特集

アフリカ特集

大浦ディレクターインタビューアフリカ特集I 南アフリカのすべて

Q:もう1つの注目の世界遺産、リヒタースフェルトの文化的・植物的景観ではどのようなところを取材したのでしょうか?

リヒタースフェルトは、ヨハネスブルグからは西へ約1500km移動したナミビアとの国境付近にある地域で、平均年間降水量が100mm以下という南アフリカで最も乾燥した土地です。今回は、この一見すると不毛な大地で暮らすナマと呼ばれる人々を取材しました。彼らは、2000年前と変わらぬ伝統的な暮らしを守っている先住民なのです。

Q:2000年前から変わらないというのは、どのような暮らしなのでしょうか?

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移動式の住居を使った遊牧の生活ですね。ヤギを連れて移動しながら、イグサを使ったドーム型の住居を組み立てて暮らしているのです。現在、こうした移動式住居による遊牧生活を送っているのは、南部アフリカで彼らだけだそうです。また彼らは、アフリカでも珍しくなった、クリック音(舌打ちのような音)を使う言語、コイサン語を話す人々なのです。彼らが話すところを撮影させてもらいましたが、ほかの言語にはない、非常に珍しい発音の言葉でした。

Q:リヒタースフェルトの特徴の1つである植物的景観というのは、どのようなものなのでしょうか?

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リヒタースフェルトには、豊富な種類の多肉植物が生育しています。多肉植物とは、葉や茎に多量の水分を蓄えることで乾燥した気候に適応した植物のことです。これらの独特な姿や生態が、番組の見所の1つと言えます。例えば、リヒタースフェルトの代表的な固有種であるアロエ・ピランシーや、雨が降るまで何年でも果実の中に種を閉じ込めるケイリドプシスなどを撮影してきました。このケイリドプシスの種は非常にユニークで、水滴を垂らしてしばらくすると果実を開き、そのまま雨などの水に流されて種を落とすようになっています。いったん開いても、その後、雨が降らなければ再び閉じて、また水がかかるのを待つ、という不思議な性質を持つ植物です。

Q:最後に番組をご覧になる方へメッセージをお願いします。

今回のように、1つの国の世界遺産をまとめて特集にするのは「THE世界遺産」として初の試みです。取り上げる8つの世界遺産はそれぞれ隕石痕、化石、壁画、動物、植物、遺跡など、実に特色豊かな見所があり、世界遺産の魅力が凝縮したような番組になっています。ワールドカップと併せて、これをきっかけに遠い国、南アフリカに興味を持ってもらえれば、と思っています。

世界遺産の歩き方

降雨量が極めて少ない砂漠地帯のリヒターズフェルトには、一見したところ生命の存在が感じられない荒涼とした風景が広がっている。しかし、実際には砂漠に適応した植物が生育しており、また数多くの鳥やアンテロープ、ヒヒ、ヒョウなども生息している。植物に関しては毎年9月、リヒターズフェルトの荒野の様子が一変し、突如として花畑が現れる。この開花の最盛期が、観光の最も盛んになる時期でもある。