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山水画を生んだ原風景 都市を愛した印象派

山水画を生んだ原風景

Q:では、1週目の山水画の世界について詳しく聞かせてください。先ほど話に出た「桃源郷」とは、具体的にどのような風景を表なのでしょうか?

山水画を生んだ原風景 都市を愛した印象派

石渡:文字通り、山とそこに流れる水、そして漂う雲です。ただし、山水画は中国人にとっての桃源郷を表現したものなので、写実そのものとは違います。番組内に登場する世界遺産「黄山」は、峰々の合間に雲海が流れ、仙人が住むと言われる聖なる山です。この黄山と泰山の両世界遺産が最も山水画に描かれることが多い場所です。黄山などの風景に画家が思い描く心象風景を交えて、桃源郷を表現しました。また、番組には世界遺産の「蘇州古典園林」が登場します。これは山水画の世界をジオラマ化した庭です。

Q:桃源郷を再現した庭とは、いったいどういったものなのでしょうか?

山水画を生んだ原風景 都市を愛した印象派

石渡:「蘇州古典園林」は、明の時代に高名な文人たちが隠居後の生活を楽しむために作った園庭です。太湖石と呼ばれる、太湖という湖の底から採掘される、有機的な形の石や岩を庭に立て、そこに水を引き、山水画の山や谷を表現しています。園内の石をアップで映した映像が出てきますが、非常に美しく、本当に山水の世界にいるようです。さらに、文人たちは園内に東屋を建て、その窓を額縁に見立て、そこから見える景色を楽しみました。その景色も番組でご覧いただけます。

Q:そのほかに、第1週目の見所を教えてください。

山水画を生んだ原風景 都市を愛した印象派

石渡:黄山の峰々の間を雲が滝のように流れる瀑布雲(ばくふうん)と呼ばれる雲海の映像です。山肌をなでるようにゆったりと流れる雲から悠久を感じます。仙人が住むと言われる黄山ですが、それも納得の絶景です。あとは、山水画家の顔世廣(がんせこう)さんが描く黄山です。墨の濃淡と余白だけで表現されたとは思えないような、雲の流れを見事に表現した美しい絵をご覧ください。黄山の神秘性が見事に表現され、正に桃源郷といった感じです。この技術が1000年も前から確立されていたとは、本当に驚きです。

世界遺産の歩き方

世界遺産の歩き方1
今から30年ほど前に発見された世界遺産、「武陵源」は、中国人が心に描く桃源郷そのもの。手つかずの自然が残り、まるで山水画の世界を再現したかのような絶景は「中国最後の秘境」と呼ばれている。切り立った3000もの峰が立ち並び、その合間に雲が流れ込む様子は、見ていて鳥肌が立つほどだ。