インタビュー

松重豊さん(沢口哲夫役)

台本を読まれた感想を教えてください。

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物語の中では山の診療所をなくしてしまおう、という病院内の改革派のリーダーのような存在ですが、若い頃は熱い想いを持っていた人で、本心では揺れ動いているんでしょう。でもぼくらの世代は、みんなそうだと思うんですけれど、若い頃にこうだと思っていたことが時代がたつにつれ、価値や状況が変わってきて、そのころの気持ちのままではいられないというジレンマが出てきます。ですから厳しそうに見える先生でもいろんな葛藤を抱えているんだな、と思いますね。やはり医者というのは人の命を預かっていて、病状によっては確実な結果を出せるものではないので、いろんなことで悩んで迷って自問自答していくというのは、研修医の頃から最後の病院を去るときまで変わらないんじゃないかということを考えながら台本を読みました。

医師の役ですが、医師という職業へのイメージはどう思われますか?

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ぼく自身、医者という方々は遠い存在で、医を学んだ人ということ自体が高いハードルです。でも近所のお医者さんとはよく飲み会をやっています(笑)。大病院ではなく開業している先生はいわゆる個人事業ですし、とにかく孤独なんですね。休診の日は大体マッサージに行くそうで、そこで知り合った先生方が多いです。外科だったり、歯科医だったりしますが、それぞれ頭だけではなく体も使うので、かなり凝ってしまうそうで、きつめのマッサージを受けていらっしゃいますね。
話していると、役者のぼくにはよくわかることが多いです。患者さんを幸せにするためには人としてどうするのか、根本的に心の仕事だと思うので、そういうお話を聞くと医者という職業も、ほかの人間を演じる役者という仕事も同じ「人の気持ち」を考えなければいけないという点では理解できる部分はあると思いますね。

沢口教授は大病院の教授ですが、大きい病院のイメージは?

日ごろは、いきなり大きな病院には行けないです。ただ、最新の医療機器などはそういう大きな病院にしかないので、必要となればそういうところに行くのでしょうけれど、ふだんの体調管理や風邪などは近所のお医者さんに行きますね。
そういうことを思って沢口の目線でものを見ると、何にでも役割というものがあると思うんです。こういうドラマで「つぶす側」と言うと、悪い人になりがちですけれど、沢口側にも一理あるな、ということが書かれていますし、まだぼくも完全な山の診療所の反対派という旗を立てている憎まれ役だけではない、というものも残しつつ演じていかなければいけない、と思っています。病院というこの「会社」で行われる医療というものも、人の命にかかわるもので、沢口の言っているセリフも重いセリフが結構多いです。そういうことをかみ締めながら演じたいと思っています。

倉木先生とはライバルという間柄ですが、現場の雰囲気はいかがですか?

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時任さんとは以前、やはり同僚役をやらせていただいたことがあります。ぼくのほうが実は5歳くらい歳が下なのですが、ビジュアル的にはちゃんと同世代に見えてしまうという若干の不満を持ちつつも、懐の広さに甘えさせていただいています。
向井さんとはこれまでは、同じ作品には出演していても、同じシーンというのがなかったんです。今回もまだ一緒のシーンもそんなに多くはなくて、この先が楽しみです。

演じるときに気をつけていることなどはありますか?

あまりどう演じていくかは決めずに、まわりの雰囲気や呼吸に合わせていければと思っています。人と人とのかかわりですし、お互いに役者同士、相手役の方の芝居を見てそこで感じる感情でないと嘘になってしまいますので、特に作ることはしないようにして、ニュートラルな状態で入るようにしています。
医療シーンは今のところなくて助かっています(笑)。ああいうシーンは本当に大変です。ぼくはスーツを着る役をよくやらせていただいていますが、題材になる職業として刑事は捜査会議、弁護士など裁判ものは法廷シーン、そして医療ものは専門用語のシーンが役者としては一番大変です。特に手術シーンになってしまうと、表情が見えなくなるので余計に大変だと思います。

ご覧の皆さまにメッセージをお願いします。

山があって、診療所があって、患者がいて医者がいるという素朴な話ですので、気楽に見ていただければと思います。沢口のように小難しいことを言う人もいますが、基本的にみんないい人ですから、とても感じのいいドラマになっていると思います。医者がいて治してあげたい家族がいて、という話です。是非ご家族で見てください。