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運河キングダム・イギリス 産業革命を支えた世界遺産「ポントカサステ水路橋と運河」

イギリスの産業革命を発展させた運河網THE世界遺産ディレクター取材記

―今回取材されたのは「ポントカサステ水路橋と運河」ということですが、日本人にとって「運河」はあまり馴じみがありません。知識として何となく、物を運ぶための水路というのは知っていますが、世界遺産である運河というと、どういったものなのでしょうか?

イギリスの産業革命を発展させた運河網THE世界遺産ディレクター取材記

愛場ディレクター(以下:愛場):世界各地に運河はありますが、イギリスの運河の特徴は、その長さ。最盛期にはイギリス全土に6000km以上に渡って、網の目上に張り巡らされていました。鉄道発祥の地であり、鉄道王国として有名なイギリスですが、運河王国とも呼ばれているんです。そのなかの18kmの区間が「ポントカサステ水路橋と運河」として世界遺産に登録されています。

―イギリスで、そんなに運河が発達していたとは知りませんでした。どうして6000kmもの運河のなかで、その18kmの区間が世界遺産に選ばれたのでしょうか?

愛場:その理由は文字どおり「ポントカサステ水路橋」があるからです。この水路橋の最大の特徴は、船が橋の上を通ることです。橋の高さは約38m、長さ313m、水路の幅は3mで、イギリスで最も高く、長い水路橋になります。実際に現地で見てみると、木々に囲まれたなかにポンッとこの橋があるのは他にはない面白い風景でした。また、橋の空撮を「シネフレックス」という、普通の撮影ではなかなか使えない特殊な装備で行いました。ヘリの外側にカメラが取り付けてあり、180度自由に撮影ができるのです。これを使ったからこそ撮れた映像は、見応えがあります。

―船が通る橋というのはユニークですね。いつ頃に建てられたのでしょうか?

愛場:1795年から工事が始まり、1805年に完成しました。「ポントカサステ水路橋」は、橋脚の部分は石ですが、船の通る上の部分が鉄で出来ています。水漏れの問題や、構造上、頑丈な橋でないと上に載せられなかったからです。水路橋を作ったトーマス・テルフォードという建築家は、1779年に建てられた「アイアイブリッジ」という世界初の鉄橋の成功を見て、水路橋のアイデアを思いつきました。彼は「アイアンブリッジ」まで行って鉄橋の構造を学び、水路橋を作ったそうです。「アイアンブリッジ」も世界遺産に登録されています。