インタビュー
松本 潤さん/深山大翔役
Q SEASONⅡの話を聞いて
ただ嬉しかったです。
楽しみにしてくださっている視聴者の皆さんと同じく、作る側の人間たちも前作の終わり際に「寂しいなあ」「またやりたいね」と思ってくださっていたそうです。また、香川照之さんとも、SEASONⅠ以降も時間があるときに、お会いしていて「また出来たらいいね」とお話していた中で、こうやって実現出来たのは嬉しかったです。大変な現場ではあるけれど、やっていて楽しい現場です。その現場をほぼ同じスタッフでまた出来るということも楽しみだなと思ったのが最初の印象です。
Q 『99.9』の大変さ
アレだけふざけているので、伝わっていないのかもしれないけれど(笑)、ちゃんとしたテーマを持った作品です。日本の司法制度にしっかりと嘘なく目を向けてテーマを伝えていく中にくだらない要素がある…という絶妙なバランスでお届けしています。
しっかりした部分も描くことを大前提にしてどれだけ遊べるか……現場に入ると誰がどこで何をやっているのかを瞬時に察知して、その中でどれだけおもしろいことを詰められるかに挑戦する現場です。すごく頭も使うし、身体も使う。けれど、皆で作っている感じがすごく心地いいです。
あとは、単純に僕の場合は難しい単語を思えなければいけないという大変さもあります。
この間、久々に長セリフのある法廷シーンを撮ったのですが、これはこれでまた大変だなと、改めて思いました。
Q SEASONⅠにやり残したことがあったからこそのSEASONⅡ?
前回は、検察官と刑事専門弁護士の話でしたが、Ⅱでは、そこももちろんあるけれど、それにプラスして裁判制度や裁判官との三角関係のやりとりが増えます。そこは前回描いていなかったところですし、Ⅱをこのチームでもう一回やりたいなと思った時、話をもっと広げようという気持ちがあったので、裁判官と検事と弁護士の関係を描いていくことで、また違った『99.9』になるのではないかなと思っています。
SEASONⅠが楽しかったからこそのお客さんとの約束事もあります。「こう来て欲しい」とか「待ってました」と喜んでもらえる瞬間と、それをいい意味で裏切る部分をバランスよく構成しないと、フォーマット化されてしまうんじゃないかなと思っています。フォーマット化されないよう、うまくやるには、いただいている台本がおもしろいからこそ、今度は演じる側が考えなきゃいけないことだと感じています。撮影が始まってすぐは前シーズンを意識しながら、指差し確認をキャストたちでしつつ、そのうえで今回はどうしていこうかと話し合いました。新しいものを取り入れるということが、続編をやることの楽しみでもあり、気にかけているところでもあります。
Q 久々に顔を揃えた瞬間
まったく会ってなかった人っていたのかな…たぶん終わってから丸1年会っていない人はいませんね。
撮影が始まってからの前半戦は、木村文乃さんと片桐仁さんとのシーンが多かったです。9月入ってからは、香川照之さんと岸部一徳さん、刑事事件ルームの皆と合流するようになり、ようやく全員集合になったとき「ああこういう感じだったな」と思い出しました。
呼吸を取り戻すのも早かったです。新キャストの文乃さんと馬場園さんは大変だったと思います。最初のうちはタイミングの相談をしながらの撮影だったので、頭をフル回転しながら、出来上がっている空間についてくる、かつ、そこで自分の色を出していかなければならないので…。とにかく皆で動きを見ながら話し合いました。今はお2人とも楽しそうです。一徳さんも楽しそうでしたし(笑)。「ああ皆楽しそうだ」と安心しました。
撮影現場で、自分の出番がなくて時間があると、セットの階段に座り込んで誰がどう動いているのか観察するのが好きなんです。出演者が何をやっているのか見ているのが楽しい。ぼーっとするのもいいけど、自分が映っていないからと、スタンバイしている最中が休みというわけではないので。
皆楽しそうだなあと微笑ましく見たり、誰がどういうところでテンションが上がるのか、今日は眠いのかなとか観察しています。
(逆の立場だったら)やりづらいかもなあ(笑)。でも、自分がどう思っているのか見せたくないということはないですよ。チームなので。
Q 久々のパートナー香川照之さんの印象をあらためて…
周りの人をいかに奮い立たせ、ドライブをかけるか…という方。
お芝居ももちろん勉強させてもらっていますが、ある日、楽屋のモニターを見ていたら、香川さんは映っていないけれど、カメラの枠の外から香川さんからの指示が飛んでいたんです。落合役の馬場徹くんと撮っているシーンだったので、馬場くんに指示が飛んでいたかと思いきや、次の瞬間は、その次のカットの話をカメラマンとしていて。このカットに集中する以上の動きをしていました。すごいなと思いました。その動きに周りが巻き込まれて、引っ張られて、仕事をしているから、個々が持っている以上の力が乗っかるのでしょうね。自分が現場にいると気づかないのですが、モニター越しで香川さんのそういった姿を見て、自分もそうされていたんだなと改めて気付かされました。
Q このチームワークのよさは?
一緒にやっている人間からすると、“バランスがいい”という言い方になるんでしょうか。
楽しもうとする気持ちと”やらなきゃいけない”ことは、本来一緒に出来ないと思います。”やらなきゃいけない”ことを最優先すると、その中で楽しさを見つけることになると思いますが、僕らは、楽しみを”やらなきゃいけない”ことに結びつけることがうまく出来ているんだと思っています。縦横無尽にやっているように見えますが、誰かが前に出たときに誰かが引く、そのバランス感が、出演者だけでなくスタッフも出来ていて、演じていてすごく気持ちがいいです。それがチームプレイとしてかたちになっているんだと思います。芝居をしているとき、誰かが前に出るから誰かが引くということは当たり前で、スタッフの中でも、カメラマンがここはこうしたいと言ったら、じゃあ照明部はこうしようとか、これは絵面が優先だから、音はあとで録音しようとか。そういうバランスがちゃんと出来ているんです。自由度が高いというのも理由の1つかもしれません。通常、誰かが台詞を話しているとき、1人1人の音を拾えなくなるので、普通はその台詞にかぶせて、他の人はくだらないことは言っちゃいけないんですが(笑)、この作品の音声部さんはきちんとその音を拾って、さらに「メインの台詞はこっちだから、後ろで話してもいいけど、このくらいのトーンにして欲しい」とか「ここにはかぶさないで欲しい」とか、ちゃんと整理して、通常許されないことをやってくださいます。通常以上のことが出来るスキルを皆さん持っているんですよね…だから本当に大変だと思います(笑)。
Q 新メンバーについて
空気の変化は大きくありましたが、とにかく撮影現場は明るい空気に包まれています。
僕が演じる深山が型破りなキャラクターというのもあって、僕の中では台本に書かれている範疇だと思って演じているけれど、やはり初めての人は衝撃的なようで「なんだこいつ!?」という戸惑いが木村文乃さんにあったように感じました(笑)。撮影が始まってしばらくしたら、それを越えて「自分もその輪に加わりたいな」と思われたようで、スイッチというか、歯車がかみあった瞬間がありました。それからは本当に楽しそうにお芝居をされています。
もう1人新たに加わった刑事事件ルームのパラリーガルを演じる馬場園さんも、最初どういう立ち位置なのか探りながらだったとは思いますが、さすが芸人さん。溶け込みがすごく早かったです。
文乃さんが演じる尾崎舞子は、元裁判官なんですけど、そういう今までにないキャラクターが入ってくることで、自分たちがパスを回していくライブ感が出て、自分たちもビビットに反応できるようになりました。
バランスはすでにとれているなと思っているので、あとはどういうボールを新しいキャストの方々に出せるかということを考えています。
Q 『99.9』といえば 親父ギャグですが、いつもアドリブ?
撮影の当日に浮かぶほど親父ギャグには強くないです(笑)。
この『99.9』で親父ギャグを入れようと言ったいいだしっぺは木村ひさし監督です。前作の撮影前に打ち合わせをしたとき、監督が「こういう作品だから、キメ台詞があったほうがいいんじゃないかと思っているんですよね」とおっしゃて、次の台本の読み合わせのときには「決まりました。現状、僕の頭の中では親父ギャグがキメ台詞になります」と言われて、その場がすごくザワついたのを覚えています(笑)。結果的にすごくいいスパイスになりました。いいだしっぺの監督がどういうものをやりたいのか、ギャグをつくる上で使う物やシチュエーションは監督に決めてもらってから、ギャグの打ち合わせが始まります。打ち合わせと言っても、立ち話のような感じですが。「2話はどうしよう。これを使ってやるのがいいと思うんですよね」とか。そうしたら一度僕が持って帰り、台本を読んでセリフを覚えている合間に、ギャグを考える時間をつくって、そこでおもしろいのが見つかったら、監督のところへ行って「こんなのあります」と、いくつか披露して、どれを採用するのか、両方やるのかの協議になります。意外と真面目で超クリエイティブな作業なんですよ(笑)。