特集

アラスカ・カナダの氷河地帯I・II

氷河が生み出す豊かな自然THE世界遺産ディレクター取材記

―氷原の広さといい、崩落の規模といい、ダイナミックな世界ですね。ほかにはどんな見どころがありますか?

氷河が生み出す豊かな自然THE世界遺産ディレクター取材記

江夏:氷河にできた洞窟が印象的でした。アラスカのルート氷河では、実際に氷河の上を歩いたのですが、くぼみに水が流れています。日差しによって溶けた氷が川となっているのです。その流れを巡っていくと、真っ青な氷の洞窟にたどり着きました。氷は波長の短い光をより多く通すため、一面が青の世界で幻想的でした。とても美しい映像ですので、お楽しみに。

―青の洞窟というとナポリを思い浮かべますが、氷河のなかにもそんな場所があるのですね。

江夏:氷河というと日本ではなじみが薄いため、単なる大きな氷の塊を想像しがちですが、実際に見ると氷河によって面白い地形や、豊かな自然が育まれていることがわかります。氷河は山を削りながら流れてくるので、氷のなかにはミネラルがたっぷりと含まれています。その栄養素によって、氷河が溶け出して河となっている場所には大きな森が広がっていますし、海ではさまざまな生き物が育まれています。

―どんな生き物が棲息しているのですか?

氷河が生み出す豊かな自然THE世界遺産ディレクター取材記

江夏:体長が50cmにもなる世界最大のヒトデが面白いです。ホタテを食べようとゆっくり迫っていくのですが、ホタテの動きが素早くて何度も逃げられていました。ほかにも今まで見たことのない形のイソギンチャクの仲間や魚など、奇妙な生き物がたくさんいて驚きました。本来は水深200m前後に住む深海生物たちが、深さ20〜30mほどの浅瀬に生息しているのです。豊富な栄養分によるプランクトンの大発生と、氷河が運んでくる土砂によって水の透明度が低く、光があまり届かないことが理由です。