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古代大陸の名残りが見られるオーストラリアの自然遺産

THE世界遺産ディレクター取材記

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本当に“ブルー”に見える不思議な渓谷


―今回はグレーター・ブルーマウンテンズ地域とニンガルーコースト、山と海に行かれたということですが、まずは6月10日放送のグレーター・ブルーマウンテンズの特徴を聞かせてください。

古代大陸の名残りが見られるオーストラリアの自然遺産

小澤ディレクター(以下、小澤):グレーター・ブルーマウンテンズは、標高1100メートルぐらいの砂岩から成る渓谷です。そこに90種類ものユーカリが自生していて、これはユーカリ全種のうちの1割以上がグレーター・ブルーマウンテンズにあることになります。このユーカリの葉っぱは揮発性の油分を含んでいて、それが空気中に蒸発することで太陽光線の青色が反射して青っぽく見える。それがグレーター・ブルーマウンテンズの名前の由来なんです。

―実際に行ってみて、ブルーに見えましたか?

小澤:日中気温が上がってだんだん暖かくなってきた頃に、遠くの谷を見ると青く見えてきました。うっすらと青味がかった霧のような感じです。ユーカリは面白い植物で、山火事によって繁殖するのです。ユーカリの種は固い殻に入っていますが、高温にさらされることによってポンっと殻が割れて種が撒かれます。山火事で木も燃えてしまいますが、撒かれた種はすぐに発芽する強い植物なんです。空気が乾燥していることや、ユーカリの葉自体が油を含んで燃えやすいなど山火事が起こる条件は揃っていますが、火事がないと生き延びられないためレンジャーのひとたちが計画的に火をつけることもあります。

古代大陸の名残りが見られるオーストラリアの自然遺産

―ユニークな植物なんですね。ブルーマウンテンにはユーカリしか生息していないのでしょうか?

小澤:標高が高いところは乾燥しているのでユーカリが繁殖していますが、谷のほうは湿度が高く、シダ類が生い茂っていました。太古に栄えたシダ類に覆われたこの谷は、原始の風景をとどめています。また、ここだけにしか生息しない植物は130種以上あるということです。

古代大陸の名残りが見られるオーストラリアの自然遺産

―標高によって生息する植物が変わるんですね。ほかに見所があれば教えてください。

小澤:この地域にはオーストラリア国内最大の洞窟群があります。石灰岩で出来た鍾乳洞は3億年以上前に形成され、現在一般に公開されている鍾乳洞の中では最古のものと言われています。また、カメラマンがロープで宙づりになり、崖の上からの撮影では見ることができない大陸移動の歴史が刻まれた地層や、長い時間をかけて侵食された岩肌を間近に撮影しました。そんな貴重な映像もぜひお楽しみください。