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マヤでもない、アステカでもない知られざる文明の神秘「古代都市エルタヒン」

太陽神に豊穣を願う人々が残した遺跡や不思議なアトラクション

4月21日の放送ではメキシコの文化遺産「古代都市エルタヒン」をお届けします。マヤ文明、アステカ文明の影に隠れた知られざる古代遺跡の神秘について、担当の愛場ディレクターにお話を聞きました。

―今回取材された、「古代都市エルタヒン」はどういった世界遺産なのでしょうか?

愛場ディレクター(以下、愛場):エルタヒンは紀元600年ごろから1200年ごろまで繁栄した古代遺跡で、メキシコ湾から内陸30kmの場所にあります。宗教神殿として用いられていたピラミッドが特徴的で、1992年に文化遺産として登録されました。

―メキシコの遺跡と聞くと、マヤ文明やアステカ文明をイメージしますが、エルタヒンはこれらの文明に関連した遺跡なのでしょうか?

愛場:エルタヒンの最大の特徴は、マヤでもアステカでもない文明によってつくられた遺跡だということです。マヤが繁栄したのはエルタヒンより前の時代、アステカが繁栄したのはエルタヒンより後の時代。だからマヤ→エルタヒン→アステカという時系列になります。

―年代以外にエルタヒン遺跡はほかの文明と比べてどのようなところが違うのでしょうか?

太陽神に豊穣を願う人々が残した遺跡や不思議なアトラクション

愛場:エルタヒンは、ピラミッドがつくられたという点や、太陽信仰があったという点などでマヤ、アステカと共通するものもあります。でも、遺跡につくられた建造物のデザインはほかとは大きく異なります。エルタヒンのピラミッドには太陽暦の1年を表す365個の窓がつけられていたり、まるでモダン建築のようなオシャレなデザインをしています。さらにピラミッドの上に、日本家屋のような形の構造があるものまであるんです。このような独特な形に満ちた遺跡はほかにはない珍しいものです。

―1000年以上前にモダン建築のようなピラミッドがつくられていたというのはとても面白いですね。どんな人々がそのピラミッドをつくったのでしょうか?

愛場:実は、この遺跡はまだ、遺跡全体の10分の1程度の規模しか発掘調査が進んでおらず、まだまだ不明な点が多いのです。現時点では当時の王の墓や民家も見つかっていないのですが、この文明を築いたのは「トトナカ」と呼ばれる人々だと考えられています。彼らは太陽の神を信じ、それを祀るための神殿をいくつも建てて儀式を行なっていたようです。当時この地域はジャングルだったので、生きていくための農作物を育てるには太陽の光は欠かせません。したがって太陽信仰の一環として神殿をつくり、豊穣祈願の儀式を行なっていたのです。