘアの保全について、危惧する」と決議したところ、タイの代表団が席を蹴って帰ってしまうという一コマがありました。以来、「どんな状況なんだろう」とプレア・ヴィヘアには関心を持ってきました。しかし、番組で撮影したことはまだありません。

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プレア・ヴィヘア寺院のある山

ただ両国の緊張はかなり緩和しつつあり、昨年6月にはそれぞれが軍を撤退させることに合意しました。現地の情報も含めて、検討し、取材に行くことにしました。

シェムリアップから車で3時間程度。「プレア・ヴィヘア寺院」は、山の頂上、断崖の上に作られています。

山の麓のチケット・センターで、地元の四輪駆動車かバイクに乗り換えます。急峻な坂道が続くためですが、さらにこの日はスコールまで(カンボジアは雨期です)。バイクだと5ドル、四駆だと25ドルなのですが、四駆にして大正解でした。
さらに途中で四駆を降り、尾根まで歩くと、第一塔門です。遺跡の間から、カンボジア国旗と世界遺産の旗が見えました。

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バイクから四駆に乗り換えるチケットセンター
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急な坂にスコールまで
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第一塔門の遺跡

「プレア・ヴィヘア寺院」は、北から南へとゆるやかに上がっていく尾根伝いに、参道と5つの塔門が作られています。
9世紀にクメール王朝が作ったヒンズー寺院なので、シヴァ神が各所に刻まれています。

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ゆるやかな坂の参道
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ゆるやかな坂の参道
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第五塔門の破風の踊るシヴァ神

参道からはタイ側が間近に見えますが、緊張は感じられませんでした。
最後の第五塔門は、南の断崖の上に建てられています。そこから見渡すカンボジア平野は絶景でした。
まだ修復もろくに行われていないため、廃墟の感が強いのですが、平地にある「アンコール」とは全く違う趣です。「クメール遺跡にもにもいろいろあるんだなあ」と感じ入った次第でした。

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尾根の向こうはタイ
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第五塔門
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断崖から見渡すカンボジア平野

プロデューサー 堤