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THE世界遺産ディレクター座談会

今回は特別企画ということで、「THE世界遺産」を担当するディレクターたちによる座談会をお届けします。いつもはそれぞれ長期の海外取材に出掛けているため、一同に会することは滅多にない担当ディレクター陣。そんな彼らが、偶然にも国内にそろっている機会を捉えてこの企画が実現しました。愛場、石渡、尾賀、小澤、世良、高橋の6名のディレクターが出席。普段は関係者でもなかなか聞くことのできない、さまざまな世界遺産の意外な魅力や取材の裏話をたっぷり語ってもらいました。

Q:まず、皆さん、これまでに世界遺産を何カ所ぐらい取材されているのでしょうか?

THE世界遺産ディレクター座談会

小澤:
僕は世界遺産の担当になってまだ1年足らずなので、まだ4カ所ですね。本当は5カ所のはずだったんですが、ちょうどメキシコで取材をしようとしたときに、新型インフルエンザが発生してしまい1つ減ってしまいました。マスクをしていたのは日本から来たわれわれ取材スタッフだけで、現地ではそんなに深刻な様子ではなかったんですが、結局は緊急帰国ということになりました。

愛場:
僕もそんなに多くないです。8カ所です。

世良:
私は2年ほどの間に13カ所ですね。

石渡:
2006年末ぐらいから担当になって、自然遺産を中心に20カ所ぐらいかな。数で言ったら尾賀さんが一番多いんじゃないですか?

尾賀:
40カ所ぐらいでしょうか。もう3年以上担当していますからね。最初は自然遺産が多かったんですけど、最近は文化遺産が多いですね。

高橋:
僕は2年半の間に21カ所ぐらいですね。文化遺産が多いですね。

Q:合計すると、皆さんで100カ所以上の世界遺産を取材されているわけですが、その中で印象に残っているものを教えてください。

高橋:
印象深いものを1つ挙げるなら、ガウディのサグラダ・ファミリア、特に生誕のファサードですね。建物全体の巨大さもさることながら、動物や植物をモチーフにした装飾の造形に圧倒されました。人工物でありながら、人間が作ったものでないような、そんな不思議な感覚になる建築ですね。

世良:
僕の印象に残っているのは、ポーランドのヴィエリチカ岩塩坑。そこは13世紀から岩塩を掘り続けている非常に深い採掘抗なんですが、取材のために地下300メートルへエレベーターで下りて、一般の人は見られないエリアに入らせてもらいました。おかげで20センチほどある巨大な塩の結晶を映像に納めることができました。

尾賀:
取材では普通はなかなか見られないものをいろいろ撮影しましたが、その中でも思い出すのは、グリーンランドのイルリサット・アイスフィヨルドの景色。氷河の上をヘリコプターで3、4時間飛んで撮影したんですが、そのときの光景が忘れられないですね。いくら飛んでも氷しか見えない。海岸に近い所は多少凹凸があるんですが、内陸に行けば行くほど平らになっていく。まるで昼間の砂漠みたいに距離感がない世界でした。

石渡:
私は大雪原の空撮をしたことがありますが、本当に見渡す限り真っ白。ここで落ちたら太平洋の真ん中で遭難したのと同じで、どっちへ行ったらいいかわからないな……とか考えて怖くなりましたね。